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老舗の信用と「茶の心」
平成19年12月9日(日)朝日新聞朝刊のコラム-補助線-からの引用です。
船場吉兆を読み解く
老舗(シニセ)の信用と「茶の心」
編集委員 多賀谷克彦
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大阪のビジネス街にある湯木美術館が11月、開館20周年を迎えた。
日本料理店「吉兆」の創業者、故湯本貞一氏(1901~97年)が集めた茶道具を展示している。
春、秋の一時期しか公開せず、今回は今日9日まで20周年の記念名品展が聞かれている。
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湯木氏が大阪・新町の間□1間2分5厘(約1.8㍍)の店を、日本を代表する料理店に成長させたのは、この茶道への造詣が大きい。
料理に四季を織り込み、創意工夫を重ねた。
阪急電鉄の小林一三氏、電力の松永安左工門氏ら茶道を通じた財界の重鎮との親交も評価を高めた。
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貞一氏の四女の娘婿、神戸吉兆の湯木喜和氏は貞一氏が店に来た時の緊張感が忘れられない。
皿を出すと「もう1回つくってきて」。
お造りを出すと「まな板と包丁持ってきて」。
出来が悪かったときの口癖だ。
座敷の生け花がおかしいと「はさみと新聞紙を持ってきて」と生け直し、茶道と同じくもてなしの心を示してみせた。
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「料理屋とできものは大きいなったらつぶれる」
「料理屋と屏風は広げすぎたら倒れる」
喜和氏は、貞一氏からよく聞かされた。
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フランス料理の辻静雄氏との対談をまとめた「吉兆料理花伝」では、
「質素から出た仕事じゃないといけません。華美に流れるともう上に花が無くなります」
と料理人の心得を語っている。
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5人の子どもたちの中では、船場吉兆を継いだ三女の娘婿が貞一氏と近く、よく教えを請う間柄だったという。
その船場吉兆が、百貨店のテナントとして、菓子の賞味期限、消費期限を偽装したり、牛肉の産地を偽ったりする不祥事を起こした。
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バブル後の本業不振から、総菜の販売を始めた料理店は多い。とくに、年末年始の外出を控えた「2000年問題」を機に、料亭のおせちを百貨店などでそろえる需要が高まった。
座敷の上得意だった関西の金融業、製薬業の再編が進み、本社機能も東京に移った。
だが、その場で料理を出す商売と持ち帰り総菜のビジネスモデルは大きく異なる。
そこに先代がこだわった「茶の心」はあったか。
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青山学院大学院の八田進二教授(会計監査論)は、内部統制に問題が生じやすい企業に、創案者の強い指導力で急成長した企業と、外部の目が入りにくい老舗を挙げる。
食品に絡む不祥事を起こした「白い恋人」の石屋製菓、赤福、船場吉兆は、いずれも、これに当てはまる。
貞一氏の孫、京都吉兆の徳岡邦夫氏は「ベールに包まれ、なんとなく金持ちが行く料理屋では生き残れない」と語る。老舗の信用は、歴史とのれんだけでなく、透明さが必要な時代になっている。
(以上、朝日新聞より引用)
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美容外科も、「大きいなったらつぶれる」業種の一つかもしれません。
大量生産はできません。下請けにも出せません。
私は茶道はわかりません。ただ、料理と同じで、手術も一つひとつ手作りです。
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美味しい料理を作って、お客さんに喜んでいただくと、また美味しい料理を作る元気が出ます。
「茶の心」で料理を作り、お客様をもてなす。
自分の技術で、喜んでいただき、自分もお客さんも満足できる‘医療’が提供できて、はじめて医師としての満足感が達成できます。