医学講座
第36回日本頭蓋顎顔面外科学会(札幌)②
2日間の学会で私が勉強したことです。
医学は毎日進歩しています。
毎年何回も学会に出席しても、
全部を勉強することはできません。
今回の学会では、
顔面神経麻痺の治療とリハビリを勉強しました。
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顔面神経麻痺になるとつらいです。
ある日突然自分の顔半分が動かなくなります。
ごはんや水が、
口からこぼれ落ちます。
美しかった顔から、
半分だけ表情が無くなります。
女性も男性もショックです。
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顔面神経麻痺がんめんしんけいまひ
2007年9月22日の院長日記です。
顔面神経麻痺の大部分はウイスル感染で起こります。
顔面神経という神経は、脳神経です。脳から耳の穴の前に出てきます。ここから、耳下腺という組織の中を通り、おでこから唇、首までの表情筋を動かす指令を伝えます。
ですから、顔面神経麻痺になると、おでこにシワができなくなる、眉毛が下がる、目が閉じられなくなる、アッカンベーになる、口が曲がって食べ物がこぼれるなどの症状が出ます。
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顔面神経麻痺には脳の異常で起こる、中枢性顔面神経麻痺と、主に耳から先の異常で起こる末梢性顔面神経麻痺があります。
この中で多いのが、末梢性顔面神経麻痺です。原因不明のことが多く、これをベル麻痺と呼びます。単純ヘルペスウイルス1型が発症に関与していることが疑われています。
子供の頃にかかる、水痘水ぼうそうという病気があります。水痘帯状疱疹すいとうたいじょうほうしんウイルスというヘルペスウイルスが原因でなります。
この帯状疱疹ウイルスが原因でなる顔面神経麻痺をハント症候群と言います。
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ハント症候群は、耳(耳介)や耳の穴(外耳道)に、水ぼうそうのような、小さな水疱や発疹が出るのが特徴です。耳が痛いという症状のこともあります。
このハント症候群には特効薬があります。発症後なるべく早く(できれば3~4日以内)に抗ウイルス薬を投与するとよく効きます。
抗ウイルス薬を投与しても、治らない場合があります。
残念なことに、ハント症候群では、難治性の顔面神経麻痺が残ることがあります。
…とここまでが2007年に書いたことです。
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顔面神経麻痺になっても、
大部分の人はよくなります。
手術が必要になる人の割合は低いです。
残念ですが、
中には麻痺が残る人がいます。
麻痺が残って生活に支障がある人もいます。
その麻痺の後遺症を治すのが形成外科です。
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末梢性顔面神経麻痺まっしょうせいがんめんしんけいまひで、
後遺障害が残った人の手術もさまざまです。
札幌美容形成外科で行っているのは、
下がった眉を引き上げて固定し、
ものを見やすくする手術です。
顔面神経麻痺を発症してから、
いろいろな治療をしたけれど後遺障害が残ってしまった方が対象です。
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今年の学会で勉強してきたのは、
神経麻痺で動かなくなって、
まだ表情筋が回復する可能性がある人の手術です。
神経移植という手術をします。
私が知っていた神経移植手術は、
下腿の神経を採取して、
反対側の顔面神経につなぐ手術でした。
東大形成外科の先生がよくなさっていました。
自然な笑いができるという手術です。
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今年の学会で、
舌下神経と顔面神経をつなぐ手術を見ました。
舌下神経は舌を動かす神経です。
リハビリを上手にすると、
かなり自然な表情になっていました。
リハビリは、
栢森良二かやもり りょうじ先生です。
顔面神経麻痺については、
札幌の脳神経外科医、
澤村豊先生のホームページに詳しく書かれています。