医学講座
電子カルテと診断の見落し
今日は2020年7月14日です。
昨日の院長日記に、
新型コロナで大変な病院経営を書きました。
2020年7月11日の北海道新聞に、
旭川医大病院の謝罪会見が載っていました。
私は旭川医大だけではなく、
全国の病院が気をつけなければいけない問題だと思います。
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2020年7月11日、北海道新聞電子版の記事です。
診断遅れ「発表時期適切」 旭医大病院長、記者会見で説明
旭川医大病院で医師が患者のコンピューター断層撮影装置(CT)などの検査報告書の確認を怠り、男女8人が、がんと診断されるのが遅れた。このうち3人は死亡していたが、発表は1例目の把握から4年近くたってからとなった。同病院で10日開かれた記者会見では、複数の記者から「もっと早く公表できたのではないか」と病院の判断を疑問視する声が上がった。
「この時期にずれ込んだのは申し訳ないと思っているが、発表時期としては適切だと思っている」。会見で記者から「遅すぎないか」と問われた古川博之病院長はそう答えた。
同病院によると、報告書の確認を怠った1例目が明らかになったのは2016年8月。当時、同様のミスはすでに全国で確認されていた。医療事故の情報を収集する日本医療機能評価機構(東京)は、旭医大病院の1例目が判明する約1年半前の2015年3月、発生事例や要因をまとめた報告書を公表している。
2017年11月には厚生労働省が自治体を通じて文書で注意喚起。2018年6月には、千葉大病院(千葉市)がCTの画像診断で患者9人のがんの所見を見落としていたことを発表するなど複数の大学病院などで公表が相次ぎ、社会問題化していた。
所見見落としの背景には担当医が電子カルテ内の報告書のファイルを開かず、医師間で情報が共有されない問題があった。
このため旭医大病院は2019年11月、これを防ぐ新しいシステムを企業と共同開発したと発表。この時点で病院側は今回発表した8件全てを把握していた。だが、同病院はこの時点でも公表を見送った。古川病院長は「システムの試験運用段階で同じような見落としが起こらないとは言い切れなかった。修正してから患者さんに安心して受診してほしかった」と理由を述べた。
再発防止策として同病院が導入した新システムは、担当医が電子カルテを開かなくても、専門医からの報告書の一覧がパソコン画面に表示される仕組み。担当医だけでなく、各診療科の責任者が、報告書が既読かどうかや患者への説明が済んでいるかを確認できるようにした。(山中いずみ)
「全て把握してから」
病院長一問一答
旭川医大病院が10日に行った記者会見で、公表時期に関する主なやりとりは次の通り。(相武大輝)
――今回、8件まとめて発表に至った経緯は。
「1例目は医療過誤とは言えず、公表の基準を満たしていないと判断した。その後、次々と事例が発覚し、その時点で発表することもできたが、同じような事例が起こる可能性もぬぐえないので、全てを病院側で把握してから公表するという決断に至った」
――2018年6月には千葉大病院(千葉市)で患者9人のコンピューター断層撮影装置(CT)の画像診断の見落としなど、全国で同様のミスの公表が相次いでいた。その時期に把握していた事例もあり、公表できたのでは。
「見落としの原因を調査して対策を講じずに発表するのは、旭医大を受診している患者や家族のためにならないと考えた。この時期までずれ込んだのは申し訳ないとは思っている。ただ、昨年、重要診断情報伝達漏れ防止システムを新しく導入したことで、病院全体での情報共有・管理が可能になり、病気の見落とし防止策が軌道に乗ってきたので、発表の時期としては適切で、今しかなかったと思っている」
――昨年、新システムの導入を発表した時も公表のタイミングはあった。
「(新システムの)試作機の試験運用段階では、いくつか改善しなければならない問題点が発生していて、仮にその時点で発表しても、同じような見落としが起こらないとは言い切れなかった。その点を修正してから、患者さんに安心して旭医大を受診してほしかったので、昨年のタイミングでの(診断遅れの事例)公表は見送った」
(以上、北海道新聞より引用)
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昔は画像診断の結果が、
大きなフィルムの袋で届きました。
シャウカステンという、
蛍光灯の光で診断結果を見て確認していました。
届いた袋が大きかったので、
見落とすことはまずありませんでした。
今は電子カルテなので、
フィルムがなくなりました。
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画像診断の結果は、
電子カルテのサーバーに保存されます。
問題なのは、
医師の転勤です。
自分がオーダーした結果は気になるので、
よほどのことがなければ忘れません。
転勤で移動してしまうと、
前の先生がオーダーしたことも引き継げないことがあります。
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電子カルテは、
病院ごとにシステムが違います。
検査結果がうまく表示されないと、
せっかく検査した結果が患者さんの診断につながらないことがあります。
旭川医大だけの問題ではなく、
同じようなシステムの問題は全国にあると(私は)思います。
重要診断情報伝達漏れ防止システムは、
とても大切なことです。
いい記事を書いてくださった北海道新聞社に感謝いたします。
“電子カルテと診断の見落し”へのコメント
コメントをどうぞ
私も膝の主治医が代わり困ってます。引き継ぎは画像とカルテだけ。今の先生は脚も見ないしあとは手術をしたくなったら来てください。画像が一瞬で送られてくるようになりましたが、変性惻わんの手術のボルトが折れている事にレントゲンの向きで最近まで気が付きませんでした。私が自費で協力した脊髄腫瘍の結果は教えてもらえないのでしょうか?アンケートはセクハラ的なこともあり、なんの関係があるのか知りたいです。砂時計型腫瘍はあまりいなくて、山形大学、東北大学、新潟大学の共同研究でした。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。画像とカルテだけで脚も見ないのは困ったものですね。それだけで手術をされてもねぇ~です。共同研究にご協力いただきわざわざ大学病院まで行かれて自己負担で検査まで受けたのにねぇ~です。今の先生のやり方なんでしょうか?ちょっとがっかりです。
昔はフィルムでしたが
今は見なくなりました。
かさばらくていいと言う事だけでは
なかったんですね。
転勤などで見落としは
怖いです。
重要診断情報伝達漏れ防止システムは
大切ですね。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。ペーパーレス化やフィルムレス化でいいこともあればせっかくの情報が生かされないこともあります。システムを作る側も利用する側も大変です。私は旭川医大で時間がかかったのは仕方がないと思っています。
技術の進歩で迅速化したことは
良いですが、落とし穴もあるのですね。
私が子供の頃自家中毒で、
お世話になってた、お医者さまは
カルテをドイツ語か英語で手書きを
していました。
便利になったことが診断の見落とし
につながることは命がかかっている
ことなので早急に対策をしてほしいです。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。私の時代は紙にボールペンが主流でした。万年筆で達筆な字で書かれる先生もいらっしゃいました。書かれた字が読めなくて解読に時間がかかったこともありました。なつかしい思い出です。