医学講座
口の衰え、死亡リスク2倍
平成30年1月10日、朝日新聞朝刊の記事です。
とても参考になる記事です。
3面の記事と21面の生活欄の記事の両方をご紹介します。
医学的に見ても、
とても大切なことだと思います。
ちょっと長いですが、
ぜひ全文を読んでみてください。
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口の衰え、死亡リスク2倍 食事量減り栄養状態偏る傾向 東大など研究チーム調査
むせることが増える、かたいものが食べづらくなるなどの「口まわり」のトラブルが、将来の死亡リスクを高める可能性がある。そんな調査結果を東京大などの研究チームがまとめた。こうした口の働きの衰えは自覚しにくいが、歯科医の定期的な受診などで対処していくことが大切という。
千葉県柏市に2012年に住み、介護を必要としない状態にある65歳以上の約2千人を対象に調べた。
本人への聞き取りや測定から①残っている歯が20本未満②かむ力が弱い③口を巧みに動かせない④舌の力が弱い⑤かたい食品が食べづらい⑥むせやすい――の6項目を調査。該当するのが「3項目以上」「1~2項目」「ゼロ」と三つのグループに分け、約4年後の健康状態を検証した。その結果、年齢などの影響を取り除いても、3項目以上該当したグループは、ゼロのグループに比べて死亡率が2.09倍に。介護が必要になった割合は2.35倍だった。
口の働きが衰えている人は食事量が少なく、肉類の摂取量が減る傾向があった。食べられるものが減って栄養状態が偏り、体力の低下や健康状態の悪化につながったとみられる。調査をした東大高齢社会総合研究機構の飯島勝矢教授(老年医学)は「かむ力や滑舌の悪化などささいな口の衰えの積み重ねが、体に大きな影響を及ぼすことがわかってきた。早いうちに気づき、かかりつけの歯科医で口まわりのケアをしてほしい」と話す。(川村剛志)
【老いとともに】
かむ力低下=衰えのサイン 要介護の恐れ高まる
年とともに歯や舌などの機能も衰えていく。食べこぼしやむせることが増えるといった口まわりのささいなトラブルを、全身の衰えのサインととらえる「オーラルフレイル」という考え方が少しずつ広がっている。本人や周囲が口まわりに意識を向け、気になることがあれば歯科医に相談することが大切だ。
「58回、59回、60回。ではガムを出してください」
昨年12月7日、高齢者を対象に東京都大田区内で開かれた「口から始める健康講座」。約30人の参加者がかんでいたのは「咀嚼(そしゃく)チェックガム」。口に入れる前に緑色のガムが、かんだ後にピンク色に変われば、しっかりかめている証拠になる。
大きく口を動かして声を出したり、舌を前に突き出したりする「口の体操」や、唾液(だえき)の分泌を促すための頬やあごのマッサージも学んだ。参加した女性(89)は「家でテレビを見ながらでもできるので続けたい」と話した。
講師を務めた、区保健所職員の熊谷純子さん(歯科衛生士)は「口の機能が落ちてくると、全身の健康状態も悪くなる」と強調。「ふだんから口全体のケアを心がけることが大切です」と説明した。
最近、歯科を中心とした医療現場で、「オーラルフレイル」という考え方が注目されている。フレイルは「虚弱」を表す英語に由来し、健康と要介護状態の中間地点を意味する。口の虚弱、オーラルフレイルとはどんなものか。
加齢などの影響で口の機能が衰えると、かみにくいと感じる。肉や根菜などかたいものを避け、パンやうどんなどやわらかい食べ物を選びがちになり、栄養が偏る。ここで対策をとらないと、かむ機能はどんどん落ちていく。食べられるものがますます減り、食欲や体力が低下し、低栄養や筋力の低下、ひいては要介護状態になりやすくなる。口の衰えが、要介護の始まり。いわば「人は口から老いる」との考え方だ。
これを示す研究結果もある。オーラルフレイルの概念を提唱した飯島勝矢・東京大教授(老年医学)らが、約2千人の高齢者を約4年間追跡すると、オーラルフレイルの人は、死亡や要介護状態になるリスクが約2倍、高かった。「4年の短い期間でも差が出た。かめない食品が増える、滑舌が悪くなるなど一つひとつでは生活に困らないが、ささいな衰えの積み重なりが、本人の健康に大きなダメージになる」と語る。
■舌や唇の働きも重要
要介護状態にならないためには、十分に栄養をとる必要がある。そのために、80歳時に20本以上の歯を残す「8020(ハチマルニイマル)運動」が提唱されてきた。歯が20本あればたいていのものをかんで食べられるとの考え方で、達成割合は1993年に推計で約1割だったが、2016年には5割に増えた。
「十分にかむために必要なのは、歯だけではないことがここ最近で分かってきた」と羽村章・日本歯科大生命歯学部長は語る。双子の長寿姉妹として人気だった「きんさん、ぎんさん」は、かみ合う歯がなくても刺し身を好物にしていた。歯が十分になくてもかめて食べられる高齢者がいる、と当時、歯科医の間でも話題になったという。2人は舌や唇、口を動かす力などが保たれ、歯の欠損を補っていたとみられる。
一方、高齢になると、かむために必要な口まわりの筋肉は落ちていく。筋肉のかたまりである舌も使わないと衰え、小さくなったり厚みが減ったりするという。
日本歯科大口腔(こうくう)リハビリテーション多摩クリニック(東京)の菊谷武院長らの調査では、歯が20本以上残っている高齢者でも、咀嚼回数、舌の圧力、舌の反復運動の回数はいずれも加齢とともに低下していた。65~69歳の人を100%とした場合、80歳以上の人は75~90%だった。
こうした衰えは、食べたりのみ込んだりする機能に影響し、窒息事故や誤嚥性肺炎にもつながりかねない。菊谷さんは「歯の本数に加え、口全体の働きに着目した対策をとってほしい」と指摘する。
■かたいもの食べ、会話を楽しんで
どうしたら予防できるか。
東京都健康長寿医療センターの平野浩彦・歯科口腔外科部長は「食事の際に食べこぼしやむせることが増えたり、滑舌が悪くなったと指摘されたりしたら、オーラルフレイルの可能性を考え、かかりつけの歯科医に相談してほしい。早めに対処し、定期的に経過を見てもらうことが大切だ」と話す。
日本歯科大口腔リハビリテーション多摩クリニックの菊谷さんによると、勤務先の近くにかかりつけ歯科医がある人は、定年後に足が遠のくことが多いという。「定年が近くなれば、かかりつけ歯科医を自宅近くに変えることも検討してほしい」と助言する。
生活上は、どんなことに気をつけたらいいのか。
平野さんは「食事の際は、意識してかたいものも食べ、なるべく奥歯でかむことが大切」と指摘する。かたいものを食べることで、口まわりの筋肉も鍛えられるからだ。
菊谷さんは「家族や友人と会話を楽しみ、口を動かす機会を増やすとよいでしょう」と話す。1人で食べるより、誰かと食卓を囲むほうが、会話で口をより動かすので効果的だ。カラオケで歌うのも、口を大きく動かすことにつながり、おすすめという。
(川村剛志、武田耕太)
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とても大切なことだと思います。
オーラルフレイルという言葉をはじめて知りました。
双子の長寿姉妹として人気だった
「きんさん、ぎんさん」は、
かみ合う歯がなくても刺し身を好物にしていた。
歯が十分になくてもかめて食べられる高齢者がいる、
…と当時、歯科医の間でも話題になったという。
2人は舌や唇、口を動かす力などが保たれ、
歯の欠損を補っていたとみられる。
…これも知りませんでした。
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写真に出ているような、
口を動かす体操も知りませんでした。
今日の朝日新聞の記事は、
健康で長生きするにはとても大切なことです。
私が通っている歯医者さんでは、
いつもていねいにPMTCをしてくださいます。
歯周病の予防とケアーも大切だと思います。
いい記事を書いてくださった朝日新聞社に感謝しています。