医学講座

救命ASUKAモデル

 平成30年1月31日、昨日の朝日新聞朝刊の記事です。
 ぜひ読んでいただきたいと思います。
 (小さないのち)悲しみと歩む②
 救命、ASUKAモデル
 「ママ、大好き」「何言ってんのー」。2011年9月29日朝、小学6年生だったさいたま市の桐田明日香さん(当時11)は冗談交じりに母親の寿子さん(47)に投げキスをして、自宅を出ていった。
 その日の夕方、駅伝のメンバーを選ぶ選考会が校庭であった。明日香さんは全力で1千メートルを走りきった直後に、倒れた。
 ■11分間措置なし
 教師らは呼吸があるなどと判断し、担架で保健室に運んだ。救急車が到着するまでの11分間、心臓マッサージなどの救命措置は行われなかった。学校には、心臓に電気ショックを与える自動体外式除細動器(AED)が置いてあったが、使われなかった。意識が戻らないまま、明日香さんは翌30日の夜、家族が見守るなかで息を引き取った。
 呼吸に見えたのは「死戦期呼吸」と呼ばれ、心肺停止後に起こる「あえぎ」だった可能性があるという。救急車を待つ間にAEDなどの救命措置が行われていれば助かったかもしれないと、寿子さんは思っている。
 絵が好きだった明日香さん。学校のテストの裏などによくイラストを描いていた。将来の夢は母親と同じ看護師。「大切なものは家族と友だち。幸せなことは私が生まれてきたこと」。明日香さんは自分のプロフィルにこうつづっていた。好きな男性と幸せになるために、きちんとした女性になろう。そんな目標を「自分への手紙」に書き、宝物入れにしまっていた。
 ■教訓踏まえ冊子
 「何があったか知りたいんです」。寿子さんは学校に問うたが、教師たちはうつむいて無言のまま。裁判を起こされることを意識しているようにみえた。
 「明日香はどうしたらいいと思う?」。寿子さんは心の中で娘と語り合った。学校の対応に不満は大きかったが、憎んだり闘ったりするという感情は生まれなかった。学校も友だちも大好きだった娘の気持ちに寄り添い、再発防止のために動き出す道を選んだ。
 当時の市の教育長で、責任を感じてひとりで桐田さん宅に謝罪に訪れた桐淵博さん(64)が、寿子さんの思いを受け止めた。市教育委員会や医師、有識者らに呼びかけ、事故の教訓を踏まえた救急対応マニュアルづくりに乗り出した。
 明日香さんが亡くなって1年後。市教委は、人が倒れたときの対応マニュアルを冊子にまとめた。呼吸や脈拍の有無を判断する方法を説くのではなく、「わからない」場合はAEDを使うとしたことなどが特徴だ。「ASUKA(あすか)モデル」と名づけた。寿子さんや桐淵さんは全国各地で講演し、普及に努める。
 ■学びが救った命
 山口県長門市の高校3年生、的場浩一郎さん(18)は中学生だった2014年、学年全員が参加する救命講習でASUKAモデルを学んだ。講師は、桐淵さんの講演を聞いた地元の救急救命士だった。的場さんは「救えたかも知れない同年代の死があることに驚き、悔しいと思った」という。
 翌年、的場さんは同県萩市の駅伝大会に出場した。担当区間を走り終えると、60代ぐらいの男性が近くで倒れていた。通報などは任せ、近くのスポーツ施設に駆け込んでAEDを運び出し、救命措置をしていた医師に渡した。男性は一命をとりとめた。走る前から「あそこならAEDがありそうだ」と目を付けていたという。
 人の命を救う仕事がしたいと思うようになり、救急救命士の資格を目指して勉強してきた。この春から関東の消防局で働き始める。
 「明日香は助からなかったけど、明日香の命がだれかを助けているようでうれしい」。寿子さんはピンク色の形見の腕時計をつけ、これからもASUKAモデルの普及活動を続けていく。
 (後藤泰良)
 ■追及だけでなく防ぐ視点を
 2016年の人口動態統計によると、1~19歳の死因の1位は「不慮の事故死」だ。525人の子どもたちが交通事故や転落、火災などで亡くなっている。
 子どもの事故が起きると、保護者や学校などの監督責任が問われがちだ。一方、事故をどう予防策につなげていくか、という視点はおろそかにされてきた。
 産業技術総合研究所(東京)によると、予防には「法制化による規制(Enforcement)」、事故が起きにくい製品開発などの「環境改善(Environment)」、意識や行動の変化を促す「教育(Education)」の「三つのE」の視点が大切だという。「ASUKAモデル」は、教育の視点から考えた予防策といえる。世界保健機関(WHO)もこうした科学的な対策を各国に求めている。
 予期せぬ死を減らすには、幸いにも死に至らなかったケースの分析も欠かせない。だが、子どもの事故の全体像が詳しく分かる統計は日本にない。どんな環境で事故が起きたのか、年齢や身長、季節などでリスクはどう変わるのか。個人情報を除いたデータを医療機関や行政機関、専門家らが共有するシステム作りが求められている。
 (板橋洋佳)
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ASUKAモデルを広めようと講演する桐田寿子さん。明日香さんの形見の腕時計がいつも一緒だ=2017年11月、栃木県栃木市、後藤泰良撮影
(以上、朝日新聞より引用)


      ■         ■
 桐田明日香さんのご冥福をお祈りいたします。
 私はASUKAモデルを知りませんでした。
 大切なことだと思います。
 心肺蘇生は、
 札幌医大麻酔科
 研修をさせていただいいたおかげで、
 できるようになりました。
 63歳でも気道確保も気管内挿管もできます。
      ■         ■
 なんちゃって美容外科医が、
 患者さんが急変した際に、
 看護師さん、
 救急車を呼んでください!

 …と叫んだと聞いたことがあります。
 麻酔薬でアナフィラキシーショック
 …を起こすこともあります。
 われわれ医療従事者にも、
 救命ASUKAモデルは役立つと思います。
 心から明日香さんのご冥福をお祈りしています。

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