医学講座

自宅での「みとり」どう増やす?

 平成30年1月26日、朝日新聞朝刊の記事です。
 (いちからわかる!)
 自宅での「みとり」、どう増やすんじゃ?
 ■診療報酬(しんりょうほうしゅう)を手厚くし、質の高い医療(いりょう)の担い手を育成する
 ホー先生 最近、自宅でみとられて亡くなったという人がいたなあ。
 A 実は、2016年の死亡者のうち76%は医療(いりょう)機関で亡くなり、自宅は13%にとどまるんだ。でも、高齢(こうれい)化が進んで死亡者数は増えていくから、医療機関だけでは対応しきれなくなるし、自宅で最期(さいご)をむかえたいと望む人も多い。そこで、政府は、「みとり」もできる在宅医療の担い手を増やそうとしているよ。
 ホ どう増やすんじゃ?
 A 医療機関や介護(かいご)事業者に払(はら)う報酬(ほうしゅう)について、自宅でみとるまでのケアをしたり、実際にみとったりしたら加算しているよ。さらに2018年4月の報酬改定では、複数の医療機関が連携(れんけい)し、24時間態勢で患者(かんじゃ)さんの自宅に訪問診療(しんりょう)をした場合の報酬を新しくつくる方針だ。
 ホ ホホウ!
 A 訪問診療をする診療所は2014年時点で約2万1千カ所あり、全体の22%ほどになった。ただ、みとりまでする診療所は全体の4.7%しかないんだ。自宅でみとった医療機関に払われている加算の件数は、直近でわかる2016年6月分で6651件にとどまっている。
 ホ なかなか増えないのはどうしてじゃ?
 A 死期が近いと急変していつ呼び出されるかわからず、医師が1人しかいない診療所や高齢の医師には負担が大きい。死に向かう患者さんの心身の痛みに寄りそった質の高いみとりができる医師や看護師らの数も少なく、育成を急ぐべきだとされているんだ。
 ホ 介護施設(しせつ)で亡くなる人もいるのう。
 A 2016年は死亡者の9%が老人ホームなどの介護施設で亡くなり、割合は2005年の3倍以上になった。独居や高齢者夫婦だけの世帯だと、自宅でみとることは難しい場合もある。政府は施設でのみとりも後押(あとお)しして、最期まで質の高い暮らしを送れるようにしたいと考えているんだ。
 (生田大介)

医療とコスト 最期のとき
 「在宅みとり」にかかる負担
 高齢化に伴って死亡者が急増し、政府は住み慣れた自宅での「みとり」を後押しする。入院から在宅への流れは、医療費を減らす効果があるともされる。自宅で最期を迎えるには、どんな負担が必要なのか。
 ■延命治療より死を迎える支援 「医療費、病院より低い
 2016年2月17日、城戸ユリ子さん(66)の母、君江さん(当時97)は東京都台東区の自宅にいた。午前1時半ごろ、血中酸素の濃度を測る機器の数値が低下。最期のときが近づくが、救急車は呼ばないと家族で決めていた。
 まもなく君江さんは目を閉じ、呼吸が途切れそうになった。ユリ子さんは、かかりつけの訪問診療医が勤務する診療所に電話で連絡した。約1時間後に医師が到着したとき、呼吸は停止しており、医師が死亡を確認した。老衰だった。
 「家族に見守られ、家で静かに逝くのが母の願いでした。私も尊厳ある人生の終わりを見届けることができました」。ユリ子さんは当時をそう振り返る。
 脳出血で10年間寝たきりの母を福島県の実家から呼び寄せたのは2015年夏。仕事を辞め母を介護していた弟(63)が脳梗塞(こうそく)で倒れたためだ。フリーで編集の仕事をしながら、在宅医療や介護のサービスを利用し、弟と2人で母に付きそった。
 医師による月2回の定期的な訪問診療で医療費は月約6万7千円。亡くなる前月は人工的に酸素を取り込む機器を導入したこともあり、13万円ほどかかった。毎月の医療費の自己負担には所得や年齢に応じて上限があり、君江さんの支払いは8千円。訪問入浴などの介護サービスも約21万5千円分を利用したが、自己負担はその1割だった。
 主治医だった「たいとう診療所」の斉木三鈴医師によると、終末期にある患者に大切なのは「投薬よりケア」。介護職とチームを組み、血圧や皮膚の状態をみて、食事や排泄(はいせつ)の状態を確認し、生活全体を支える。斉木医師は「積極的な延命治療よりも、自宅で穏やかに療養して死を迎えるための支援が重要。結果として、治療や検査が中心の病院より医療費は一般的に低くなる」と説明する。
 在宅医療は身体的に通院が難しくなった場合に利用できる。一方、入院すれば医療費は少なくとも月30万~50万円ほど、手厚いケアを受けられる緩和ケア病棟なら月100万~150万円ほどかかる。君江さんと同じ所得層の場合、自己負担は月1万5千円。費用との差額は医療保険で賄われる。そのため、在宅医療を普及させることで公的な医療費を減らせるという主張は根強い。
 神奈川県厚木市の森の里病院の金城謙太郎医師らは、12~13年に福岡県内のある病院に入院して亡くなった72人と、その病院の医師が11日間以上の在宅医療を行って自宅でみとった22人について、死亡前30日間の医療費と介護費の合計額を比べた。その結果、在宅は1日平均1万8696円で、入院の2万2488円より約17%少なかった。(森本美紀、高橋美佐子)
 ■家族の無償ケアが支え
 東京都の男性は2014年、歯肉がんと診断された。当時54歳。入院中だった翌2015年秋、医師から「これ以上の治療は難しい」と告げられ、退院を決めた。男性は一人暮らし。自宅に介護用ベッドや点滴台を運び込み、毎日、看護師やヘルパーらの訪問を受け、壊死(えし)した首元の傷口の手当てもしてもらった。日常生活を支えたのは車で1時間圏内に住む2人の妹で、週数回通ってきた。
 2016年2月ごろ、男性は一時重篤となり、医師に「あと数日かもしれない」と告げられた。そこで、妹2人が交代で泊まり込んだ。看護師を夜間に常駐させる選択肢もあったが、一晩数万円の費用がかかると言われ、現実的ではなかった。
 3月中旬の夜。男性のベッド脇で仮眠していた妹が物音で目を覚ますと、男性がベッドと壁の間のすき間に落ちていた。体を持ち上げようとしても動かない。何かあれば自宅でみとる方針を訪問診療医と確認していた。だが、医師が駆けつけるまで40~50分かかる。妹は救急車を呼んだ。
 男性は近くの病院に入院。持ち直して「家に帰りたい」と訴えたが、入院4日目に亡くなった。妹は「できるだけのことはやったと思う。だけど兄の意思に反して病院で最期を迎えさせてしまったことには、複雑な思いもある」。
 担当の訪問診療医は「在宅でがん患者をみとる場合、窒息や吐血などの急激な変化が起きることもある。それなりの覚悟が必要で、途中で病院に行く選択肢があってもいい」と話す。
 在宅のみとりでは、費用は入院より安くなっても、家族による「無償のケア」が補っているともいえる。
 慶応大学の研究グループは2015年、認知症の人の家族らによるケアを費用に換算した研究結果を発表した。1人にかける家族らのケアは週平均で約25時間。民間ヘルパーの費用などから、1人あたり年間約382万円と算出した。終末期のケアとは状況が異なるが、家族が担う役割は大きい。
 家族によるケアを前提とした「安い」在宅医療は今後、成り立たなくなる――。医師で医療経済学者の二木立(りゅう)氏(前・日本福祉大学長)はそうみており、「単身や夫婦だけの高齢者世帯が増え、介護できる家族が減るなかで在宅ケアを進めれば、公的な医療・介護サービスがより多く必要になり、費用はかさむだろう」と指摘する。(伊藤綾、生田大介)

    ◇
 「医療とコスト・最期のとき」では今後、介護施設でのみとりや延命治療について取り上げます。総合面で掲載する予定です。

ベッドに横たわる女性(89)を訪問診療する斉木三鈴医師。女性の息子(左奥)は「いずれは自宅でみとりたい」と言う=東京都台東区、越田省吾撮影
(以上、朝日新聞より引用)


      ■         ■
 今朝の朝日新聞朝刊トップには、
 在宅医療、2025年に100万人
 診療・介護態勢整備へ 厚労省推計

 …という記事が出ていました。
 2面に出ていたのが、
 この記事です。
 在宅で最期を迎えたいという
 私にとっては見逃せない記事です。
 記事を見て驚きました。
 お金がかかります
      ■         ■
 貯金を増やさないと、
 簡単に死ねません
 看取りのために、
 24時間体制で往診に行く先生も大変です。
 60歳を過ぎた私には無理です。
 美容形成外科ならまだできますが、
 体力を使う往診はできません
 自分は自宅で最期を迎えたいと思っていますが、
 家族に負担をかけることもできず、
 難しい問題だと思いました。
 連載の続きを楽しみにしています。

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