昔の記憶
母親の葬儀⑤
母親の付きそいのおかげで、
私と弟は仲良くなりました。
バアさんが残した一番の遺産です。
一週間もいたのは無駄ではありませんでした。
残念だったのは、
弟と弟の子どもが最終便まで待っていたのに、
帰った翌日に亡くなったことでした。
これも運命です。
■ ■
私は3日も臨時休診にして、
患者さんに多大なご迷惑をおかけしました。
深くお詫びいたします。
バアさんが亡くなった11月7日(火)は、
朝から手術をしていました。
臨時休診で予定を変更していただいた方です。
手術中に亡くなっても行けないのでごめんなさい。
…と思いながら仕事をしていました。
■ ■
バアさんは私の仕事が終わるのを待っていたかのように、
2023年11月7日(火)20:56に亡くなりました。
私は東札幌病院までタクシーで行き、
弟に連絡をしました。
弟も十分に看病できたので、
思い残すことはありませんでした。
亡くなってから、
東札幌病院の看護師さんが髪を洗ってくださり、
花井幸子さんの服を着せてくださり、
バアさん愛用の化粧品でお化粧をしてくださいました。
■ ■
私は看護師さんの処置の前に、
口を開いたまま亡くなったバアさんの、
口を閉じる処置をしました。
形成外科医の腕の見せどころです。
葬儀社に聞いても、
看護師さんに聞いてもご存知ないようでした。
亡くなった方の口を閉じる方法です。
■ ■
なんちゃって美容外科医は知らないと思います。
亡くなった方の口を閉じるには、
死後硬直の前に顎間固定がっかんこていをします。
形成外科医や歯科口腔外科医ならわかります。
私は札幌医大の学生時代に口腔外科の実習で習いました。
形成外科医になってからも外傷患者さんの手術でしていました。
■ ■
手術時の顎間固定はワイヤーや金具を使います。
亡くなった方の顎間固定は、
残っている歯があれば糸でできます。
うちのバアさんには自分の歯が残っていました。
ぐらぐらしていない歯に、
病院の看護師さんにいただいた絹糸けんしをしっかり結びます。
絹糸がなければデンタルフロスの糸でもいいと思います。
■ ■
上の歯に左右2ヵ所(上顎の3番と4番でした)
下の歯に左右2ヵ所(下顎の3番と4番でした)
それぞれ糸を結んで、
下顎を持ち上げながら上と下の糸を左右とも結びます。
そうするとぽっかり口を開けていたのが、
ちゃんと閉じます。
この糸でする顎間固定は医師免許も歯科医師免許も不要です。
死体損壊罪にもなりません。
■ ■
ネットで検索しても、
死後顎間固定は出てこないようです。
私は祖母の時にもしました。
やすらかな顔になりました。
うちのバアさんには美容形成外科医として、
もう少し処置をしました。
口を閉じたものの頬はやせこけていて、
生前の面影はありませんでした。
■ ■
亡くなったバアさんにヒアルロン酸注射をしたのではありません。
バアさんが使っていた高級なティッシュを、
少しずつ口の中に入れました。
ティシュ1枚は多いので、
少しずつ丁寧にいれました。
上手にティッシュをつめると、
頬がふっくらとして少し笑っているように見えます。
おばあちゃん笑っているみたい
孫にも好評でした。
■ ■
本間賢一のちょっと変わった死後の処置です。
死後顎間固定と頬にティッシュです。
ネットで広まってくれるとうれしいです。
うちのバアさんには何も形成外科の手術はしていません。
眼瞼下垂症手術もしていません。
それでも95歳まで身ぎれいにして、
おしゃれを楽しんでいました。
しあわせな95年間でした。
たくさんのお言葉をいただきありがとうございます。
“母親の葬儀⑤”へのコメント
コメントをどうぞ
お母様が亡くなった11月7日、
臨時休診で予定を変更した患者様の
手術を朝からされていたのですか。
大変でしたね。
ですがお母様は
待っていてくださったのですね。
父は私が駆けつけた30秒後位に
息を引き取りました。
本当に待っていてくれたのだと
思いました。
死後顎間固定、いいですね。
初めて聞きました。
流石は先生です。
頬にテッシュもお若く見え
素晴らしいと思いました。
ご冥福を心からお祈り致します。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。3日も臨時休診にしたのは開院以来はじめてで、患者さんには多大なご迷惑をおかけしました。朝から手術をはじめて手術中に亡くなっても行けないから、、、と心の中で思っていました。死後顎間固定は歯がある患者さんでしたらデンタルフロスでできます。私は母親の母親(私の祖母)の時にもしました。もっと広まってもいいのにと思います。口を開いたままのご遺体をきれいに閉じるのは難しいです。
そうでした!先生は形成外科の
プロフェッショナルですから、
顎の仕組みからお顔が美しく見える
ことまで熟知されているのですね。
ご子息に最期のお支度をしてもらえる
親御様はなかなかいらっしゃらないと
思います。
お母さまお幸せですね。
ご冥福を心よりお祈りいたします。
今日の先生の日記を納棺師(おくりびと)
をされている方にも見ていただきたい
と思いました。
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。おくりびとの技にはあるのかもしれませんが、ネットで検索しても出てきません。死後硬直の前に顎間固定をすると口を閉じることができます。頬に適当にティッシュを入れるとふっくらとします。ヒアルロン酸注射より簡単で効果的です。うちのバアさんもいい笑顔になりました。
先生はプロですから綺麗なお母様になられたのでしょう。
この辺りは、看護師さんがほっぺに脱脂綿を入れてくれたりして、綺麗にしてくださり、おくりびとが生前好きだった洋服や着物を肌を見せないで目の前で着替えさせてくれ、綺麗にお化粧してくれます。おくりびとは先生と同じように上手です。
お母様が笑いながら空に上って行くのが見えます。
合掌
【札幌美容形成外科@本間賢一です】
コメントをいただきありがとうございます。札幌にもおくりびとがいらっしゃると思います。私は解剖学教室でたくさんのご遺体と対面しました。母親には何も手術はしませんでしたが、最期は生前の面影がないほど痩せて頬がくぼんで変わってしまいました。納棺師さんが開いた口を閉じるには頭の位置を変えたり、タオルで顎を上げたりするようですが、顎間固定はしないようです。効率よく口を上手に閉じることができます。