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醜形恐怖症①
克誠堂出版(コクセイドウ)という医学書の会社があります。そこから、美容外科最新の進歩という本が出ています。1998年に出版されたので、もう最新ではありませんが、内容の深い本です。
この本のP9に美容外科と精神疾患-醜形恐怖症を中心とした患者対応-という項があるので、一部をご紹介します。
著者は金沢で開業されていた、故 畷 稀吉(ナワテ キヨシ)先生です。
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畷(ナワテ)先生は1976年7月に金沢で畷形成外科医院を開業。開業以来、精神・心理面に問題がある患者様との相談を行われました。
私は直接面識はありませんが、形成外科・美容外科領域ではとても有名な先生です。
日本美容外科学会誌にも、醜形恐怖症の論文を書かれています。
醜形恐怖症の患者様とはどのような‘病態’なのか?畷先生の著書から引用してご紹介します。以下は美容外科最新の進歩の13ページから引用しました。
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【症例】二重の幅の違いに悩む短大生
18歳の女子短大生。ほとんど差を認めない二重の幅を気にしている。最初は、手紙で悩みを打ち明けられた。高校時代、左目をいじっているうちに左右が違うようになったという。寮生活をしているが、左目が気になり、毎日鏡を見て悩み、友達と顔を合わせるのが辛くて、ほとんど付き合いをしていない。「ぜひ手術をしてもらえないか」という訴えだった。
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そこで夏休みに本人と面接をした。少し小柄の美人。二重の左右差は、ほとんどない。文面からも実際に会った感じでも、左目へのこだわりを除いては、普通の短大生である。手術は必要でなく、人間にとって何が大切なのかを、私の人生観を含めて話をした。しかし、理解させることができないまま、次回の面接を約束した。
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二度目は母親と一緒に来院した。母親も手術の必要性は認めず「何でそんなことぐらいで悩むの。悲しいわ」と私の前で口論になった。彼女は、母親の意見を無視してはいるが、親子関係が破滅的になるようには感じなかった。私の目には、しっかりとした考えを持った母親に感じられた。この日も、手術の必要性はないという話で別れた。
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その後は手紙で手術の不必要性を何度も書いて様子を見ていたが、彼女の執拗な要求に根尽きて、第1回目の手術を約束した。短大を卒業し、金沢で就職することになったので、その前に手術をしてほしいとの要求であった。最初の面接から数えて、約1年後に手術をしたことになる。
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手術は、メスを入れて縫合するという儀式に近いものであった。その後、当院で5回、金沢医科大で4回手術を受けている。繰り返し手術を要求する理由はそのつど内容は違うが、左右差を問題にしたり、術後の瘢痕を気にしたりで、どのように対応したらよいか困ってしまった。
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今回、11回目の手術を要求されたので「こんなに何度もメスを人れると、しまいに皮膚が破れてしまうかもしれない。もし失敗して、機能的に問題が出たら取り返しがつかないよ」と脅しをかけて手術を諦めさせた。5年間を通して、人格的にだめになったということもなく、恋人もでき、家庭でも会社でもとくに問題をおこしていない。
(以上、畷先生の著書、美容外科最新の進歩から引用)
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この症例のように、ほとんど差を認めない二重の幅を気にする方はいらっしゃいます。
私は、外科的に治せるものでしたら手術をお引き受けすることもあります。ただ、何回も何回も手術を受けている方は瘢痕(ハンコン)というキズのため修正が難しく、手術適応にならないこともあります。そういう時は手術はお引き受けしません。
手術をお断りして、精神科受診のお話しをしても受け入れてもらえないこともあります…。