医学講座
会陰切開のきず⑦
会陰切開の最後、
縫合する糸についてです。
とける糸で通院不要
…という2009年12月21日の院長日記があります。
女性の小陰唇縮小手術
男性の包茎手術、
とける糸で縫いますから…
通院は不要です。
抜糸の手間も要りません。
…と魅力的な言葉で宣伝している美容外科があります。
■ ■
私はたとえ陰部でも、
美容目的の手術で溶ける糸は推奨しません。
だまされないでください!
溶ける糸なんてうそです。
吸収糸と呼ばれる糸があります。
バイクリルという商品名で売られている、
米国製の糸が一番有名です。
専門用語でとける糸は…
吸収糸(きゅうしゅうし)と呼びます。
とけるのではなく、
分解されて吸収されるだけです。
■ ■
しかも…
分解されて吸収されるまでには…
一ヶ月以上かかります。
分解される…
ということは、
自分の身体が糸を異物と認識するからです。
当然、糸がついている部位では、
炎症が起こり…
キズは赤く硬くなります。
つまりキズは目立ちます。
■ ■
形成外科でも、
吸収糸(とける糸)を使います。
口の中などの粘膜。
鼻の奥で抜糸が難しい部位。
あとは身体の中の腸管粘膜など…
力がかからない部位に使います。
少しでもキズを残したくない部位…
顔や瞼などには、
とける糸は
絶対に使いません。
■ ■
それじゃぁ先生
お産の時に
とける糸で縫う産科は
悪い病院なの?
みんな傷が目立つの?
…とご心配になると思います。
■ ■
溶ける糸で会陰切開を縫合するのは○です。
正しい選択です。
安心してください。
問題なのは、
糸が残っていて、
痛い場合です。
傷の状態を見て、
溶ける糸でも抜糸します。
■ ■
溶ける糸で縫っても、
お産から2週間もすれば、
抜糸しても大丈夫です。
一ヵ月たっても糸がついていて、
その糸が食い込んで痛ければ、
抜糸すると楽になります。
問題なのは抜糸です。
■ ■
昨日の院長日記に書いたように、
深く食い込んだ糸を、
痛くないように抜糸するには、
先が細いはさみやピンセットが必要です。
形成外科が得意とする分野です。
産婦人科外来には、
先が細いはさみやピンセットが、
ないところもあります。
強く引っ張らずに、
そっと抜糸するのがコツです。
とける糸でも、
一ヵ月たって糸が残っている時は、
先生にお願いして抜糸をしていただいてください。