医学講座
睫毛を全部切ってしまった患者さん
昨日の院長日記、
醜形恐怖症について
2007年10月3日の院長日記、
醜形恐怖症③
…に書いた…
自殺された患者さんのことです。
私にとって忘れられない方です。
■ ■
患者さんの主訴は、
睫毛が目に入って痛い
まぶたの形というより…
睫毛が入ることによって…
目が痛いという主訴でした。
さかさまつげなどでよくある症状です。
■ ■
その患者さんは、
何度か診察していました。
私以外の形成外科専門医も…
別の病院で診ていました。
最初は睫毛も生えていました。
私と別の形成外科専門医は手術をしませんでした。
■ ■
大手美容外科の札幌院で、
上手な先生が手術をしました。
チェーン店ですが、
経験豊富で、
優秀な先生でした。
その先生が何回か手術をしていました。
■ ■
それでも…
患者さんの症状は快くならず…
最後に私のところへ来た時には、
自分で、
鋏で、
上まぶたの睫毛を全部切ってしまっていました。
■ ■
上まぶたの睫毛を全部切っても…
それでも…
睫毛が入って痛いので、
手術で治して欲しいという主訴でした。
何度見ても…
睫毛が入っていた痕跡はないし…
実際に睫毛も入っていませんでした。
■ ■
信頼できる眼科の先生にお願いして、
まぶたと目を診ていただきました。
経験豊富な眼科の先生の意見も、
睫毛は入っていないし…
目にも異常はないでした。
通院中の精神神経科の先生にも、
お手紙を書きました。
お母さんにも説明しました。
■ ■
私の診療記録はそれで最後です。
その数ヶ月後に、
札幌北警察署から電話がありました。
正直なところ…
私はがっくりきました。
今でも忘れられません。
親しい精神科医に話したところ…
ベテランの精神科医は、
みな患者さんの自殺を経験していると言われました。
精神科領域は難しいとつくづく思います。