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医師が辞める理由
昨日、天使病院の産婦人科医が9月末で全員辞めるという北海道新聞の記事を紹介しました。
医師が辞める理由はさまざまですが、一つの科の医師が全員辞めるというのは、あまり例がありません。江別市立病院で内科医が辞めたのが記憶にある位です。
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一般の方には想像できないと思いますが、医師は横のつながりが極めて強い職種です。
学会を通じて、全国や世界各国の同業医師と友だちになります。学会発表や論文を見ると、その先生にどの位の力量があって、どんな考えの先生かも推測できます。
医学部は6年間もありますので、100人近い人が小学校1年生から6年生まで同じ学校に通うようなものです。
同級生とは強い連携ができますし、6年間も同じ学校に通うので、性格から行動までおおよそ全てがわかります。
同級生から信頼されない医師は、ダメ医師のレッテルを貼られたようなものです。
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専門科目を専攻するようになってから、一番強いつながりができるのが、大学の同門(ドウモン)です。大学病院で同じ釜の飯を食べて、医師として腕を磨いた仲間のことです。
現在、30歳以上の中堅の先生は、医局制度が健在だった頃に専門医になっています。
私も含めて、何もできなかった新米の医師を育ててくれたのが大学の医局でした。
産婦人科は北大も札幌医大も大きな医局でした。横のつながりも極めて強い医師集団が大学の同門でした。
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天使病院は2003年7月から社会福祉法人聖母会から医療法人社団カレスアライアンスに病院事業が継承されました。
当時の天使病院長は藤本征一郎先生でした。藤本先生は北海道大学産婦人科の名誉教授です。北大産婦人科と強いパイプを作り、地域周産期母子医療センターを立ち上げるというのが医療関係者の見方でした。
医療法人社団カレスアライアンスは、室蘭の日鋼記念病院が原点になっている医療法人です。理事長の西村昭雄先生が、日本製鋼所の企業病院だった病院を、日本でも有数の優良病院に育てたことで有名です。
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西村先生は北大第一外科の助教授から室蘭の日鋼病院の病院長に就任されました。
西村先生が赴任された頃の日鋼病院は、とても立派な病院とは言えない古い病院だったそうです。
その病院を西村院長が大手術をして、今の日鋼記念病院に育てたそうです。
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不思議なことに、日鋼記念病院でも、現在、産婦人科が休診しています。
私の推測ですが、西村理事長と北大産婦人科に何かがあったと思います。
医師が辞める理由はさまざまですが、大学の医局と病院のどちらを取るかと問われれば、答えは大学の医局です。
太い絆(キズナ)で結ばれた大学の同門は団結が強いものです。
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産婦人科医の処遇をめぐって、医療法人との間に‘絶対譲れない何か?’があったのだと思います。
一般病院では、医師の待遇が年々悪くなっています。給料は下がるは、責任は重くなるは、拘束時間は長くなるは…。
急患の診療で休日も休みなし。子供と夏休みを取ろうと思ってリゾートホテルを予約しても、病院からの呼び出しで予約はキャンセル。
奥さんからも子供からも責められては、お父さんも病院を辞めたくなります。
札幌から安心してお産ができる病院をなくさないで欲しいと願っています。