院長の休日

お寂しゅうなりましたなぁ

 平成25年12月12日、朝日新聞朝刊、天声人語です。
 苦楽をともにしてきた老妻が死んで、葬式もすんだ。隣家の奥さんが通りかかって「お寂しゅうなりましたなあ」。「一人になると急に日が長(なご)うなりますわい」。つぶやく夫の向こうに瀬戸内の海――。変哲もないシーンながら、映画「東京物語」のラストは何回見ても胸にしみ入る。
 ▼監督の小津安二郎は「映画ってのは、あと味の勝負だと僕は思ってますよ」と後に語っている。その術に心ふるわせたファンは多かろう。世界的な巨匠の、きょうは誕生日にして命日。生誕から110年、没して50年にあたる。
 ▼作品の多くは、家族や人のつながりを「無常の相」としてとらえる。古き良きものが崩れていく現実が淡々と示される。作詞家の故・阿久悠さんは小津映画を見ながら、家の間取り図を描いたことがあったそうだ。
 ▼そこでは家族それぞれが、他の家族を見るともなく目の端に入れながら暮らしている。盆栽をいじる父、料理をする母、本を読む妹、グローブに油を塗る弟――。「絆」という語をあまり叫ばずにすんだ時代かもしれない。
 ▼いま、「孤」という字が社会にのさばる。むろん家族にも地域にも煩わしさや重荷はある。それを嫌って、つながりを断ち切る方向にアクセルを踏みすぎて来なかったか。功と罪を、古い映画は問うているかのようだ。
 ▼「おれは豆腐屋だから豆腐しか作らない」と言って作風を変えなかった。今ならどんな映画を撮るだろう。その墓は鎌倉の円覚寺にあって、「無」の一文字が刻まれている。
(以上、朝日新聞より引用)
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 私はこの天声人語を読んで、
 大浦武彦先生と、
 高木章好先生を思い出しました。
 どんなに偉い先生でも、
 配偶者の死はつらいです。
 大浦憲子様がお亡くなりになって
 来週で1ヵ月になります。
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 映画「東京物語」を見たことはありません。
 天声人語に書いてあった…
 家族それぞれが、
 他の家族を見るともなく
 目の端に入れながら暮らしている。
 …という文章が気に入りました。
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 今の本間家には、
 私と奥さんと犬だけです。
 居間でノートPCでメールの返信を書いている私。
 犬がちょろちょろと餌をねだってきます。
 時には、
 メールの返事書いてるから
 静かにしてょ!
 …と私の怒り声が響きます。
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 疲れて、
 居間のソファーで居眠りすることもよくあります。
 こんな日常が、
 幸せでありがたいことなのだと思います。
 奥様を亡くされた大浦先生に、
 少しでも元気になっていただきたいと願っています。

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