昔の記憶
医師としての価値
世の中は医師不足です。
特に地方の医療機関は、医師不足で困っています。
昨日まで、3回にわたり、
北海道新聞に掲載された、
市立札幌病院NICUのことを記載しました。
私の心のどこかに、
美容外科医なんて
形成外科医なんて
新生児科医や救急医に比べて、
価値の低い医師さ。
という自分を卑下した意識があります。
■ ■
国は、医師不足解消のために、医師養成を急いでいます。
北海道では、札幌医大と旭川医大の入学定員を
2009年度入学生から増員しました。
私は、国の政策に懐疑的です。
かつて、国策で作った、
防衛医科大学校卒業生のうち、
現在まで、防衛医官として、
防衛省職員のままの‘先生’は
何%いらっしゃるのでしょうか?
■ ■
もちろん、防衛医科大学校を卒業後は、
最低9年間は、防衛省に勤務しなくてはならないという、
‘義務年限’がありました。
ところが、現実には、
お金を払って義務年限を免除してもらい、
晴れて自由の身になった‘先生’が
何人もいらっしゃいました。
そのため、
義務を免除するために必要な‘お金’を
増やしたという話しを聞いたことがあります。
■ ■
なぜ、防衛医大出身の先生は
防衛省を退職したのでしょうか?
医師として働く魅力が乏しいから、
防衛省を退職して、
民間の医療機関に就職したり
ご自分で開業したりしたのではないでしょうか?
■ ■
人間は、やりがいがあって、
仕事に見合った報酬を得られれば、
簡単には、職場を変えないものです。
市立札幌病院新生児科の先生は、
助からないと思われた、500㌘の赤ちゃんを救命して、
立派に育っていく様子を、お母さんとともに喜ぶことができて、
両親や祖父母からも感謝されて…
だから、36時間勤務でも、辞めないで働けるのだと思います。
■ ■
私は、毎日、朝から深夜まで仕事をしています。
日記の更新やメールの返事は、
午前0時を過ぎていることもよくあります。
私が、市立札幌病院に勤務していたのは、30歳台後半でした。
当時は、今よりもっと働いていたと思います。
北大に通って、研究もしていました。
自分にとって、医師としての青春時代だったと思っています。
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私は、その頃に、救急部や未熟児センターへ行くのが好きでした。
自分にとって未知の世界だった救急医療の現場や
触っただけで、壊れそうな赤ちゃんを助けることに
少しでも、医師としてお手伝いできることに、魅力を感じていました。
皮膚のキズが少しでもよくなると、
お母さんと一緒に喜びを共有できました。
■ ■
今は、形成外科や美容外科の手術をしています。
もう、総合病院の形成外科医として働くことはありません。
私は形成外科の手術も美容外科の手術も好きです。
人をキレイにして、喜んでもらえるのは嬉しいことです。
遠くから、この日記を読んでくださって、
メールでご相談を受けることもあります。
■ ■
面識がない方から、ご相談を受けても、
できる限りのご返事を差し上げているつもりです。
ただ、どんなにキレイに手術をしても、
どんなに丁寧に手術をしても、
わたしたち、美容形成外科医ができることは、
体表面のキズや形を治すことです。
人の命を助ける‘医師’よりも、
価値が低いような気がしています。
私はもう救急医にも新生児科の医師にもなれません。
自分の美容形成外科医としての職責を
できるだけ誠実に果たしたいと考えています。