医学講座
医療とは「声」聴くこと
平成29年11月1日、北海道新聞朝刊の記事です。
医療とは「声」聴くこと
特別編「Fan-Funフェスタ」の講演から=2017年10月29日、札幌・道新ホール
道民の皆さんに感謝の気持ちを伝える「どうしんFan-Funフェスタ『ありがとうの日。』」(北海道新聞社主催)の一環として、方波見康雄さんの講演会が2017年10月29日、道新ホールで開かれ、約650人の聴衆が方波見さんの話に耳を傾けた。講演の一部をお届けする。
「医療とはなにか」を皆さんと一緒に考えてみましょう。私が父の方波見医院を受け継いだのは、昭和34年(1959年)4月。それまでは大学で当時としては最先端のがんの免疫研究に携わり、地方のことはまったく知りませんでした。大学病院では難しい病気の患者さんしか診ていなかった。奈井江では「まるごとの人間」、つまり地域に住みつき、生活する、生まれも育ちも違う「人間」が受診に見えたのです。
東京で、永井友二郎という先生が「実地医家のための会」という勉強会を立ち上げ、私はすぐ入会しました。永井先生は「人間を部分としてでなく全体として、生物としてでなく社会生活をいとなむ人間として、みてゆかなければならない」「病気の初期の姿をきちんと診ること」がマチのお医者さんの大切なことであると言われた。私が考えていたことと同じでした。
初期の診断は非常に難しい。症状は軽いが、よくよく診ると大きな病気が潜むことがある。マチの医者はそれをきちんとキャッチする必要がある。そのためにも感性と経験、生涯の勉強が求められるのです。
マチのお医者さんは「迷医」のほうが良い。私はいまだに迷っています。迷うから勉強する、仲間の医師の意見を聞く。自分でさらに調べる。かつて東京大学の有名な内科教授が、ご自身の患者さんで亡くなられた方の4割に誤診があったと発表されました。医療は完璧ではなく、発展途上の学問なのです。各専門学会で出す臨床医の「診療ガイドライン」は、定期的に書き換えられます。医者は今持っている知識が最高であると考えるのは大間違い。医学知識は絶えず更新されると思わないといけない。
故郷での地域医療60年の経験から、医療とは「病気を患う人間のいのちの声に耳を傾けることである」と考えています。「声にもいのちがある」と言ってもよい。私は、患者さんが診察室に入って来られるときに、体の動き、座り方、声、表情、目つきなどの立ち居振る舞いの変化を一つの声として受け止めるように努めています。
最初は勢いよくお話になっても、途中から声が小さくなる方もいる。つらそうな顔をしていたが、話をしているうちに表情が穏やかになり、にこにこして診察を終えられる方もいらっしゃる。さまざまな声を音楽家のように深く聴き取る。専門的に耳を傾ける。知覚・聴覚などの五感すべてを動員して向き合うのが実地医家の医療と考えています。
風邪だけで大病院を受診する方がいますが、考え直したほうがいいですね。高血圧や糖尿病、風邪などの病気は、マチのお医者さんにかかったほうがいい。ゆっくりお話できます。大病院とマチの医師がお互いに時間のやりとりをしあって、大病院の有能な専門医が、ご自分の専門医療に専念できるようにしてあげたい。お互いの見逃しを補うためにも大切なことです。
みなさん、かかりつけ医をお持ちになってください。そして、必要な時には紹介状を持参して専門医を受診する。すると主治医が2人になり、互いに連携しあうようになります。大いに活用したほうが、ご自分のためになります。(方波見康夫=かたばみ・やすお、方波見医院医師・空知管内奈井江町)
(以上、北海道新聞より引用)
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早いもので今日から11月です。
先日、
えりーさんからコメントをいただいた、
方波見康雄かたばみやすお先生のご講演です。
方波見先生は、
北大医学部を1952年(昭和27年)にご卒業されました。
北大医学部28期です。
私の恩師、大浦武彦先生より5期上です。
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1926年(大正15年)、
北海道空知郡奈井江町生まれ、
代々お医者さんの家系です。
亡くなった私の父と同じ、
寅年生まれです。
まだ現役で診療をなさって、
精力的に講演活動もなさっていらっしゃいます。
素晴らしい先生です。
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私が方波見先生の講演で大切だと思ったのは、
医療は完璧ではなく、
発展途上の学問なのです。
各専門学会で出す臨床医の
「診療ガイドライン」は、定期的に書き換えられます。
医者は今持っている知識が最高であると考えるのは大間違い。
医学知識は絶えず更新されると思わないといけない。
■ ■
その通りです。
私がほぼ毎日している、
眼瞼下垂症手術もとても難しいです。
患者さんには申し訳ありません。
私も「迷医」です。
迷うから勉強する、
仲間の医師の意見を聞く。
自分でさらに調べる。
これの繰り返しです。
■ ■
私は自分が勉強しなくなった時、
学会に参加しなくなった時が、
自分が仕事を辞める時期だと思っています。
日本形成外科学会には、
京都の冨士森良輔先生のように、
まだ現役で仕事をなさっていらっしゃる先生がいます。
私も「迷医」で、
これからも勉強を続けます。
素晴らしい講演を記事にしてくれた、
北海道新聞社に感謝いたします。