医学講座
高木章好先生の教え
帯広の高木章好先生を検索したところ、
先生が書かれた文章を見つけました。
携帯では読めないPDFファイルなので、
かなり長文ですが…
院長日記に入れてみました。
医学を志す人や、
医療関係者にはぜひ読んでいただきたい文です。
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″誤診″から得た教訓
痛痒い発疹
皮膚病診療(2003.06)25巻Suppl、2:140~141
高木章好(帯広市・高木皮膚科)
医学の細分化、治療の専門化へ向かう傾向にある現在の医療行為の中で、「木をみて森をみない」医者が増えていると思う。これから臓器別専門医の時代が来るかもしれない。幸いわれわれ皮膚科医は皮膚という1つの臓器の疾患を扱うので、細分化されにくい科だが、ヒトの表面をおおう、広く大きい臓器であるとともに、疾患が他人および患者本人にもみることができるで、誤診も多くの人に知られやすく、ごまかしのできない、巌しい科であると思う。
われわれ小都市の開業医は大学との関係を密にして、むずかしい疾患、診断できない疾患の紹介等連携を保つことは必須であり、小院はこれらの連携が整っているので、むずかしい疾患の誤診例はほとんどない。しかしcommon diseaseの誤診がときどきあり、後に恥ずかしい思いをし、訂正することが度々ある。初診時われわれは問診で「痒いですか?」「痛みはありますか?」と尋ねるが、このとき「痛痒い」と答えられ、発疹をみると、片側に帯状に並んだ、丘疹、および漿液性丘疹をときどきみる。このときはまだ中心に凹みのある水疱がないのに、帯状疱疹と診断し早期に治療を受けなければ神経痛が後遺症で残り、長い間痛みに苦しむと説明し、高い抗ウイルス剤を投与して、2日後、痒みが増し、発疹も増加してきたと来院され、丘疹だけが増加していたため、発病する前の日に木の下か公園に行かなかつたか質問すると、「行っていた」という。毛虫皮膚炎であった。
たまたま薬剤費の負担のない人であればよいが、負担のある患者さんに投与した後であったときは申し訳なく、どのように対処してよいか、戸惑うことがときどきある。市販されている抗ウイルス剤はもう少し安くならないものか、今年10月から老人にも薬剤費の1割、2割負担が導入されるとますます使いにくくなり、さらに患者さんも治療コストに意見をいう機会が多くなるので気をつけなければと思う。
またこれから皮膚科医は往診の機会が増えてくると思う。この際、手ぶらで出かけ発疹をみて即断し、病名を決めなければならず、検査をして、その結果をみてから診断しましょうとの時間かせぎができない科である。ある日病院の往診を頼まれ、ある病室だけ皮膚病が多発し、介護病棟で寝たきり、自覚症状もわからない。1例にノルウェー疥癬と思われたが、私は本症をみるのが初めてであり、他の患者は多彩な皮膚変化をもっていて、感染源を確定できず、病院の事情も考えて、カンジダ症として治療しましょうと治療開始したところ、数日後職員も痒い発疹が出現したとの報告を受け、すぐに往診しカバーグラス、スライドグラスをもって行き、ノルウェー疥癬の患者の落屑を調べた。多数の疥癬虫を確認したので、病院長と話し合い、疥癬の治療を始めて、職員、患者とも1ヵ月ですべて沈静させたが、このような場合には相手の病院の事情もあり、すぐに確定診断を伝え、パニックにならないよう配慮して、ワンクッション置いてから治療を始め、いたずらに不安を煽るような言動は避けるほうがよいと考えた。また疥癬は老健施設、療養型病室でときどきみられるので、治療法、予防法等を習得しておき、パニックのおきないように指導をする義務を皮膚科医がもつべきと考えている。
これからもcommon diseaseをしっかり診断し、むだな検査、高価でむだな薬を使う医者といわれないよう、これを機会にさらに気をひきしめて外来に座っていたい。
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高木章好先生の素晴らしいところは、
ご自分の失敗談を、
正直に文章になさることです。
患者さんにも、
正直に謝っていらっしゃいます。
これがなかなかできません。
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私も療養病棟で疥癬を誤診したことがあります。
なかなか虫が見つかりませんでした。
皮膚科は専門外です。
虫が見つかると診断できますが、
見つからないこともあります。
皮膚科の先生に見つけていただきました。
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高木先生は医療費のことまで、
細かく心配されて、
申し訳なく、
戸惑うことがときどきある
…と書かれています。
なかなか文章にできないことです。
医療に携わる方に、
読んでいただきたいと思いました。
心のどこかに記憶していたい文章です。
“高木章好先生の教え”へのコメント
コメントをどうぞ
高木先生は素晴らしい先生ですね。
山形は今日冷たい雨降りだったので内科と婦人科に行ってきましたが2医院で薬含め2万弱でした。別に検査をしたわけではないです。
帯状ほうしんの時はたいていの先生は高いお薬ですが服用しますか?と聞いてくださいますが、早く治るのならくださいと藁をも掴む思いでお願いします。 でも帯状ほうしんでなかったら え!?と思いますよね。本当に患者思いの先生ですね、高木先生は。
私は尊敬できる高木理事長の診療所で仕事をする事ができて、幸せです。
私に勉強の仕方を教えてくれたのも理事長です。
患者さんに医療費負担がかからないように・・・かからないように・・・と考えながら診察し、処方薬を考えています。