医学講座
「金の糸」挿入手術でMRI検査受診不可に_大阪の女性が美容クリニックを提訴
「金の糸」挿入手術でMRI検査受診不可に 大阪府の女性が美容クリニックを提訴 大阪地裁
糸状に加工した金を顔に埋め込むことで、肌のハリが回復するとされる「金の糸」と呼ばれる手術をめぐり、大阪府内の50代女性が頬に色素が沈着した上、MRI(磁気共鳴画像装置)検査が受けられなくなったとして、大手美容整形クリニックに計約1570万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こしたことが13日、分かった。6月にあった第1回口頭弁論で、クリニック側は手術と色素沈着との因果関係を否定。MRI検査を受けることにも問題がないとして請求棄却を求めた。
訴状によると、女性は平成25年10月、大阪市内のクリニックで顔面の皮下に金の糸を挿入する手術を受けた。だが、翌26年3月になって両頬に茶色の色素沈着が現れ、現在も消えていない。
さらに同11月、頸椎(けいつい)部に持病があるこの女性が別の総合病院を受診した際、医師から糸の存在を理由にMRI検査を断られたという。
女性側は「手術前に合併症やアレルギー症状のリスクについて説明がなかった。MRI検査も受けられるといわれていた」と主張。クリニック側に説明義務違反があったと訴えている。
一方、クリニック側は女性の色素沈着は以前からあったシミの一種が悪化したことなどが考えられると反論。さらに金の糸は磁気に反応せず、埋め込み後にMRI検査を受けてもまったく問題がなかったとする別の美容外科クリニックの書面などを提出し、全面的に争う姿勢を示している。
電流集中しやけど恐れも
一般的に、効果としてうたわれているのは肌の若返り。生体内に異物が入ってきた反応として「コラーゲンを生み出す細胞が活性化される」などと紹介されている。
ただ、美容外科医らが会員となっている日本美容医療協会(東京都)は平成22年6月、「金の糸の効果に明確なエビデンス(学問的証拠)はない」とする見解を公表。アレルギー反応や皮下から糸が露出するリスクがあり得るとした上で「いったん埋め込まれた糸を完全に抜き取るのは不可能」とも指摘した。
MRIメーカーなどでつくる「日本画像医療システム工業会」(東京都)は「金糸等」がある患者には原則検査を行わないよう注意喚起している。MRI検査では体に電流が流れ、金属があるとその部分に電流が集中してやけどをする恐れがあるからだ。
眉などに色素を注入する「アートメーク」や入れ墨をしている人も、顔料に金属が含まれている可能性があるため同工業会ではMRI禁忌とされている。金歯や銀歯は、電流が流れにくい形状のため禁忌とされていない。
原告女性が、手術前にサンプルとしてクリニックから提供されたという
(以上、産経新聞WEB版より引用)
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昨日のYahoo!ニュースに出ていました。
私は取材を受けていません。
大手美容外科もどこかは存じません。
大阪地裁で6月に第1回口頭弁論があったという報道です。
大手美容外科側は、
手術と色素沈着との因果関係を否定。
MRI検査を受けることにも問題がないとして請求棄却を求めました。
■ ■
私の発言にはエビデンスがありません。
一人の形成外科医としての見解です。
金の糸とMRI検査
2015年8月25日の院長日記です。
2015年8月24日の院長日記、
CTやMRIでわかる整形に、
次のご質問を相談フォームからいただきました。
院長日記読ませて頂きました。
MRIやレントゲンですが、私は顔に金の糸が入っていますが大丈夫でしょうか?
先生に伝えてから撮影してもらったほうがいいのでしょうか?
お忙しい中すみません。よろしくお願いします。
同じような不安をお持ちの方も多いと思いますので、
今日の院長日記で取り上げます。
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日本美容医療協会ホームページに記載があります。
1.レントゲン写真、CTやMRIといった画像診断を受けられる方は、必ず医師と放射線技師に申告をして下さい。
2.埋入部のレントゲン写真、CTやMRIの写真には、金の糸が写ってしまうことがあります(写真参照)。但し、金の糸自体が画像診断の障害になることは稀のようです。
3.MRIは核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance, NMR)現象を利用して生体内の内部情報を画像化する方法で、撮影時には強力な磁気を発生します。従って特にMRIの撮影時には必ず申告をして下さい。体内に金属が埋入されている場合は、金属が移動したり熱を発生することもあり、時には撮影を拒否される場合も考えられます。これにより、悪性腫瘍の早期発見のチャンスを逃す可能性があります。
…というのが日本美容医療協会の見解です。
■ ■
私の結論は大丈夫です。
本間説です。エビデンスはありません。
本間説の根拠です。
金は代表的な「反磁性体」(磁石にならない金属)と言われています。
金の糸は細く、
どこに何本入れたかわかりませんが、
通常のMRI検査は大丈夫です。
もし不安でしたら、
【金+MRI】で検索なさるとわかります。
CTやレントゲン検査も受けられます。
■ ■
日本美容医療協会HPに書いてあるように、
放射線科の先生に聞いても、
脳神経外科の先生に聞いても、
金の糸?
何ですかそれ?
顔に入れた?
はぁ?
…ってな感じになると思います。
■ ■
僕じゃわからないから、
形成外科に行って聞いてください。
…と言われて形成外科に行ったとしても、
○○市民病院形成外科部長の先生ですら、
金の糸?何ですか?
何ミリくらいの糸を、
何本入れたんですか?
…と聞かれるくらいだと思います。
ふつうの形成外科医は金の糸を見たことがありません。
■ ■
私自身も、
学会の展示会場で見ただけです。
自分で患者さんに入れたことはありません。
形成外科で使う金は、
顔面神経麻痺の患者さんに、
ゴールドプレートという、
金の延べ板の極小版を、
まぶたに入れる手術で使うくらいです。
私も35年で一度しか見たことがありません。
■ ■
私は金の糸をすすめているのではありません。
金の糸が不安で検査を受けずに悪性腫瘍の発見が遅れるより、
しっかりとした先生に診てもらうことをすすめます。
もし美容整形で入れた材料で不安になったら、
放射線診断を専門としているクリニックのHPを見たり、
歯科で使う材料について、
ネットで検索してみることをおすすめします。
【金の糸+MRI検査】でヒットした結果が不安だったら、
【金歯+MRI検査】なら他の情報も必ずヒットします。
MRIは磁力を使った検査なので、
心臓ペースメーカーを装着した方などは受けられません。
■ ■
ここからが今日の私の解説です。
2015年8月25日の院長日記に書いたのと、
私の考えは変わっていません。
産経新聞の記事には、
電流集中しやけど恐れも
…と書いてあります。
日本熱傷学会で、
金の糸を入れた患者さんがMRI検査を受けて、
顔面熱傷になったという報告はありません。
■ ■
私の考えです。
金の糸を入れた人がMRI検査を受けたとします。
おそらく大部分の人は、
金の糸を入れたことを忘れている
金の糸を入れたことを覚えていても
私、美容整形で金の糸を入れました
…とは申告しません。
■ ■
美容外科医には、
自分で金の糸を入れた先生がいます。
私はその先生をよく知っています。
CT検査もMRI検査も受けていらっしゃいますが、
何の問題もなく検査を受けています。
私自身はゴールドプレートという、
金の板を、
顔面神経麻痺の患者さんに入れました。
検査前に確認してMRI検査をしましたが、
何の問題もありませんでした。
金の糸が入った患者さんから相談を受けたら、
MRI検査を受けなさいと言います。
金の糸が不安でMRI検査を受けずに悪性腫瘍の発見が遅れるより
しっかり診断することが大切だと考えるからです。
エビデンスはありません。
個人の見解です。