医学講座

もうからない病院

 昨日の院長日記、
 上手な先生の手術は出血が少ない
 …に書いた、
 もうからない手術ばかりしていたら倒産ですが、
 必要であればもうからない仕事でもします。

 …のつづきです。
 病院の赤字
 11年前の2007年7月18日に書いた院長日記です。
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 私は美容外科医になる前に総合病院の形成外科医をしていました。
 私が勤務した病院で黒字だったのは、釧路労災病院と帯広厚生病院でした。釧路労災病院は当時、新田一雄院長とおっしゃる、伝説の素晴らしい院長がいらっしゃいました。
 全国の労災病院でもトップクラスの黒字病院でした。設備は一流で、大学病院にない医療機器もたくさんありました。
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 帯広厚生病院は北海道厚生農業協同組合連合会(JA北海道厚生連)が経営する総合病院です。
 JA北海道厚生連は農協法により昭和23年8月に「農民の健康保持と生活文化の向上」を目的として設立されました。農業団体が経営する、農民のための病院です。一番偉いのは農協の組合長さんで、医師はその下で雇われています。
 帯広厚生病院はJA北海道厚生連の中でも、トップクラスの黒字病院でした。設備も施設も一流でした。
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 逆に、札幌医科大学附属病院、北海道大学病院、市立札幌病院は赤字でした。
 これら3病院は今でも赤字だと思います。
 救命救急センターがあったのは、市立札幌病院と札幌医科大学附属病院。私が辞めた後で帯広厚生病院にもできました。北海道大学病院にも救急医学講座ができました。
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 札幌市には消防ヘリがあり、消防局の救急隊も優秀です。
 消防ヘリの維持管理には莫大な費用がかかり、消防・救急にもお金がかかります。
 現在の日本では、119番で救急車を頼んでもお金はかかりません。タクシー代わりに利用する人がいて困っているくらいです。
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 私は一人の札幌市民として、消防・救急、救命救急センターにお金をかけるのはよいことだと思います。
 病院が赤字で必要な医療器械も買えないのでは困ります。ある程度のお金は行政から支出しても仕方がないと思います。
 問題なのは、仕事をしないで、給料ばかり高い職員がいるために赤字になっている病院です。
 どこの病院とは申しませんが、そういう病院がありました。
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 私は札幌市民が安心して暮らせるために、ある程度の税金が使われることは必要だと思います。
 札幌は同規模の日本の他都市より凶悪犯罪が少ないそうです。統計的なデーターがあるかどうかは知りませんが、確かに凶悪犯は少ない気がします。これにも札幌市の医療が役立っているそうです。
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 事務所経費や、議員さんのわからない調査費に税金を使うのは反対です。
 安心して暮らせる街づくりのために税金を使うのは悪いことではないと思います。株式会社が病院を経営できるようになっても、救命救急センターは無理だと思います。
 お金持ちだけが、高度救命救急センターを利用し命拾いできるなんてまっぴらです。

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 2018年9月6日に起きた、
 北海道大地震
 活躍したのが、
 市立札幌病院でした。
 停電で透析ができなくなった病院から、
 透析患者さんを引き受けたと、
 北海道新聞に掲載されていました。
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 市立札幌病院は赤字で苦しんでいます。
 新聞にも何度も掲載されました。
 赤字の市立札幌病院、経営改善目指す検討会始まる
 市立札幌病院44病床削減へ
 市立札幌病院2年連続の赤字
 赤字には原因があります。
 もうからない不採算部門を持っているからです
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 もうからない非常用電源も、
 市立札幌病院にはあります。
 その非常用電源のおかげで、
 透析患者さんが助かりました。
 大震災に備えて非常用電源まであると、
 病院の設備投資が過大になります。
 減価償却費が多額になるので、
 どんなに病院が節約しても赤字決算になります。
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 私はもうからない病院でも、
 いざという時に頼りになる病院は必要だと思います。
 一ヶ所の救命救急センターが被災しても、
 数か所の災害拠点病院が連携して、
 大災害に備える必要があると思います。
 北海道で発生した大地震は、
 次は東京や東海地方で起こる可能性があります
 ブラックアウト対策や救命救急は、
 国として備える必要があります。
 もうからない病院でも存在価値がある病院は必要です。

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