医療問題
看護基準
病棟に勤務する看護師さんの数によって、病院のランク付けがされています。
患者さん一人当たりに対して、看護師さんの数が多いほど‘良い病院’と判断されます。
厚生労働省が決めた看護基準です。
2006年3月6日に出された、厚生労働省告示第93号(基本診療料の施設基準等)で国の基準が変わりました。
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7対1入院基本料の施設基準というのが、国が決めた新しいルールです。
‘良い病院’にはご褒美として、たくさんお金が配分されます。
診療報酬という病院の生命線ともいえる収入が、看護師の数によって決まります。
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病院はホテルと同じで、患者さん一人当たり、一日いくらで入院費が支払われます。
ホテルは☆の数で、ランクや料金が決まるそうですが、病院はいくら豪華に作っても料金は値上げできません。
同じ病院の建物・設備でも看護師の数を増やすと、一日の入院費を増やしますというのが、厚生労働省が決めた方針です。
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簡単に説明すると、看護師の数を増やすと、一日12,090円だった入院費が、15,550円に増えます。(一人当たり3,460円の増収になります)。
病棟単位で計算するので、病棟の入院患者が50人だったとすると、一年で、
3,460円×50人×365日=63,145,000円の増収になります。
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看護師さんの人件費が増える分を差し引いても、病院は十分に‘儲かります’。
これで、大学病院や公立病院も、なりふり構わず看護師を大量に募集しました。
その結果、大病院に看護師が集まり、民間の中小病院や私たちのような診療所は看護師不足になりました。
ある先生が、昨年から看護師を募集しても一人も応募がなかったと話されていました。
当院はまだ応募者があるので、ありがたいと思っています。
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ある大病院では、病棟の看護師が20人から30人に増えたそうです。
しかし、その増えた10人が全員新人看護師。
一番人件費が安いのが、卒業したての‘新人看護師’です。
専門学校を卒業した看護師も大卒の看護師も、卒業したてでは何もできません。
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医師も看護師も、現行法の下では、免許証を取得するまでは針一本刺せません。
新人看護師は1~2週間の研修期間に針を刺す‘特訓’を受けます。
静脈内留置針という点滴の針は、もっと難しいので、ベテランに付き添われて刺します。
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4月~6月くらいまで、大病院へ入院すると、新人看護師の練習台になることを覚悟する必要があります。
30人中10人が新人となった病棟は、当然、最初は看護の質が低下します。
夜勤ができるようになるまで、最低数ヵ月。リーダーとして、チームをまとめられるようになるには最低一年近くかかります。
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30人中10人が‘新人看護師’でも、国が決めた看護基準は満たされています。
人件費が安く、収入が増えるので、その病院は潤います。
これが、厚生労働省が決めた‘医療制度改革’です。
だから私は厚生労働省が嫌いです。
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保険診療をしていると、医療保険制度の矛盾を身にしみて感じることがあります。
国民は、年金問題で相当頭に来て、選挙で自民党が大敗しました。
医療は、国民が健康で文化的な生活を営むためになくてはならない制度です。
厚生労働省は、もう少し国民のためになる政策を立案し実行して欲しいものです。