医学講座
会陰切開のきず②
うちの奥さんは、
会陰切開のきずが開きました。
原因は、
縫合する時に、
糸のかけかたが悪く、
皮膚が少しめり込んでしまって、
創縁がしっかり合わなかったためです。
■ ■
産婦人科の先生も、
妊婦さんのだんなが、
形成外科医だと気付かなかったのかも?です。
(私はその先生と同じ病院で働いたことがあります)
(悪い先生ではありませんが…)
(ごはん食べに行こうと言いそうな先生です)
■ ■
今は便利な時代です。
会陰切開(えいんせっかい)を検索すると、
会陰切開 抜糸
会陰切開 溶ける糸
会陰切開しない
会陰切開 抜糸 痛み
…と次々と出てきます。
それだけ困っている方が多いようです。
■ ■
これだけネットが発達しても、
形成外科医が、
会陰切開のことを書いているサイトは見あたりません。
きずを治すプロとして、
会陰切開についてご説明いたします。
まず縫合法です。
■ ■
私たち形成外科医が皮膚を縫う時は、
真皮縫合(しんぴほうごう)というのを必ずします。
顔の傷を縫う時、
真皮縫合をして皮膚をしっかりくっつけてから、
皮膚表面をナイロン糸で縫合します。
顔ですと、
7-0(ななぜろ)という髪の毛くらいの太さの、
黒い糸で縫うのがふつうです。
■ ■
ところが、
お産のあとは状況が違います。
赤ちゃんを娩出した後も、
出血が続きます。
産婦人科の先生は、
すばやく切開部を縫う必要があります。
太めの糸で、
しっかり縫います。
■ ■
創縁がぴったりくっつくことが条件なので、
マットレス縫合という縫い方をする先生もいます。
そうすると、
うちの奥さんのように、
皮膚がめり込んで、
傷が開くことはなくなります。
会陰切開の傷は、
顔の傷のように、
細かくたくさん縫うことはしません。
■ ■
問題なのは、
糸をしばる時です。
専門的には、
結紮(けっさつ)といいます。
上手な先生は、
適切な強さで、
きつくなく、
ゆるくなく縫います。
■ ■
強すぎて、
糸が食い込んでいると、
いつまでたっても痛い原因になります。
産婦さんもいろいろです。
お産が楽な人も、
大騒ぎになる人もいます。
大騒ぎの人に、
一刻も早く縫ってあげようと、
ちょっときつくなることもあります。
■ ■
産後2週間くらいしても、
患部がとても痛い人は、
先生に診ていただくことをおすすめします。
私たちが小陰唇縮小の手術をしても、
痛いのはせいぜい数日です。
ナイロン糸で丁寧に縫っていると、
痛みが一週間も続くことは、
まずありません。
お産のあととは条件が違いますが、
食い込んだ糸が原因で痛いことがあります。