医学講座

500㌘の赤ちゃん㊤

 平成20年2月25日(月)から、3日間にわたり、
 北海道新聞生活欄に
 「500㌘の命みつめて」という記事が連載されました。
 山本哲朗さんの署名記事です。
 私がかつて勤務した、市立札幌病院で取材されています。
 NICU(エヌ・アイシーユー)という、新生児の集中治療室のお話しです。
 私が20年前に実際に、新生児医療の現場を見た経験から、
 とても興味深く読ませていただきました。
 今日から、3日間にわたり、記事を引用して、日記に掲載します。
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 平成20年2月25日(月)北海道新聞朝刊の記事です。
 500グラムの命みつめて
 高度新生児医療の現場から㊤
 24時間懸命のリレー
 医師が連携 処置手早く
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 母、36歳、妊娠24週目。
 札幌市内の病院から
 市立札幌病院「総合周産期母子医療センター」に救急搬送された。
 重度の妊娠高血圧症候群と、
 胎盤が子宮口をふさぎ出血の恐れがある前置胎盤で、
 母子ともに生命が危ぶまれた。
 「帝王切開が、母子の命を救う唯一の道だ」。
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 診察した医師の決断は速かった。
 赤ちゃんは、体重が522㌘、
 身長は26㌢。
 執刀した産科医の片方の手のひらに載る女の子。
 だが、産声は響かなかった。
 ぐったりして、自発呼吸がない。
 早産の赤ちゃん特有の、
 鮮紅色で体内が薄く透けて見えるような皮膚が、
 酸素不足から暗紫色のチアノーゼ状態になり始めていた。
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 通常の出産は妊娠40週。
 24週の胎児は、仮に生まれても、育つことはできないといわれる。
 体の機能が不十分で細菌への抵抗力もない。
 最も問題なのは、肺が未成熟で自ら呼吸ができないことだった。
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 産科医は、へその緒を切った赤ちゃんを、
 待機していた新生児集中治療室(NICU)の新生児科医に託し、
 母体の治療を進めた。
 総合周産期母子医療センターは、
 産科の母体・胎児集中治療室(MFICU)と新生児科のNICUからなる。
 国の基準を満たす施設がセンターに指定され、
 危険なお産や赤ちゃんに問題が想定される妊婦を受け入れる。
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 道内では、市立札幌病院と釧路赤十字病院の二施設で、
 さらにもうーヵ所が指定の申請中だ。
 市立札幌病院の本来の受け入れ範囲は道央圏だが、
 稚内や帯広など各地から患者が集中し、
 6床あるMFICU、9床のNICUとも満床状態が続く。
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 産婦人科部長の晴山仁志理事(58)は言う。
 「危険度の高い妊娠や出産の処置は、
 産科医と新生児科医が24時間連携し、
 母体と胎児の管理、
 緊急帝王切開と新生児救命にあたることができる、
 当院のような施設でないと無理。
 MFICUとNICUの空きがある限り、
 受け入れるのが私たちの使命です」
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 産科医から赤ちゃんを託された新生児科医は、
 すぐに蘇生処置に取りかかった。
 鼻と目にマスクを当て、
 伸縮製のパッグを握って濃度100%の酸素を肺に送り込み、
 しぼんでいる肺を広げようとした。
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 30秒ほど酸素を送ると、
 人工呼吸器用チューブを気管に入れる。
 内径2㎜のチューブを、
 赤ちゃんの薄く小さな口から正確に7㌢、
 声門と気管分岐点との中間まで挿管する。
 「よし届いた」。
 新生児科医は安堵(アンド)のつぶやきを漏らす。
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 一連の処置はわずか5分。
 赤ちゃんは手術室に持ち込まれた移動式保育器に横たえられた。
 保育器は手術室のある4階から9階のNICUに向かった。
 体重500㌘未満の赤ちゃんはかつて、
 医学的に生存不能とされていた。
 新生児医療の現場では今、
 その生存不能の領域で、「命のリレー」を懸命に続けている。
 (山本哲朗が担当します)
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 〈メモ〉
 出生体重により、
 2500㌘未満を「低出生体重児」、
 1500㌘未満を「極低出生体重児」、
 医学的に最も危険な1000㌘未満を「超低出生体重児」と分ける。
 日本小児科学会が
 主要医療施設で調査した500㌘以上の超低出生体重児の死亡率は
 1980年の55.3%が、
 2000年には15.2%まで減少した。
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 医師不足、診療休止―。
 過疎化する医療現場の一方に、
 数百㌘の赤ちゃんの命を見守る先端の医療がある。
 道内に2ヵ所ある総合周産期母子医療センターの一つ市立札幌病院から、
 「500㌘」の命の誕生を報告する。
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 市立札幌病院の総合周産期母子医療センターで行われた帝王切開手術
 母体搬送などハイリスク妊婦の出産は、帝王切開となるケースが多い
 (伊丹恒撮影)
 (以上、北海道新聞より引用)

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 私の友人や、同僚の奥さんも、
 市立札幌病院で極低出生体重児を出産しました。
 子供たちは、全員大きく立派に育っています。
 ほんとうに、1000㌘もなかった赤ちゃんが、立派に育っています。
 もう成人式を迎えた子供もたくさんいます。
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 私が、市立札幌病院に勤務したのは、もう20年前です。
 その当時は、1000㌘未満の子供が助かると‘すごい’と言われていました。
 当時は新生児科という‘科’はなく、小児科の未熟児センターと呼ばれていました。
 5階の小児科病棟の一角にありました。
 私は、服部先生や中島先生に呼んでいただき。
 よく往診に出かけていました。
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 市立札幌病院の新生児科は、すごいところです。
 先生とスタッフの‘神業’ともいえる、
 まさに神の手で、
 助かりそうもない赤ちゃんを助けてくれます。
 私は、公立病院はこういうところにお金をかけるべきだと思います。
 あと2回、新生児科のNICUについてご紹介します。

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