医学講座
毛を剃ると濃くなる?
平成19年12月25日、朝日新聞朝刊に次の記事が掲載されていました。
暗い所で本「目悪くなる」
医学的根拠ない、と米チーム
米国で一般によく信じられている体に関する言い伝えについて、科学的な根拠について調べたものです。
今日はこの中から、『毛を剃ると濃くなる』という言い伝えについて解説します。
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この論文のタイトルはMedical myths(医学神話)。
2007年12月22日発行の英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」クリスマス特別号に掲載されました。
米国、インディアナ大のチームがまとめました。
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論文執筆者は、Rachel C Vreeman先生。
インディアナ大、小児医療研究所の研究員の先生です。
ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルは英国の権威ある医学雑誌です。
日本語に訳すと、英国医学雑誌。略称、BMJです。BMJで検索すると、HP(英語)が出てきます。
本題の、毛を剃ると濃くなるについて、もう少し詳しく解説します。
次の英文が、BMJに掲載された原文です。
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Shaving hair causes it to grow back faster, darker, or coarser
BMJ 2007;335:1288-1289 (22 December)
Rachel C Vreeman, fellow in children’s health services research,
Aaron E Carroll, assistant professor of paediatrics
Children’s Health Services Research, Indiana University School of Medicine, Indianapolis, IN, USA
Another common belief is that shaving hair off will cause it to grow back in a darker or coarser form or to grow back faster.
It is often reinforced by popular media sources and perhaps by people contemplating the quick appearance of stubble on their own body.
Strong scientific evidence disproves these claims.
As early as 1928, a clinical trial showed that shaving had no effect on hair growth.
More recent studies confirm that shaving does not affect the thickness or rate of hair regrowth.
In addition, shaving removes the dead portion of hair, not the living section lying below the skin’s surface, so it is unlikely to affect the rate or type of growth.
Shaved hair lacks the finer taper seen at the ends of unshaven hair, giving an impression of coarseness.
Similarly, the new hair has not yet been lightened by the sun or other chemical exposures, resulting in an appearance that seems darker than existing hair.
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参考文献
1. Paus R, Cotsarelis G. The biology of hair follicles. N Engl J Med 1999;341:491-7.
2. National Women’s Health Resource Center. Shaving dos and don’ts for teens. 2003.
3. Trotter M. Hair growth and shaving. Anatomical Record 1928;37:373-9.
4. Saitoh M, Uzuka M, Sakamoto M. Human hair cycle. J Invest Dermatol 1970;54:65-81.
5. Lynfield YL, Macwilliams P. Shaving and hair growth. J Invest Dermatol 1970;55:170-2.
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毛を剃ると濃くなるという、‘迷信’は、日本だけではなかったようです。
そして、1928年という、いまから80年も前に、科学的に、毛を剃っても濃くならないことを証明した人がいました。
せっかく、80年前に研究してくれた人がいたのに、迷信は信じられたままでした。
毛で悩んでいるのは、日本人だけではないようです。
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英文部分の翻訳です。
Yahoo翻訳に、コピー&ペーストしても翻訳してくれます。
最初の行から、USAまでは、論文のタイトルと著者、共著者、所属、住所です。
Another common belief isからが、本文です。
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毛を剃ると濃くなるというのも、よく間違われる迷信です。
毛を剃ると、プツプツとなるので濃くなったと思います。また、間違った解説をしているサイトもあります。
剃っても毛が濃くならないという、科学的な証拠があります。
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古く1928年には、剃っても毛が濃くならないことを、臨床試験が示しています。
近年の研究でも、剃っても濃くもならないし、生える早さも同じことが確認されています。
毛の剃られている部分は、‘死んだ’部分で、生きているのは、皮膚の下の部分です。
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毛を剃ると、毛先の細くなっている部分がなくなります。
生えてきた毛先が、剃られて太くなっているので、ブツブツとした印象を与えます。
光が当たっても、濃くなったように見えるのです。
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あまり、上手な訳ではありませんが、毛は剃っても濃くならないということが書かれています。
参考文献には、1928年のものがあります。
1970年の文献では、斉藤M先生という、日本人の研究も見られます。
それだけ、毛では世界中の人が昔から悩んでいたことがわかります。
ここには書かれていませんが、レーザー脱毛は偉大な発明だったと思います。