二重・眼瞼下垂
「腱膜性眼瞼下垂症」について
平成28年3月16日(水)、北海道新聞夕刊に折込された、
ontonaという情報誌の記事です。
高齢者に多く、誰にでも起こる可能性がある「腱膜性眼瞼下垂症」について
お話を聞いたのは
斗南病院 形成外科科長 医師 佐々木 了(ささき_さとる)さん
●加齢やまぶたの炎症などが原因でまぶたが重くなり、視界が狭くなります
眼瞼(がんけん)とはまぶたのことで、眼瞼下垂はその名の通り「まぶたが垂れ下がる」病気のことです。年齢とともに目元の印象が変化するのは仕方のないことですが、病気となると単なる肌の老化ではすまされません。そこで、眼瞼下垂の症状や原因、治療について、斗南病院形成外科科長の佐々木了さんに教えてもらいました。
●後天性の眼瞼下垂で最も多い腱膜性眼瞼下垂症。片目だけの場合も両目に起こる場合も
眼瞼下垂はまつげの生えている部分が十分に上がらず、目の中の瞳孔が正面からきちんと見えない状態をいいます。生まれつきまぶたが下がっている先天性と、もともと正常だったまぶたが上がらなくなる後天性に大きく分けられます。
後天性で最も一般的なのは腱膜(けんまく)性眼瞼下垂症です。まぶたは眼瞼挙筋という筋肉によって動きます。まぶたの縁の先端には瞼板(けんばん)という組織があり、この部分と眼瞼挙筋をつなぐのが、挙筋腱膜です(下記図A参照)。眼瞼挙筋が収縮すると力が瞼板に伝わりまぶたが持ち上がり、開く仕組みです。腱膜性眼瞼下垂症は、眼瞼挙筋が伸ぴたり、挙筋腱膜が緩んだり、瞼板から外れたりすることで、まぶたに力が伝わらなくなり、徐々に下がってきます。主にまぶたの筋肉の老化やハードコンタクトレンズの長期使用で起こり、アトピー性皮膚炎などによるまぶたの炎症が原因のこともあります。片方の目だけに起こることもあれば、両方の目に起こることもあります。
●頭痛や肩こりの原因になることも。視界が狭まり日常生活にも支障がでてきます
まぶたが垂れ下がってくると物が見えにくくなります。そうなるとまぶたを開こうとまゆ毛を上げる前頭筋を動かすようになり、顎も上げて見るようになります。常に前頭筋に力を入れてまゆ毛を上げていると額にしわができ、さらにこれが原因で頭痛や肩こりといった症状も現れます。これは前頭筋が、頭の上から首、肩までつながっているため。前頭筋が収縮して緊張した状態でいると頭や肩にも悪影響を及ぼします。
まぶたを動かす筋肉には眼瞼挙筋のほかにもう一つハミューラー筋があります。ミューラー筋は自分の意志では動かせず、交感神経と連動して動きます。腱膜性眼瞼下垂になると、ミューラー筋も収縮しまぶたを上げようとします。その動きが交感神経に伝わると脳が反応し疲労することも分かっています。
視界が狭くなると人や物にぶつかったり、転倒したりする危険もあります。とくに高齢の場合は、聴力など他の身体器官や機能の衰えもあり、より注意が必要になります。
●手術で治療が可能。まぶたを刺激することはできるだけ避けることで予防に
このように、視界が狭くなるばかりか、体への悪影響や日常生活へも支障をきたす眼瞼下垂ですが、手術によって治療することが可能です。ただし、個々によって症状は異なり、まぶたの皮膚がたるむ眼瞼皮膚弛緩症など別の病気やケガによる後遺症のこともあるため、適切な診察による見極めが大切です。
手術は腱膜を瞼板に縫い付けて固定する「腱膜固定術」が一般的。成人の場合は部分麻酔で行い、二重のラインに沿ってまぶたを切開するため傷は目立ちません。一重の場合は二重のラインをつくってから施術するため、術後のまぶたは二重になりますが、顔つきの変化が気になる場合は異なる手術法もあります。
まぶたは個人差はあれど年齢と共に多少は下がってくるものであり、下垂を完璧に予防することはできません。目の周りの血行をよくし、疲れをとることは、まぶたの筋肉の疲労や老化を抑えることに有効と考えられます。まぶたをめくったり激しくこすったりすることは避け、炎症を起こさないように普段から心がけましょう。
診察ではまぶたが虹彩の端の部分にわずかにかかる程度は正常とされていますが、まぶたが重く感じ、視界が狭くなって見えづらいと悩んでいる人は、眼科または形成外科の専門医ヘー度相談してみてはいかがでしょうか。
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無料で配布される情報誌に、
とてもいい内容の記事が掲載されていました。
うちの奥さんが、
イラストがとてもわかりやすく上手とほめていました。
形成外科に関する正しい情報が、
広く啓蒙されることはうれしいことです。
佐々木 了先生は元北大形成外科准教授の先生です。
血管腫の患者さんが全国から集まっています。
斗南病院は今年秋には移転改築されます。
とてもきれいな病院になります。