医学講座

カンニングで仕事を覚える

 今日から4月です。
 新年度のはじまりです。
 今日は土曜日なので、
 来週月曜日、
 2017年4月3日から仕事の人が多いと思います。
 私が医師免許を取得した、
 1980年は4月に医師国家試験がありました
 4月1日はまだ最後の勉強をしていました。
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 医師として認められたのは、
 1980年5月26日です。
 医籍いせきという、
 お医者さんの戸籍のようなところに登録され、
 登録番号が通知されて、
 はじめて医師としての仕事が可能になります。
 免許証をいただいたのは、
 保健所を通して申請するので、
 さらにその後でした。
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 どの職種でも同じです。
 受験勉強は、
 予備校の先生が親切丁寧に教えてくれます。
 社会人の新人教育も、
 一応オリエンテーションはありますが、
 実際に現場に出て、
 先輩の仕事を見て覚えます。
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 今までは絶対にしてはいけなかった、
 カンニングで仕事を覚えます。
 先輩の仕事を見て、
 どうやったら早く正確にできるか、
 カンニングするのです。
 職場によってやり方が違います。
 電子カルテもシステムが違うと、
 オーダーの入れ方も違います。
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 医師2年目
 2011年5月13日の院長日記です。
 卒後2年目の私は、
 医師としては…
 何もできませんでした。
 救急搬送された患者さんを診ても…
 ただおろおろするような…
 ひよっこ医師でした。
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 形成外科医とは名ばかりで、
 大学病院の業務は、
 検査の伝票を書いたり
 (昔の検査オーダーは手書きでした)、
 処方箋を書いたり
 (処方箋も手書きでした)、
 患者さんの写真を撮ったり
 (これだけは自信がありました)、
 医師とは関係のない業務でした。
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 手術室では、
 メスは持てませんから、
 術野の消毒をしたり、
 被布(おいふ)という布をかけたりするのが、
 新米医師の仕事でした。
 カンファレンスの資料を揃えたり、
 患者さんのスライド整理も、
 重要な仕事でした。
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 上の先生が手術した患者さんの、
 ガーゼ交換をしたり、
 軟膏処置をしたりするのが、
 新米形成外科医の仕事です。
 最初から、
 切ったり縫ったりはできません。
 今から考えると、
 こうした時間があってよかったと思います。
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 先輩が手術をしても、
 経過が良い患者さんばかりではありません。
 困った時にどうする?
 どう対処する?
 …という…
 教科書に書いていないことを、
 身をもって体験できるのは、
 こんな時しかありません。
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 北大形成外科は、
 大浦武彦先生を頂点として、
 優秀な先輩がたくさんいらっしゃいました。
 卒後2年目の私が得意だったことは、
 やけどの患者さんの風呂入れでした。
 熱傷浴室という日記に書いてあります。
 若い女性の顔にメスをいれるなんて…
 とても考えられませんでした。
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 専門医を取得後も、
 できる手術は限られていました。
 手術後の経過がよくない患者さんもいました。
 毎日必死で仕事をしていました。
 30代前半が一番大変でした。
 釧路労災病院手術室
 2011年8月17日の院長日記に書いてあります。
 2017年4月から新人になった方への助言です。
 頭で考えるのではなく、
 身体で覚えてください
 反射的に仕事ができるようになります。
 上手にカンニングで仕事を覚えてください。

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