医療問題
まな板の鯉
医師にとって、医師本人や医師の身内を治療するのは、ストレスなものです。
相手は、同じ業界で生計を立てているプロです。専門が違っても、医療の裏も表も熟知しています。
私の父を治療していただいた、長岡康裕先生にもご苦労をおかけしました。
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私の父が受けた治療は、経皮経肝的胆嚢ドレナージ(PTGBD)という治療です。
一般的な、治療説明・同意書には次のように書いてあります(高知医療センターHPから引用:()内の注釈は私が追記)。
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1.現在の病状と処置・検査・治療の必要性について
原疾患(ゲンシッカン=もともとの病気の意味)により胆嚢管(タンノウカン)の狭窄・閉塞(キョウサク・ヘイソク=細くなりつまること)が生じています。また胆嚢炎があります。
このような状態を放置すると敗血症(ハイケツショウ=からだ中にバイ菌が回ってしまう病気)を合併し、全身状態の悪化が起こり致命的(チメイテキ=死んでしまうこと)ともなりかねません。
そこで胆嚢にたまっている胆汁を体外に放出することにより胆嚢炎の治療を行います。
2.処置・検査・治療の方法
この治療は局所麻酔で行います。超音波でみながら胆嚢を穿刺(センシ=刺すこと)し、ドレナージチューブ(膿を出す管のこと)を留置します。
3.処置・検査・治療に伴う合併症と危険性、および緊急時の処置について
頻度的には非常にまれなものも含めて、以下のような合併症の可能性があります。
現在の疾患の治療の上で必要な検査、手技です。緊急時の処置は勿論万全を期して施行しますので、ご了解下さい。
1:局所麻酔薬(キシロカイン)に対するアレルギー
2:反応穿刺に伴う合併症として、穿刺部の血腫形成、肝臓からの出血、感染、等
3:胆嚢を傷つけることにより、胆汁が腹腔内に漏れだし胆汁性腹膜炎を起こす場合があります。
内科的治療で軽快しなければ外科的手術(胆嚢摘出および腹腔ドレナージ)が必要となります。
4:肺の近傍を穿刺することによる気胸。程度によっては胸腔ドレナージが必要となります。
5:ドレナージチューブが抜けたり,つまったりした場合には交換が必要となります。
(以上、高知医療センターHPから引用)
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ベテランの先生がすれば合併症も起こさずに済む治療ですが、時には思わぬことが起こる場合もあります。
特に高齢者の場合は、いつ何が起こるか予測がつきません。
治療を受けた父は、おそらく同意書にサインしていると思います。
合併症の危険があろうと、耐えられない激痛を一刻も早く取り除いて欲しいというのが切実な願いです。
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私は自分が治療を受ける時も、身内が受ける時も、いつも次のように言っています。
『どんなことがあっても、絶対に文句は言いません』
『どうか治してください』
『お願いします』
言われる方の立場としては、これも結構なプレッシャーです。
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医師も経験を積んで、立場が上になるほど、ストレスの多い治療を引き受けることになります。
治療は人間がやる人間相手の仕事です。一つとして同じ治療はありません。
どんな治療や手術にもリスクはあります。
植皮術などは、今でも100%成功させるのは至難のわざだと思っています。
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札幌美容形成外科には、たくさんの医療関係者の方がいらしてくださいます。
私はどんな方の手術でも、自分の身内や‘お医者さん’だと思って治療しています。
どんな手術や治療でも緊張して施術しています。
自分を信頼して、治療を受けてくださっている方に、いい加減なことはできません。
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自分が信頼されていないかなぁ~?と感じた時には、手術をお断りすることもあります。
幸い、形成外科や美容外科には緊急性がある治療は多くはありません。
自分が信頼できて、心から『お願いします』と言える先生を見つけてくださいとお伝えします。
ちょっと偏屈な医者だと非難されることもありますが、これが私の考えです。
私は自分が手術を受ける時には、慎重に‘先生’を選んで、まな板の鯉(コイ)になります。