医学講座

菓子折りを持って謝りに行く

 日本の伝統文化でしょうか?
 謝罪に行く時には、
 菓子折りを持って行くのが礼儀のようです。
 北海道以外はどうなのでしょうか?
 私には、
 苦い経験があります。
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 医療ミスの経験
 開業への思い④
 …に書いてあります。
 私がJA帯広厚生病院の
 形成外科主任部長だった時のことです。
 JA帯広厚生病院は、
 十勝地方で最大規模の病院です。
 夜間の救急患者さんも診ていました。
 形成外科の夜間の担当は…
 2年目の形成外科医でした。
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 私の下に形成外科専門医が一人いて、
 3人体制で形成外科を担当していました。
 夜間は、
 病院の近くに住む若い医師が呼ばれて、
 患者さんの診察や手術をしていました。
 自分で手に負えないと判断すると、
 私の次の先生を呼ぶのが…
 当時の暗黙のルールでした。
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 若い先生は、
 有名国立大学を卒業し、
 医師国家試験も一発で合格した…
 ‘優秀な’先生でした。
 残念なことですが…

 私が‘こうしてはいけない’と
 口うるさく注意していた
 医療ミスをしてしまいました。
 実に単純なミスでした。
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 次の日の外来で…
 そのミスに気付きました。
 外来が終了してから、
 私に報告がありました。
 幸い後遺障害にはなりませんでした。
 私は担当副院長に報告し、
 医事担当次長、
 医事課長と相談しました。
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 ベテランの事務方は、
 事故の対応にも慣れていらっしゃいました。
 事務次長が菓子折りを準備してくれました。
 私は研修医と一緒に…
 患者さんのご自宅まで…
 謝りに行きました。
 幸い後遺障害がなかったこと、
 痛みもなく、
 キズも治ったので、
 患者さんからは訴えられませんでした。

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 この時に、
 JA帯広厚生病院の事務担当次長が用意してくださったのが、
 六花亭の十勝日誌でした。
 北海道の人ならご存知だと思います。
 本のような形をした入れ物です。
 開くと、
 中にお菓子がびっしり入っています。
 確か5000円の十勝日誌でした。
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 私と研修医は、
 その六花亭の十勝日誌を持って、
 患者さんのご自宅まで謝りに行きました。
 突然行ったので、
 患者さんもお母さんもびっくりしていました。
 わざわざいらしていただいて…
 …とまで言っていただきました。
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 幸い後遺障害もなく、
 傷も治りました。
 若い女性患者さんでした。 
 『そんなに謝らないでください』
 『言われなければ…』
 『私はミスに気付きませんでした』
 とまで言ってくださいました。
 菓子折りを持って謝りに行った先生が、
 日本に何人いるかわかりませんが、
 私は医療者側にミスがあれば謝るのが当然だと思います。

“菓子折りを持って謝りに行く”へのコメント

  1. さくらんぼ より:

    山形でも交通事故で示談にしたとしても加害者が菓子折りを持って謝罪に行きます。愚息も夜勤明けとか、雪道でスリップしてなんどか事故り 主人と相手の方に謝罪に行きましたが、かえって恐縮がられ、お茶をごちそうになったりでした。私も子供が小さい頃車の後ろから追突された時、追突した方が菓子折りを持ってこられました。 幸い重大な事故はありませんでしたが、医療事故の菓子折りは以前のブログでしりました。 今日は地震たいした事なくてよかったですね先生。

  2. なっちゅん より:

    十勝日誌5000円、一番高級な菓子折りですね。
    私が知ってる限りでは。

    交通事故の被害者に2回なりましたが、挨拶に来てくれるのと来てくれないのでは全然印象が違います。
    1度目は保険屋さん任せ、2度目はメロンを持ってお詫びに来てくださいました。

    北海道だけの習慣ではないようですよ。

    地震3でよかったですが、浦河付近では震度5。
    被害に遭われた方、お見舞い申し上げます。

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