医学講座
会陰切開のきず③
ネットで会陰切開を検索すると、
最初から切開をして縫うのと
裂けてしまったところを縫うのは、
同じなのか?
違うのか?
…というQ&Aがあります。
■ ■
裂けてしまってからぬっても、
傷を縫えば治りは同じです。
…という回答をみかけました。
この回答は間違いです。
医療関係者が回答していました。
形成外科医の立場から言わせてもらうと、
裂けたところを縫うのと、
切ったところを縫うのは大違いです。
■ ■
服をひっかけて、
やぶってしまった時を考えてください。
どんなに高価な服でも、
釘などに引っかけて破った時は、
形がかぎざきになっていて、
断端からは繊維が出ています。
はさみで切って、
ズボンの丈をつめるのとは大違いです。
■ ■
会陰部の皮膚も同じです。
分娩損傷で裂けると、
裂ける方向を決められません。
最悪なのは、
肛門方向へ裂けて、
括約筋という筋肉も裂けてしまう時です。
修復するのは大変です。
■ ■
傷の治りかたも違います。
一般的に、
刃物で切った傷を縫って治す治り方を、
一次治癒
primary wound healing
…といいます。
一番きれいな治り方です。
■ ■
会陰切開は、
あかちゃんが娩出される時に、
産科医が清潔なはさみで切ります。
あかちゃんに傷をつけないように、
上手に切ります。
切る方向は、
右利きの先生が多いので、
産婦さんの左側になることが多いようです。
■ ■
一瞬のことです。
これが原因で大きな障害が残ることはありません。
ちゃんと縫合してもらえば、
傷も目立たなくなります。
たとえ傷がちょっと開いても、
うちの奥さんのように治ります。
会陰切開は人類が生んだ分娩の知恵です。
安心して赤ちゃんを産んでください。