医学講座

クマ「緊急銃猟」運用に残る課題_北海道新聞

 今日は2025年9月3日(水)です。
 北海道新聞にクマの特集が載っていました。
 私が言いたいことが全部書いてありました。
 さすが北海道新聞社です。
 専門家お二人のご意見を、
 北海道知事と内閣総理大臣に読んでいただきたいです。
 クマに襲われて子供が亡くなってからでは遅すぎます。
 クマの頭数を減らすべきです。

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 <水曜討論>クマ緊急銃猟運用に残る課題
 市街地に出没したヒグマを市町村の判断で猟銃駆除できる「緊急銃猟」が1日から始まった。クマの出没が相次ぐ中で、人身被害の防止が期待される一方、市町村による判断の難しさや発砲の条件といった運用に課題が残る。住民とハンターの命を守りつつ、実効性を発揮できるのか。専門家や現場を担うハンターに聞いた。
実情踏まえ指針見直しを 銃猟免許を持つ弁護士中村憲昭さん
 改正鳥獣保護管理法に「緊急銃猟」が創設され、市街地で猟銃を使ったヒグマの駆除が、初めて法的根拠を持ちました。ハンターの1人としても歓迎していますが、障害物や死角が多い市街地は、山中での駆除に比べても予測が難しい環境です。運用に向けた課題は山積しており、実情に合った制度の見直しが不可欠です。
 改正法の施行前の7月に発生した渡島管内福島町の住宅地で新聞配達員の男性が襲われ、死亡した事故では、わずか5メートルの距離からの発砲でクマが駆除されました。ハンターが襲われてもおかしくない危険な状況でした。市街地ではクマがいつ、どこから現れるか見通しにくく、駆除時の安全確保が重要です。
 ただ、緊急銃猟に必要な手続きを定めた環境省のガイドラインは、発砲までの手順が煩雑で、その間に襲われるリスクがあります。弾を撃つ方向に障害物などがないか確認した上で、市町村が発砲を許可する流れですが、クマは1カ所にとどまりません。動き回るため、弾道は想定できず、発砲のハードルは上がります。
 また、畑の土や芝生などの「柔らかい地形」のみをバックストップ(弾を遮る安土)とし、そこに向けて可能な限り90度近い角度で撃ち下ろすと定めています。しかし、コンクリートや建築物が多い市街地では、背後に土がある場所や、森林は少なく、基準を満たさない場所がほとんどです。
 私自身が狩猟に入る山ですら、岩や硬い地面ばかりで、角度もせいぜい半分の40度ほどしかつけられません。
 発砲を許可する市町村の大半は、クマの生態や銃火器に関する専門知識がある職員がいません。結果的に現場のハンターが判断を迫られる状況に陥り、業務上過失致死などの罪に問われる可能性があります。
 北海道猟友会砂川支部の支部長が2019年4月、猟銃所持の許可を取り消された問題では、ハンターが砂川市の駆除要請に従ったにもかかわらず、弾が届く恐れのある建物の方向に撃ったとして処分されました。緊急銃猟でも同様の問題が起こる可能性があり、ハンター仲間からも「市街地での発砲はリスクが大きすぎる」との不安をよく聞きます。
 北海道猟友会は、緊急銃猟による発砲の中止も可能と各支部に通知しましたが、当然の対応と言えます。ガイドラインでどのようなケースが刑事責任に問われるか例示するなど、ハンターが安心して駆除に集中できる環境を整備するべきです。
 緊急銃猟の実施は住民の安全確保が大前提で、避難誘導も求められています。交通規制などで自治体と警察の連携が欠かせませんが、ガイドラインは「警察との連携が重要」とだけしか触れていないため、警察が協力する義務はなく、スムーズに連携できるかも見通せません。
 人の生活圏へのクマの出没が続く中、新たな制度が適切に運用されなければ、住民が期待する早期の駆除につながらないばかりか、駆除が長期化して被害を拡大させてしまう恐れがあります。制度を運用していく中で、国は積極的に現場の意見に耳を傾け、ガイドラインの見直しも検討するべきです。

なかむら・のりあき 千葉県出身。早稲田大法学部卒業後、弁護士登録した2000年から札幌弁護士会に所属。17年に狩猟免許を取得した。砂川市のハンターの男性が、違法に猟銃の所持許可を取り消されたとして、処分の取り消しを求めた行政訴訟の原告代理人を務める。53歳。

■「猟友会頼み脱却が必要 東京農大教授山崎晃司さん

やまざき・こうじ 東京都出身。3~6歳を札幌で過ごす。茨城県自然博物館動物研究室の首席学芸員などを経て2015年から東京農大地域環境科学部教授。専門は動物生態学で奥多摩山地や秋田でツキノワグマの行動生態研究に取り組むクマ研究の第一人者。64歳。

 1日施行の改正法で、市街地でも警察官職務執行法によらない発砲が可能となり、野生鳥獣管理の現場は歓迎しています。ヒグマやツキノワグマの管理に貢献すると考えています。
 クマが市街地に出没した場合、現場警察官の判断だけでは事実上命令できず、動くクマを適切に駆除できる時機を逸しがちでした。今後は緊急銃猟として必要な時に発砲できる法的な仕組みが整ったと言えます。
 一方、狩猟を趣味とする地域の猟友会員を緊急銃猟の担い手とするのは、この機に見直すべきです。猟友会のボランティア的なクマ駆除体制を改めないと、この先持ちません。
 渡島管内福島町で7月、男性がヒグマに襲われた死亡事故を巡る問題点は、4年前に女性を襲った問題個体をきちんと駆除しなかったことに加え、男性が襲われる前に市街地へクマが出没し始めた際の初動対応の遅れです。出動した町内の猟友会員は3人で、今後増えるクマの市街地出没に対応するのは人員的に難しく、これは福島だけの問題ではありません。住民の間に不安が広がる中、クマの行動調査と状況を判断できる人材がいなければ、事故が起きる前に専門家の支援を求めるべきでした。市町村が独力で対応できないならば外部に頼ってほしい。
 対応策としては、市町村が民間業者の専門的な派遣社員を雇用することです。広島県では県と市町村が連携して一般社団法人を設立し、市町村に専門職員を常駐させ、一体的に野生鳥獣対策に取り組んでいます。今は駆除を請け負ってはいませんが、将来的には緊急銃猟の実施も視野に活動しています。
 民間の認定鳥獣捕獲事業者などに、駆除や防除対策を業務委託する手もあります。野生鳥獣管理を学び、夜間発砲の許可要件もクリアした若く優れたハンターが就職しています。市町村は猟友会と連携しつつも、頼らない体制に移行すべきです。
 クマの捕獲経験者がいない自治体はあり、緊急銃猟に取り組めない地域もあります。クマを撃てる人材の育成が欠かせません。趣味の狩猟者ではなく、生息数調査と頭数管理ができる捕獲従事者の育成が急務です。
 2023年度は北海道や東北でクマが大量出没し、秋田県では70人が襲われました。その後収まると思われましたが、今年も岩手県で住宅内でクマが住人を殺害したとみられる事故が起きるなど全国的に人身事故件数は高止まり状態です。九州、四国を除き、全国でクマの生息数が増えたことが主な原因です。
 調査中ですが、多くのクマが奥山と市街地周辺を行き来している可能性があります。その場合、保護する奥山、緩衝地帯、排除する市街地と地域を区分けして管理するゾーニング管理では対応できず、全体的に密度を下げる必要が出てきます。
 地域の個体群を絶滅させず、頭数を減らさないといけません。子どもが襲われた場合、「クマを1頭残らず排除しろ」となりかねず、住民のクマに対する不安や恐怖など負の感情が噴き出さない水準に抑えることが重要です。人身事故防止に重点を置いた管理体制です。人口減少社会の日本では発想の転換が必要。守る地域に注力し、獣害に強い街づくりを進める時に来ています。
 <ことば>緊急銃猟 原則として発砲が禁じられている市街地周辺で、市町村がハンターに猟銃駆除を委託できる制度。発砲の条件として①クマが人の生活圏に侵入②発砲以外の方法で駆除が困難③住民らに弾丸が到達する恐れがない―などを満たす必要がある。周辺住民の避難指示や交通規制は市町村が警察などと連携する。緊急銃猟で発砲するハンターは、3年以内にクマやシカを捕獲するとともに、1年間に2回以上の射撃訓練の経験が必要。発砲に伴う物損事故は市町村が補償するが、発砲判断を巡ってハンターが刑事責任を問われる可能性もあり、北海道猟友会が懸念を表明している。(高木乃梨子 、内山岳志)


(以上、北海道新聞より引用)

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 北海道新聞社がクマ対策特集を組んでいただき、
 ほんとうにありがたいと感謝しています。
 私たちは医療の現場でクマ被害の悲惨さを知っています。
 東京農大の山崎晃司教授がおっしゃるように、
 地域の個体群を絶滅させず、
 頭数を減らさないといけません

 銃猟免許を持つ弁護士・中村憲昭先生のご指摘通り、
 ハンターが安心して駆除に集中できる環境を整備するべきです。
 国は積極的に現場の意見に耳を傾け、
 ガイドラインの見直しも検討するべきです

 今日の北海道新聞を首相官邸にお届けしたいです。

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