昔の記憶

誤診の経験

 私も‘誤診’をしたことがあります。
 わきがではありません
 手術の必要はありません
 …と診断した方…
 どうしても手術をしてほしいと来院され、
 実際に手術をしてみると…
 アポクリン腺がたくさんあって、
 患者さんに謝ったことがあります。
      ■         ■
 私が36歳頃だったでしょうか?
 市立札幌病院に勤務していました。
 当時のわきが診察法は、
 ガーゼを脇にはさんでいただき、
 しばらくしてからそのガーゼを外し、
 その臭いをチェックする方法でした。
 教科書に書いてある方法です。
      ■         ■
 私が臭いを嗅いでも…
 外来の看護婦さんが嗅いでも…
 臭いは感じられませんでした。
 今から考えると、
 わきが診察法としては不十分です。
 若い患者さんは…
 気にする人ほど…
 きれいにして病院に来ます。
 臭いが無いこともあります。
      ■         ■
 今は直接わきの皮膚を見たり、
 水のような汗(エクリン汗腺からのふつうの汗)か?
 クリームのような汗(アポクリン腺からの汗)か?
 汗の範囲はどの程度か?
 毛の太さや…
 毛を抜いた痕などもチェックします。
 毛を抜いている人には…
 粉瘤(ふんりゅう)という
 腫瘍ができていることもあります。
      ■         ■
 制汗剤のつけすぎで、
 脇の皮膚が黒くなっている人もいます。
 必要に応じて…
 皮膚の炎症を治す薬を出すこともあります。
 私がわきがを誤診した患者さんは、
 制汗剤で様子をみていましたが…
 どうしても臭いが気になるとのことでした。
      ■         ■
 自己臭恐怖症でないことを確認して、
 市立札幌病院で手術をしました。
 手術でメスで切ってみると…
 たくさんのアポクリン腺がありました。
 臭いの原因でした。
 ガーゼをはさんだだけで…
 わきがでないと診断したことを後悔しました。
 せっかく勇気を出して…
 市立札幌病院まで来て下さったのに…
      ■         ■
 手術後に…
 私は患者さんに謝りました。
 患者さんは…
 怒りもせず…
 治してくれたから、
 感謝しています…
 …と言ってくださいました。
 今でも忘れられない患者さんです。

“誤診の経験”へのコメントを見る

TEL 011-231-6666ご相談ご予約このページのトップへ