昔の記憶
祖母の手アイロン(朝日新聞ひととき)
平成24年11月2日、朝日新聞朝刊、ひとときへの投稿です。
祖母の手アイロン
「虎太郎に手アイロンを教えたの、あなた?」。母に突然そう聞かれ、「教えた……かな?」と答えた。何となく心当たりがある。
アイロン嫌いな私は、6歳の息子の幼稚園の制服にも、たまにしかアイロンをかけない。たしかに息子の前で、ガーゼのハンカチをきれいに手アイロンで仕上げ、ポケットに入れてあげたことがある。息子は、何か素晴らしいものでも目にしたように、歓声をあげて出かけていった。
息子も自分で手アイロンをして、ハンカチをたたんでいたらしい。「おばあちゃんの得意技だったよね。まさか虎太郎が知ってるなんて」。母はそう続け、私はハッとした。
手アイロンを教えてくれたのは、今は亡き母方の祖母だった。息子が寝返りをするかしないかのころ、どうしても母と買い物に行きたくて、祖母に子守を頼んだ。帰って来てバタバタと洗濯物を取り込み、たたみ出すと、祖母は「何だね、そのたたみ方は」と言いながら、しわくちゃの手で丁寧に丁寧に布オムツのしわを伸ばしてくれた。
綿の物なら手アイロンで足りることが多い。すてきなエコおばあちゃんの知恵が、ひ孫に引き継がれた。
静岡市 山田百子 主婦 34歳
(以上、朝日新聞より引用)
■ ■
手アイロンという言葉をはじめて聞きました。
美しい響きの言葉です。
虎太郎くんというお名前も素敵です。
こたろうくんなのかなぁ~
とらたろうくんかなぁ~
…と考えながら読ませていただきました。
■ ■
どうしても母と買い物に行きたくて、
祖母に子守を頼んだ
…というのも素敵です。
ひいおばあちゃんは…
お孫さんとどんな話しをしたのでしょうか?
優しそうなおばあちゃんの顔が浮かびます。
■ ■
祖母は「何だね、そのたたみ方は」と言いながら、
しわくちゃの手で
丁寧に丁寧に
布オムツのしわを伸ばしてくれた。
布オムツはわが家でも使っていました。
肌触りがいいです。
■ ■
札幌美容形成外科では、
手術用には布の被布(おいふ)を使っています。
家内の母(片寄登喜子)が縫ってくれました。
紙の使い捨て被布より肌触りがいいです。
札幌美容形成外科の職員は、
毎日、手アイロンで布を伸ばしてくれます。
私が着ている緑の術衣も…
職員の手アイロンです。
手のぬくもりが感じられます。
“祖母の手アイロン(朝日新聞ひととき)”へのコメント
コメントをどうぞ
先生の深緑の服も クリーニングだと思いました。 私の母も昭和一桁生まれなので 洗濯物を干す時はアイロンがいらないように よく、しわを伸ばして干すよう言われています。
温もりを感じます。医療に対する姿勢にです。思えば医療は直接「手」と身体が触れ合うことがとても多いですが、こういう発想を忘れていました。この手の温もり、手の温かみは、信頼にも繋がりますね。何億の最新鋭の医療機器を導入した!というお話に対しては「へえ、凄いな~」と思いますが、手をかけたり手の温もりを重視してます、と言われたら「あ、一つひとつ大事に手術をしてもらえるんだろうな」と受け止めかたが変わります。
莫大な広告宣伝費をかけてマスメディアでPRしても、この点は決して伝わってこないです。毎日メッセージを発信し続ける大変さには敬服いたします。何にも勝る宣伝だと思います。
母も私はアイロンがけが好きではないので、
父がワイシャツにアイロンがけをかけ始めると
自分のブラウス、ハンカチなど、出し始めるのです。
父は自分が頼られているのを楽しそうに
もっと「持って来ていいよ」と言いました。
70歳をもってリタイアしてからは
アイロンがけをする人がいなくなり、
さくらんぼさんのように干す時に叩いて
シワを伸ばし、たたむ時もシワを伸ばしています。
こんないい加減な気持ではなく、
このコラムは暖かさを感じますね。