医学講座
顔面神経マヒと朝戸裕貴先生
聴神経腫瘍ちょうしんけいしゅようは、
頭の中にできる腫瘍です。
手術をすると、
顔面神経麻痺になることがあります。
聴神経腫瘍ちょうしんけいしゅようの手術は耳鼻科でします。
顔面神経再建を耳鼻科から依頼されたことがありました。
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顔面神経再建の思い出
2011年9月14日の院長日記です。
忘れられない患者さんです。
先生、
私の顔、
ちゃんと動くようになるのですか?
手術は完璧にしましたが、
100%動くようになると言うことはできませんでした。
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この2011年9月14日の院長日記を、
ある患者さんが読んでくださいました。
私の院長日記がきっかけとなり、
獨協医科大学形成外科教授の
朝戸裕貴先生に診ていただきました。
その方から、
御礼のメールをいただきました。
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教授という偉い立場の方なので、、、
と心配していたのですが、
とても優しい笑顔で
包み込むような雰囲気でお話をされる方でした。
本間先生のブログで記述がなかったら、
知る由もなく受診を考える事もありませんでした。
先生のブログに本当に感謝しています。
ありがとうございます。
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お役に立ててよかったです。
2011年9月14日の院長日記を、
もう一度掲載します。
私は札幌医大形成外科の講師を、
平成10年(1998年)から14年(2002年)までの4年間勤めました。
最後は、
医学部長から…
泥足で蹴られて追い出されました。
仲間だと思っていた同僚にも…
見事に裏切られました。
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残念な4年間でしたが…
医師として貴重な経験もできた4年間でした。
一番の想い出は、
耳鼻科の先生とたくさんの再建手術ができたことです。
英文論文にした…
チンの皮で気管を作る
…という手術もあります。
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耳鼻科というと…
耳、鼻、のどを診るお医者さんのイメージがあります。
優しい先生が多く…
額帯鏡(がくたいきょう)という…
大きな丸い鏡をつけて、
その真ん中から…
耳や鼻やのどを診てくれるイメージです。
今は高性能のカメラで見てくださるクリニックもあります。
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耳は、
頭蓋骨とつながっています。
耳鼻科医は脳の一部も診たり、
頭蓋骨の中も手術をします。
私が頼まれたのは…
頭蓋内の顔面神経が…
腫瘍に巻き込まれていて…
切除しなければならないので…
そこに神経移植をしてほしいという内容でした。
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患者さんは…
まだ若い女性でした。
顔面神経の根っこを…
数センチ切断してしまう手術です。
手術前には正常だった顔が、
手術後には片側がまったく動かなくなります。
神経を切断しなければ…
腫瘍は切除できません。
待ったなしです。
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神経移植はそれまでにも経験がありましたが、
頭蓋内の移植ははじめてでした。
神経をつなぐ技術には自信がありましたが…
果たして正常に機能するか?わかりません。
患者さんへの説明は、
切断された神経の断端に、
他の神経を移植します。
数ヶ月~1年で回復する見込みです。
…という内容でした。
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手術は無事に終わりました。
頭蓋内への移植ははじめてでしたが…
神経そのものは正確につなげました。
他の神経を橋渡ししました。
問題は、
その神経を移植した場所です。
骨の真上でした。
血流の悪い場所でした。
皮膚や粘膜だったら移植しても着きません。
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術後2ヵ月しても…
麻痺した側の顔の表情は…
まったく動きませんでした。
先生、ほんとうに動くようになるのですか…?
もし動かないなら…
早めに他の方法で治した方がいい…
…と言う先生もいらっしゃるようです。
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患者さんの不安はもっともです。
当時、東大病院形成外科では…
顔面神経麻痺の再建を盛んになさっていました。
患者さんのご希望で…
当時、東大形成外科で助教授をなさっていらした、
朝戸裕貴先生(現、獨協医科大学形成外科教授)にお願いして、
セカンドオピニオンをいただきました。
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私が紹介状を書いて…
患者さんは東大病院まで行かれました。
朝戸先生のセカンドオピニオンは、
今すぐに再手術をしないで、
もう少し神経の回復を待ってみましょうでした。
私も患者さんも安心して待つことにしました。
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東大から帰って数ヶ月後でした…
♡先生うごいてきました♡
患者さんの麻痺した顔面が…
わずかに動き出しました。
少しずつですが…
麻痺していた顔面が動くようになりました。
手術後一年もすると、
日常生活で不自由することはなくなりました。
神経移植は回復まで時間がかかります。
患者さんも医師も…
じっと待つ長い時間が必要です。