医学講座
耳前瘻孔の手術のこつ
耳前瘻孔の手術2018
…の続きです。
形成外科の若い先生へのメッセージです。
昨日の院長日記にも書いたように、
♡手術のこつ♡は、
耳輪脚じりんきゃくの方から切開することです。
穴から切開する方法はダメです。
■ ■
先輩から教えてもらう手術法や、
教科書や文献に書いてある方法です。
耳前瘻孔の穴から、
ピオクタニンという色素を注入して、
穴の中を染色します。
やってみるとわかりますが、
そんなに色素は入りません。
■ ■
小児の点滴に使う、
細い静脈内留置針を使っても、
穴の奥まで色素を入れるのが難しいです。
入れる時に失敗すると、
色素が飛び散ってしまいます。
色素が被布おいふにつくと洗濯をしても落ちません。
手術室の看護師さんから、
【へたくそ】
…という冷たい視線を感じます。
■ ■
穴の周囲に、
ナイロン糸をかけて、
その糸をモスキートーペアンで把持する
…と書いてある文献もあります。
私は穴の周囲に糸はかけません。
穴の周りを切開するだけです。
穴はあまり重要視してません。
問題は耳珠の前です。
■ ■
耳前瘻孔で手術が必要な人は、
瘻孔の中に角質が貯溜しています。
黄色い油脂状の人もいます。
耳珠の前に、
注意して触るとしこりがあります。
このしこりが問題です。
粉瘤よりずっと深い位置にあります。
■ ■
ここからがポイントです。
耳珠の前の切開は、
【くの字】型にします。
右耳だったら【くの字】型、
左耳だったら【>の字】型です。
【くの字】の下半分は、
せいぜい1~2㎜です。
■ ■
まっすぐに切ると術野の展開がしにくいです。
【くの字】型にすると耳介軟骨の奥までよく見えます。
近くには血管や神経があります。
浅側頭動静脈や、
顔面神経本幹もあります。
注意して慎重に剥離します。
丁寧に止血をして、
血を出さないことです。
そうすると瘻孔の薄い壁がよく見えます。
これが手術のコツです。