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                            美容外科の修行                                                    
    
                         昨日ご紹介したの朝日新聞の記事に、『美容外科を志す人は、やけどの跡の修復などをする形成外科の経験を基に、試行錯誤で技術や知識を身につけているのが実情だ。技術水準は個人差が大きく、医療被害にもつながっているという指摘がある』と記載されていました。
 実情は違うと思います。‘美容外科を志して、形成外科を選んだものの、やらされるのは毎日まいにちヤケドの処置だけ’
 ‘こんなはずじゃなかった!’と形成外科を去る若い先生がたくさんいます
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 現在、日本の医育機関で実際に教鞭をとっていらっしゃる形成外科教授で、美容外科がバリバリできるのは、ほんの数名しかいないと思います。
 その数名の先生も、大学病院で美容外科の症例を重ねたのではなく、民間の開業医レベルか有名美容外科で手術をたくさんした先生です。
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 日本形成外科学会でも、過去に何回か美容外科研修について取り上げたことがありました。
 何回議論しても、大学病院に美容外科の‘お客様’は多くはいらっしゃいません。よそで手術をしたけれど、トラブルになったとか、大手美容外科に行ったけれど心配になった方が多いと聞きます。
 25年前に、私が北海道大学でコラーゲンの臨床試験を担当させていただいた時も、‘お客様’は来院されず、自分の母親とか妻とか、知り合いばかりでした。
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 私自身は、総合病院に勤務中に、土日に美容外科へ‘ほぼ無給’で修行に行きました。担当させていただいたのは、ワキガ手術。あとはひたすら、ゴットハンドの院長先生の手術を見て覚えました。
 前任の中央クリニックでは、私が尊敬する美容外科‘指導医’の先生に、美容外科スピリットを教えていただきました。
 その先生は、大学卒業後に十仁病院へ入職。私が形成外科医として経験したのと同じ歳月を、美容外科医として活躍された先生でした。
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 確かに形成外科医は、技術では素晴らしいものを持っていると思います。
 しかし、美容外科は‘技術’だけでは食べて行けません。
 ‘お客様のニーズ’に合わせた手術や治療を提供できるのが美容外科だと思います。
 そういう意味では、私もまだまだ修行が足りません。大変申し訳ないことですが、私は形成外科出身なので、自分の考えに合わない手術はお引き受けしていません。
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 私の周囲を見ると、美容外科を志す若い先生は、大部分が有名な美容外科に就職しています。
 若くして分院の院長に就任している先生もいらっしゃいます。
 美容外科は、競争が激しい業界です。老舗(シニセ)と言われていた有名美容外科が廃院しました。
 若くして、大手美容外科チェーン店の店長になった先生が、独立して同じような業態のチェーン店を展開しているところもあります。
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 20年以上も大々的にチェーン展開をしている美容外科は、私が知る限り、数軒しかありません。
 優秀な先生をいかに長く雇用できるか?店長クラスの先生をいかに多く確保するか?チェーン店の美容外科経営も楽ではありません。
 私のように、個人で自分ができる範囲の手術をして、他に‘先生’を雇わないのが、一番楽だと思います。
 自分の‘分身’だと思っていた‘先生’に裏切られる心配もありません。
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 美容外科は外科手術ですから、知識と技術が必要です。
 どこでも、タダで安易に知識と技術は教えてくれません。これから美容外科を志す先生が、どうやって知識や技術を習得するかが問題なのですが、なかなか簡単に解決はしないと思います。
 私は将来も、大学医学部では美容外科研修は難しいと思います。
                        
                        
                     
                                    
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                            神戸大が美容外科開設                                                    
    
                         平成19年9月28日(金)朝日新聞朝刊の記事です。
 神戸大が美容外科開設、国立大学で初 専門医養成へ
 神戸大学は27日、付属病院内に美容外科の専門診療科を新設することを発表した。国立大学で初めての試みだ。社会の高齢化に伴い、美容外科は若い女性だけでなく、中高年の生活の質を高める医療として需要が高まっている。
 だが、今の医学教育の中で学ぶ機会がほとんどなかった。神戸大は専門教育の場を設け、若い医師を育てるとともに、老化と闘うアンチエージング医学の拠点作りを目指す。
      ■         ■
 10月1日に診療を始める。全年齢を診るが、主に中高年のしわやたるみ対策を対象にする。容姿に自信を取り戻すことで、生活や心の張りも戻ってくるという報告があり、高齢者にとって大きな意味を持つからだ。
 現在、美容外科を志す人は、やけどの跡の修復などをする形成外科の経験を基に、試行錯誤で技術や知識を身につけているのが実情だ。技術水準は個人差が大きく、医療被害にもつながっているという指摘がある。
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 神戸大病院では、形成外科の専門医2人が専従し、若い研修医らを交えてチームで診療する。医療保険の適用外で自費診療だが、まぶたの垂れ下がりなど、保険治療の対象と診断した場合は、他の診療科に紹介する。
 責任者の一瀬晃洋(いちのせ・あきひろ)・神戸大医学部講師は「診療だけでなく、手術や処置の安全性、リスクと効果など、美容外科に関する適切な情報を社会に提供します」と話す。
 初診は週3回で、電話予約が必要。問い合わせは神戸大病院(078-382-5111)へ。
 (朝日新聞朝刊より引用)
      ■         ■
 この朝日新聞の記事は何点か誤りがあると思います。
 国立大学ではじめて美容外科外来を開設したのは、東京大学です。東大病院のHPには診療実績も掲載されています。
 東京大学形成外科の波利井清紀 名誉教授(現:杏林大学医学部形成外科教授)が在職中に開設され、吉村浩太郎講師が中心となって診療をはじめられました。
      ■         ■
 大学病院の美容外科外来は、大手美容外科と比較すると、患者数が2桁以上違います。
 東大形成外科HPによると、平成18年度の新患総数は2,052人です。そのうち、美容外科の入院患者数31人、外来患者数33人となっています。
 東大病院ですら、平成18年度一年間で入院と外来を合わせても64人です。吉村先生という、トレチノインの権威がいらしてもこの数字です。一般病院の美容外科でしたら倒産です。
 早くから、美容外科外来をはじめた、昭和大学、北里大学ですら、患者数は多くないと聞きます。
      ■         ■
 大学病院で美容外科を担当する‘先生’はどこで美容外科を習得するのでしょうか?
 大部分の‘先生’は、民間で開業している美容外科や形成外科へ行って、美容外科手術を習得します。
 形成外科医は眼瞼下垂症手術などは得意ですから、手術のアルバイトに行って、ついでに他の手術も覚えることもあります。
 国立大学では、おおっぴらにアルバイトに行くことは禁止されていますから、土日の休みなどを利用することもあります(厳密に言うと土日でもバイトは禁止ですが…)。
      ■         ■
 大学病院で美容外科診療をしようとすると、料金も大学の規則で決めなくてはいけません。
 市立病院や公立病院では、条例で料金を決めなくてはならない場合もあります。
 美容外科で普通に使っている、厚労省が認めていないコラーゲンやヒアルロン酸も使えません。
手術を決めて、麻酔科に麻酔を依頼すると、自由診療だからと麻酔科から断られることもあります。
 さまざまな制約を受けるのが大学病院の美容外科です。
      ■         ■
 ただ、全国的に見ると、国立大学でも形成外科を形成外科・美容外科とするところは増えています。
 医学部の学生が美容外科手術を見学したいと願っても、なかなか実現しません。普通の美容外科でしたらまず断られます。
 医学部の教育の中で、美容外科が一般化するには、形成外科が普及した以上に時間がかかると思います。
 日本の医学部・医科大学の中には、形成外科すらない医育機関がまだかなりあります。
                        
                        
                     
                                    
                                                医療問題
                        
                            日鋼記念病院【室蘭】                                                    
    
                         平成19年9月27日(木)北海道新聞朝刊の記事です。
 室蘭日鋼病院、循環器医全員退職へ 11月末 “カレス騒動”なお
 【室蘭】医療法人社団カレスアライアンス(室蘭)が経営する日鋼記念病院で、勝賀瀬貴院長を含む循環器科の医師4人全員が11月末に、泌尿器科の医師1人が今月末までに退職することが26日分かった。同病院によると、12月以降の循環器科の診療体制の見通しは立っていない。
      ■         ■
 循環器科は今年8月、心不全の患者への心臓リハビリなどに新たに取り組むために、「循環器センター」を開設したばかり。
 同病院は患者に対し、医師退職の説明や他病院への紹介を始めており、今後の診療体制が決まるまでは初診患者の診療は行わない。
      ■         ■
 現在2人の常勤医がいる泌尿器科へは、北大から出張医1人が派遣され、2人体制を維持する。
 カレスアライアンスの西村昭男前理事長が今月11日に解任されたことに伴って、同病院では西村氏に近い医師を中心に退職の動きが広がっており、既に、消化器科の医師二人が9月末付で、脳神経外科医1人が10月末付で退職届を出している。
 (北海道新聞朝刊より引用)
      ■         ■
 循環器科センターは心臓や血管の専門家が集まって、心筋梗塞や下肢の動脈硬化症を治療する科です。
 7月7日の日記に書いた、時計台記念病院の浦澤先生も循環器センター長です。
 室蘭でははじめての循環器センターで、急性心筋梗塞など命にかかわる急性期の治療ですから、とても残念なことです。
      ■         ■
 病院経営者にとって、一番頭が痛いのが、優秀な医師を採用することです。
 日鋼記念病院循環器センターのような、設備が整った総合病院で働くことは、医師としてはやりがいがあり、腕のみせどころです。
 循環器センターの開設に当たっては、夢と希望を持って、仕事に取り組んでいたと思います。
 日鋼記念病院HPを拝見すると、かなり腕の良い先生を集めていると思います。
      ■         ■
 人にはそれぞれ考えがあり、人生観や道徳観も違います。
 医師は高度の知識と技術を持った‘技能集団’です。
 数十人もの‘先生’を取りまとめるのは、相当の苦労を伴います。
 院長が頭ごなしに命令したところで、担当の先生にそっぽを向かれたらどうにもできません。
 代わりを見つけようにも、高度の技術を持った先生であればあるほど、簡単には見つけられません。
      ■         ■
 今の時代の病院経営は本当に大変です。
 診療報酬という、病院経営の根幹をなす医療収入は、国の方針により毎年下がっています。
 看護師など職員の給与は上げなくては、人が集まりません。看護師が足りないと診療報酬が減ります。
 この数年で一番給与が下がったのが勤務医だと言われています。
      ■         ■
 日鋼記念病院で何があったかわかりませんが、一日も早く正常な診療ができるようになって欲しいと思います。
 病院がゴタゴタして一番困るのは、地域の患者様です。
 日鋼記念病院形成外科には、坂本泰輔(サカモトタイスケ)先生という私の後輩が勤務しています。とても優しくてまじめな先生です。
 西村先生との確執はわかりますが、循環器センターを潰さないでください。
                        
                        
                     
                                    
                                                医学講座
                        
                            アッカンベーの手術                                                    
    
                         顔面神経麻痺によるアッカンベーの手術は、通院でできます。目尻を数㎜切って、靭帯(ジンタイ)という組織を引っ張って、骨に固定する手術です。
 顔面神経麻痺では表情筋が機能しなくなります。ピーンと張っていた筋肉が弛んで(ユルンデ)しまい、それで下まぶたがアッカンベーになります。
 弛んだ筋肉の端のヒモを引っ張って、ピーンと張る手術です。
      ■         ■
 重症のヤケドでも目がアッカンベーになります。
 私が札幌医大に在職中に、ロシアからジェーニャくんという子供がヤケドの治療にやってきました。全身の大ヤケドでしたが、ロシアで治療できなかったのが顔と手でした。
 顔の治療は形成外科が、手の治療は整形外科の石井教授が担当しました。
 有名なコンスタンチン君ではありません。コンスタンチン君を治療したのは、旭川赤十字病院にいらっしゃる阿部清秀先生です。
      ■         ■
 ヤケドでアッカンベーになるのは、皮膚が焼けて、皮膚が縮み(チヂミ)、まぶたが引っ張られることによります。
 ジェーニャ君は上まぶたも下まぶたも、頬もすべて焼けていました。顔の皮膚をすべて貼りかえる大手術でした。
 このような手術は、入院施設がある総合病院でなければできません。
      ■         ■
 下まぶたの『たるみ』とり手術で、アッカンベーになることがあります。
 初心者の先生が手術して、皮膚を取りすぎたり、脂肪を取る時に止血が不十分だったりすることが原因です。
 かなりベテランの先生が手術しても、ちょっとしたアッカンベーが気になることがあります。
 私が大学病院に勤務していた時に、ある美容外科で手術を受けて、その後、軽度のアッカンベーになり、不眠症になって精神科から紹介された方がいらっしゃいました。
      ■         ■
 この方は軽度でしたので、再手術はせずに通院で様子をみました。
 また、別のクリニックで手術を受けて、明らかにアッカンベーになった方の修正手術をしたこともあります。
 手術を受けたクリニックでは対応できなかったようです。
 再手術は難易度の高い手術です。‘簡単’には治らないケースもあります。
      ■         ■
 2000年8月のPlastic and Reconstructive Surgery という米国形成外科学会雑誌(106(2):438-53)に、
The evaluation and management of lower eyelid retraction following cosmetic surgery.という論文が出ています。
 『美容外科手術後の下眼瞼外反(アッカンベー)の評価と治療法』というタイトルです。
 冒頭の文章に、Lower eyelid retraction is a common complication after cosmetic surgery of the lower eyelids. と書いてあります。Yahoo翻訳で訳すと‘下眼瞼撤回は、下眼瞼の美容外科の後の普通の合併症です。’
      ■         ■
 Lower eyelid retractionが下眼瞼撤回と訳されていますが、アッカンベーのことです。医学用語では下眼瞼外反と訳します。
 要するに、アッカンベーになるのは、下まぶたの美容外科手術ではcommon(共通の、普通の、ありふれた)complication(合併症)ですよという意味です。
      ■         ■
 美容外科の宣伝やホームページでは、手術は簡単ですぐに治ります。お化粧すれば、翌日からでも仕事ができます。なんて平気で書いてあります。
 アッカンベーになるなんて書いたら、お客さんが来なくなってしまいます。
 私は、起こり得る合併症や手術後のトラブルについてもご説明しています。
 手術は飛行機と同じで安全第一です。慎重すぎて後悔することはありません。
                        
                        
                     
                                    
                                                医学講座
                        
                            目の脂肪とたるみ                                                    
    
                         目という組織はとても重要な臓器なので、神様は動物をお作りになる時に、さまざまな工夫をなさいました。
 大切な食器や磁器を輸送する時は、丈夫な箱に入れて、パッキンで包みます。
      ■         ■
 目という大切な器官は、顔面骨という丈夫な骨の中に入っています。目の周囲には脂肪という厚いパッキンが充填されています。
 顔面は衝撃を受けやすい場所なので、もし目に大きな外力が加わっても、目の周囲にある、脂肪が衝撃吸収バンバーの役割をして目を保護するようにできています。
      ■         ■
 魚でも、鳥でも、動物でも、目の周囲に脂が多いのは、目を保護するために、脂肪というパッキンがあるからです。
 丈夫な箱に、大切な磁器を入れてパッキンで包んでも、しっかり蓋(フタ)をしないとパッキンがはみ出てしまいます。
      ■         ■
 この蓋の役割をしているのが、眼輪筋という筋肉と皮膚です。
 目の上、目の下には、眼輪筋という筋肉があり、これがしっかりと骨に張り付いて、脂肪が出てこないように蓋をしています。
 ところが、筋肉も長年使っていると衰えてきます。どんなに丈夫なゴムでも、長年使うと伸びてビロビロになってしまうのと一緒です。
      ■         ■
 悲しいことですが、眼輪筋というゴムが伸びてしまうと、目の下がぽこっと膨らむようになります。
 この目の下の膨らみを、‘目袋(メブクロ)’と呼ぶ先生もいらっしゃいます。
 この目袋を取るためには、余分な脂肪を除去し、伸びてしまった筋肉を引き締め、かつシワシワになった皮膚も切除する必要があります。
 簡単な手術のように思いますが、初心者の先生がすると、皮膚を余分に取りすぎたり、手術後に血がたまってしまったりします。
      ■         ■
 世界中どこの国でも行われている、目の下の『脂肪』『たるみ』とり手術ですが、世界中どこの国でも、アッカンベーの後遺障害が出ています。
 プチ整形しかできない先生は、アッカンベーを治せません。アッカンベーを治すには高度の形成外科的技術が必要です。
 下まぶたのたるみは、取り過ぎないようにするのが一番大切です。他とのバランスも重要です。
      ■         ■
 下まぶたのたるみ取りでアッカンベーになった方は、顔面神経麻痺でアッカンベーになったのとは状態が違います。
 顔面神経麻痺でアッカンベーになった方は、皮膚が足りないとか筋肉が瘢痕でガチガチになっているという症状はありません。
 下まぶたのたるみとり手術は、さまざまな方法が報告されています。下まぶたたるみ取りでアッカンベーになったのを治す手術も論文として出ています。
 いつも申し上げていることですが、手術は簡単ではありません。安易に受けて後悔なさらないでください。
 アッカンベーで困っていらっしゃる方は、札幌美容形成外科へ相談にいらしてください。
                        
                        
                     
                                    
                                                医学講座
                        
                            汗のお話し②                                                    
    
                         昨日の朝日新聞日曜版(be on Sunday)、汗の話しの続きです。
 生命維持し、魅力も発信
 (平成19年9月23日朝日新聞より引用)
      ■         ■
 たとえば、この夏の真昼のような炎天下で外を10分歩いたとする。その間、汗をかかなければ、体温は1度上がってしまう。
 実際にそうならないのは、人によって差はあるがふつう約1,000mlの汗をかき、皮膚上から大気中に蒸発していくときに奪う熱(気化熱)で体を冷やしているからだ。
      ■         ■
 汗を研究してきた愛知医科大名誉教授の小川徳雄さんは「汗をかかなければ、体温は上がる一方です」という。
 いわば、体の表面に打ち水をしているような仕組みだ。気温や運動量、個人差もあるが、1時間で4㍑も汗をかく場合もある。病気など何らかの原因で汗が出なければ、体温が上がってしまい、生命の危険にさらされる。
      ■         ■
 体温調整を担うエクリン汗を出すエクリン汗腺は、皮膚の表面から0.3~5㎜のところにあり、体表まで汗を出す管が通っている。根元は管がからまった毛玉のような形をしている。「毛玉」が、近くにある血管から血液の透明な部分(血漿)を取り込んで、押し出したのが汗だ。
      ■         ■
 退化する器官
 日本人にはエクリン汗腺が平均230万個あるといわれる。前頭部、鼻などに多いものの、ほぼ全身にある。一方、アポクリン汗を出すアポクリン汗腺は、エクリン汗腺と同じ形をしているが、耳の穴やわきの下、乳首の周り、下腹部など、比較的太い毛が生えた毛穴にしかない。
 皮膚腺と呼ばれるものには、もう一つ、皮脂腺があり、こちらは皮脂を分泌して、汗とまじり合い、皮膚を保護している。
 人間と違い、おもに呼吸で体温調整をしている犬の場合、アポクリン汗腺は体の表面全体にある。エクリン汗腺は足の肉球にあり、表面をぬらすことで滑り止めの役割をしている。体温調整に役立っていないそうだ。
      ■         ■
 エクリン汗が血漿をもとにしたさらっとした薄い塩水なのに対し、アポクリン汗はどろっとした白か灰色の液体だ。
 小川さんは「人類の進化の名残で、退化していく運命にある器官」という。実際、妊娠5ヵ月前後の胎児には全身にアポクリン汗腺のもとになる細胞ができるが、その後退化していき、一部だけ残ることが分かっている。
 生まれてからもアポクリン汗腺はすぐには働かない。思春期ごろから活動を始め、性的に活発な時期によく働く。動物では、性的魅力を発するフェロモンを出す役割を果たしているといわれる。
      ■         ■
 活用法は様々
 「わきが臭」の原因として気にされがちなアポクリン汗だが、人によっては魅力的なにおいと感じる場合もある。日本ではにおいをなるべく抑えようとする制汗剤が中心だ。欧米では、制汗剤だけでなく、わきが臭と混じり合っていい香りになる香水を開発してきた歴史がある。
 体臭の原因物質の解明では日米欧の研究者がしのぎを削ってきたが、成果をどう活用するかでは、においに対する考え方の違いがあるようだ。
      ■         ■
 におい抑える制汗剤 始まりは19世紀後半
 汗のにおいを抑える制汗剤の歴史は古い。 19世紀の後半に米国で殺菌剤を配合した商品が発売されたのに始まる。同じ米国で20世紀初頭には汗を抑える商品が出されたが、酸性で皮膚への刺激が強く、衣類が破れるという問題があった。本格的に市場が拡大するのは1950年代からだ。
 制汗剤の国内市場は2006年、前年並みの321億円。国内市場は高齢化で頭打ちだが、世界的には欧米を中心に伸びる余地が大きいとされる。花王はスパイシー臭や硫黄臭などの研究成果を、05年から「ビオレ」「メンズビオレ」のスプレーやボディシートなどに反映させている。
 (朝日新聞より引用)
      ■         ■
 この朝日新聞の記事の中で、アポクリン汗腺は、エクリン汗腺と同じ形をしているというのが、間違いです。
 アポクリン腺はエクリン腺より皮膚の深い層にあり、肉眼で見ても明らかに形も色も違います。手術をしたことがある先生ならすぐにわかります。制汗剤で対処できない汗は、是非、札幌美容形成外科に相談なさってください。
                        
                        
                     
                                    
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                            汗のお話し①                                                    
    
                         今日の朝日新聞日曜版(be on Sunday)に汗の話しが出ていたのでご紹介します。
 汗・汗・汗…におう3物質
 (平成19年9月23日朝日新聞より引用)
      ■         ■
 今年の夏は暑かった。
 気象庁によると、6~8月に29道府県の101地点で最高気温を更新した。よく汗をかいたはずだ。
      ■         ■
 汗には2種類ある。一つは、体中に広く分布するエクリン汗腺から出る汗で、体温調節の役割を果たす。
 もう一つが、わきの下などに集中するアポクリン汗腺からの汗。こちらの役割は不明な点が多い。比較的においが少ないエクリン汗に対し、アポクリン汗はわきがなど体臭の原因で、昔から人々を悩ませてきた。
      ■         ■
 近年、アポクリン汗による体臭の原因物質がほぼ解明され、制汗剤などへの応用が期待されている。
 花王香料開発研究所の矢吹雅之研究員によると、アポクリン汗に含まれる体臭成分は、カレーのスパイスのにおいに似た「スパイシー臭」、古いぞうきんのような「脂肪酸臭」、生臭く鼻を突く「硫黄臭」の3つから成る。
 どのにおいの原因物質もアポクリン汗腺から出た直後はアミノ酸とくっついた「前駆体」という形で、無臭だ。
 しかし、皮膚上の細菌がアミノ酸から切り離すと、原因物質だけになり、においを発するようになるという。
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 3つの原因物質のうち最初に解明されたのは、脂肪酸臭だ。91年に米国の研究機関、モネル研究所が原因物質を学会で報告した。
 スパイシー臭の原因物質を特定したのは花王で、96年、「におい物質」として特許を出願した。
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 最後の難関は硫黄臭だった。分泌量がスパイシー臭の原因物質の100分の1以下と少なく、揮発性が高い。
 物質を突き止めるため、研究者たちは文字通り汗をかいてきた。
 東京都墨田区の花王すみだ事業所には、室温40度、湿度80%にできる実験室がある。90年代半ばから研究員らが自らここで汗をかき、データーを集め、原因物質を探した。
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 やっと2000年、それを突き止めたのだが、世界最大の香料会社、ジボダン(スイス)が日本でも香料として特許を申請していたことがわかり、特許申請はならなかった。
 微量ならグレープフルーツのような香りがする。花王はその前駆体に研究対象を切り替え、そちらで特許を申請した。
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 ところで、花王は04年、米国で18~63歳の女性25人に人前で簡単なクイズや計算、自己紹介をさせ、ストレスを感じさせる実験をした。
 結果、鼻でかいでにおいが強くなった12人のうちの10人で、わきの下の原因物質の量が増えていた。
 長谷川義博主任研究員は「精神的なストレスがアポクリン汗を出す原因の一つなのは間違いない」と話す。
 ストレス社会を生きる限り、においの根本を断ち切ることは難しいようだ。(朝日新聞より引用。文・諏訪和仁)
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 実際に毎日わきがの手術をして、においに悩む患者様を診察していると、ストレスで出るのはエクリン汗が多いと思います。
 エクリン汗もアポクリン汗も、ボトックス注射で劇的に止まります。
 ストレスを受けると交感神経が興奮して、汗を出す信号を発しますが、ボトックスはこれを汗腺に伝えないので汗が出ません。
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 わきが手術はアポクリン腺を外科的に切除する手術です。手術をしてみると、わきがの患者様でも汗腺の量には個人差があります。
 日本やアジア圏では、欧米よりわきがを忌み嫌う風習があります。高校か大学を卒業するまでに手術を受けるのがよいと思います。
                        
                        
                     
                                    
                                                医学講座
                        
                            顔面神経麻痺                                                    
    
                         顔面神経麻痺(ガンメンシンケイマヒ)という病気があります。ビートたけしさんが、交通事故で右顔面神経麻痺になったのが有名です。
 たけしさんは、リハビリで回復し、現在はTVで拝見しても、少し右顔面にマヒが残っている程度です。事故で神経が部分的に障害されたので、少しずつ回復してきました。神経は障害を受けても、少しずつ自分で‘再生’して、治る性質を持っています。
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 顔面神経という神経は、脳神経です。脳から耳の穴の前に出てきます。ここから、耳下腺という組織の中を通り、おでこから唇、首までの表情筋を動かす指令を伝えます。
 ですから、顔面神経麻痺になると、おでこにシワができなくなる、眉毛が下がる、目が閉じられなくなる、アッカンベーになる、口が曲がって食べ物がこぼれるなどの悲惨な症状が出ます。
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 顔面神経麻痺には脳の異常で起こる、中枢性顔面神経麻痺と、主に耳から先の異常で起こる末梢性顔面神経麻痺があります。
 この中で多いのが、末梢性顔面神経麻痺です。原因不明のことが多く、これをベル麻痺と呼びます。単純ヘルペスウイルス1型が発症に関与していることが疑われています。
 子供の頃にかかる、水痘(水ぼうそう)という病気があります。水痘帯状疱疹(スイトウタイジョウホウシン)ウイルスというヘルペスウイルスが原因でなります。
 この帯状疱疹ウイルスが原因でなる顔面神経麻痺をハント症候群と言います。
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 ハント症候群は、耳(耳介)や耳の穴(外耳道)に、水ぼうそうのような、小さな水疱や発疹が出るのが特徴です。耳が痛いという症状のこともあります。
 このハント症候群には特効薬があります。発症後なるべく早く(できれば3~4日以内)に抗ウイルス薬を投与するとよく効きます。
 抗ウイルス薬を投与しても、治らない場合があります。
 残念なことに、ハント症候群では、難治性の顔面神経麻痺が残ることがあります。
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 顔面神経麻痺になって、一番辛いのが目の症状です。
 片側だけ麻痺になるので、片目だけアッカンベーになります。眉が下がってものが見づらくなることもあります。
 次に辛いのが、口が曲がることです。食べ物がこぼれてしまい、よだれも垂れてしまいます。
 今まで元気だった人が、ある日突然顔面神経麻痺になると、世界がひっくり返ったように生活に支障をきたします。
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 顔面神経麻痺の治療は、主として耳鼻科で行われます。耳に関係する初発症状が多いからだと思います。
 目の症状が出ると、眼科へかかります。アッカンベーになって、目が痛くなり、目ヤニが出たりするからです。
 耳鼻科や眼科で治療してもらって、ある程度神経が回復してくれば問題ありません。
 問題なのは、神経が回復せず、顔が曲がったまま、数ヵ月しても症状が改善しない時です。
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 ここで、活躍するのが形成外科です。形成外科はもともと顔面の再建、神経の再建は得意です。
 私は札幌医大に在籍していた時に、耳鼻科の先生とたくさんの顔面神経麻痺の患者様を治療する機会がありました。
 顔面神経にできた、腫瘍(できもの)を切除して、耳の後ろから神経を移植して再建したこともあります。回復するのに時間はかかりましたが、見事に神経がつながりました。
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 顔面神経麻痺で、目がアッカンベーになって困っていらっしゃる方は、是非、札幌美容形成外科を受診なさってください。日帰り手術でアッカンベーを治すことができます。
 アッカンベーを治すだけでしたら、約1時間程度の手術です。もちろん健康保険が適用されます。
 アッカンベーを治して、目を開けやすくするだけで、辛い症状がかなり改善されます。
                        
                        
                     
                                    
                                                未分類
                        
                            商売の極意                                                    
    
                         昨日の阪本美樹(ヨシキ)先生の講義で、心に残ったことを書きます。
 商売の極意は、お客さんの‘不’をとることだそうです。
 お客さんの不満、不信、不安を取るのが商売の極意です。イオンの経営方針にも反映されています。
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 イオンは三重県四日市の岡田屋さんという老舗呉服店が前身で創業250年になります。
 イオンのことは、岡田名誉会長のお話しを平成18年12月13日の日記に書いてあります。
 三重県で創業250年ですから、数多くの大災害にも遭遇しました。伊勢湾台風と阪神淡路大震災です。
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 阪神淡路大震災の時に、阪本先生は兵庫県西宮市で陣頭指揮をとって、お客さんに対応されました。
 パート従業員の方が、サンダル履きで駆けつけてくれ、実によく働いてくれた。今でも忘れられない。とお話しされました。
 震災でライフラインが絶たれ、電気も水道もありません。余震が続くので、危なくて店にも入れません。
 でも、お客さんは、水が欲しい、コーラが欲しい、お茶が欲しいと来店されます。
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 店長を集めて、とにかく生活必需品だけでも販売しようと声をかけました。
 『レジが動かないからダメです』
 『お釣りがありません』という店長がいたそうです。
 商売の原点は、露天商がザルにお金を入れて、商品を販売することです。災害時に、困っているお客さんを何とかするのが商人です。
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 被害を受けた西宮店の倉庫から、商品を引っ張り出して売りました。
 コーラとウーロン茶で530円。お釣りがないので500円におまけ。多くとってはダメです。消費税込。お客さんに損をさせないのが商売の基本。
 臨機応変に対応できる能力が、お客さんから評価されます。
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 絶対的価値がないのが、今の時代。いかに自分で知恵を出せるかで将来が決まります。
 一つのものにしがみついていてはダメです。
 現代は流動化社会。企業が合併を重ね、昔の大家族社会になろうとしています。合併することで、効率を上げようとしています。
 こういう時代だからこそ、知恵を出して新しいことをしていかなくては生き残れません。自分にしかできない、その会社でなくてはできない、オンリーワンを作ることが重要。オンリーワンほど強いものはありません。
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 250年の歴史に裏付けられた、岡田屋流の商売の極意を伝授していただきました。
 美容外科も戦国時代。次々と新しい美容外科が開業します。
 私のような個人経営の中小企業が、大手と対抗するのは大変です。合併もできません。ただ、私にしかできないオンリーワンはたくさんあります。
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 美容外科もお客様の‘不’を取る仕事です。
 美しい人はより美しく、普通の人もより美しく。そうでない人もより美しく。不美人→美人、不安→安心、不満→満足。
 一人でも多くのお客様に満足していただけるように頑張ります。
                        
                        
                     
                                    
                                                未分類
                        
                            面接試験の極意                                                    
    
                         今日から、北海学園大学経営学部・大学院経営学研究科の㈱ニトリ寄附講座(後期)が開講になりました。
 2007年後期講座は経営者講座。今日から平成19年12月13日(木)まで7回開講されます。
 今年で3年目です。経営学を少しでも勉強したいと応募しましたが、すっかりファンになっています。勉強が楽しいです。
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 今日の講師は、イオン㈱元専務取締役の阪本美樹(サカモトヨシキ)先生でした。
 阪本先生は、宇治山田高校を卒業後、昭和37年に四日市にあった、岡田屋に就職。岡田屋さんの大番頭として、イオンの岡田会長とともに、現在のイオンを築いた方です。
 声が大きくて、関西弁のわかりやすい話し方で、あっという間に120分の講義が終わりました。誰一人として、居眠りしている人はいませんでした。
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 たくさんのお話から、冒頭、学生さんに面接試験の極意を伝授されたので、ご紹介します。
 会社に就職すると、会社は社会的基盤を与えてくれます。個人の生活基盤を与えてくれるのではありません。個人が裕福になる、幸せになるのは別の話しです。
 企業を選ぶのは恋愛と一緒です。この会社に就職したら有利だとか不利だとかを尺度にしてはいけません。
 あの人が好きだから一緒に居たいと思うのと同じです。その会社が好きか嫌いかが一番大切です。
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 会社が好きだったら、集中できます。闘争心ができます。行動ができます。
 企業は一流大学を出たから、高卒だからといって人を差別しません。イオンで働く24万人で東大卒の役員は一人しかいないそうです。阪本先生ご自身が高卒で、イオンの専務取締役にまで出世なさった方です。
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 ここからが面接試験の極意です。
 企業が欲しい人材は、協調性があり、リーダーシップを発揮して、継続性のある、ヤル気のある人です。
 面接試験では、いろいろな質問が出ます。これにどう答えるかで、点数が変わります。
 面接の評価は◎、○、△、×です。細かい点数まではつけられません。
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 学生時代にアルバイトをなさっていましたか?という質問が出ます。
 はい、4年間にたくさんのアルバイトをしました。は×です。
 はい、大学時代4年間は、ずっと同じアルバイトをしていました。が○です。
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 たくさんのアルバイトを次々と変えていたのは、継続性がないと見なされます。
 アルバイトをたくさんなさったのは、どうしてですか?という次の質問が待っています。
 はい、上司と合わなかったので、辞めて新しい仕事をみつけました。は×です。辞めたのを他人のせいにしています。
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 学生時代は何かクラブ活動をなさっていましたか?という質問が出ます。
 クラブ活動で部長とか副部長を経験していると、リーダーシップがあると判断されます。○です。
 ○○部に入りましたが、すぐに辞めました。はもちろん×です。
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 イオンやニトリに面接に行ったとします。
 当社にご応募いただきありがとうございました。どちらか当社の店に行かれたことがありますか?
 はい、○○店に参りました。あるいは、はい、○○店をいつも利用させていただいています。
 その店のどういうところに気がつきましたか?
 はい、○○……、と気の利いたことが言えれば○です。面接官に自分のよいところを売り込めれば◎です。
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 一般常識は最低でも5つ位、日刊紙で話題になっていることを知っておく必要があります。京都議定書とは何か?くらい知っておく必要があります。
 日本経済新聞まで読みなさい、とは言われませんでしたが、全国紙といわれる新聞を読むことが大切だとお話しされました。
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 阪本先生にとって、仕事は趣味と実益を兼ね備えたものでした。好きな仕事を選んでするのが大切で、好きですれば、ゴマをすっても気を使っても苦にならない。
 イヤイヤ仕事をするならお辞めなさいとお話しされました。
 美容外科という好きな仕事をさせていただき、私は幸せだと思いました。