昔の記憶
夜明け前の空は、きれいだった
平成26年2月13日(木)北海道新聞朝刊、
『いずみ』への投稿です。
夜明け前の空は、きれいだった
1月の晴れた日の早朝だった。見上げると、きれいな星空で、満月がこうこうと輝いていた。こんなにもきれいだったのか。私は、しばし美しい夜明け前の空を見つめていた。
いつも午前4時すぎ、厳しい寒さの中、夫とともに私は自宅を出る。自動車ガラス販売、取り付けの商売で使う荷物が問屋から届くので、工場のシャッターの鍵を開けに行くのだ。それは創業以来47年、毎朝夫の日課だった。夫はこれまで、入院するような大病をしたことはないが、老いてくるとあちこち故障も多くなってきて、私は心配になってきた。それで近ごろは一緒に行くことにしている。
83歳の夫は、歩みが遅いため最初はイライラした。だが老人が、忍者のように素早い行動ができたら、これはまた心配な面もある。ゆっくり近づいてくる夫を待つ間、空を見上げるようになった。うっとりして寒さを忘れるひと時だ。
思えば、結婚して56年。9年間の農業生活から3ヵ月後、何の知識も無いまま商売を始めた。ひたすら仕事に明け暮れる毎日だった。社員や家族を路頭に迷わせたくない、人に迷惑を掛けたくないという思いを背負いながら。幸い今は、次女夫婦が後を継ぎ、私は夫と2人気楽な毎日である。
これから先も夫婦そろって、この日のような満天の星空を観賞しながら、残りの人生を楽しみたいと思う。
桐谷美衣(よしえ)[77歳・主婦]=帯広市
■ ■
帯広は星がきれいな街です。
私は平成7年1月から平成10年3月まで、
JA帯広厚生病院形成外科に勤務しました。
1月の帯広は寒いです。
氷点下20度はザラです。
マイナス30℃近くになることもあります。
■ ■
1月の午前4時は真っ暗です。
満月の夜は、
月明かりで明るいです。
結婚して56年。
ご主人83歳。
奥様77歳。
創業以来47年。
どれも私には真似のできない数字です。
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ひたすら仕事に明け暮れる毎日
社員や家族を路頭に迷わせたくない
人に迷惑を掛けたくないという思い
私も同じ思いで仕事をしています。
辛いこともありますが、
なんとかがんばろうと思います。
桐谷美衣様
素敵な文章をありがとうございました。
いつまでもご主人と仲良くなさってください。