医学講座
目の上のくぼみ③
私は形成外科医として、
30年近く働いています。
今は、体力的に無理ですが…
昔は12時間以上もかかる手術をしていました。
交通事故や労災事故で…
顔の骨がバラバラになってしまうほど、
‘壊(こわ)れる’ことがあります。
シートベルトの普及で…
交通事故による顔のケガは激減しました。
■ ■
顔の骨は、
脳を守る頭蓋骨と違って…
薄い骨でできています。
特に目を入れる骨…
[眼窩(がんか)といいます]は薄く、
鼻の近くの骨は、
卵の殻程度の厚さしかありません。
顔の骨は、
比較的簡単に折れてしまいます。
■ ■
下の患者さんは、
私が経験した顔面骨骨折で、
一番重症だった方です。
眼科の先生から…
左目(向って右側)は、
失明すると言われました。
失明する可能性もあったため、
左目の骨は治しませんでした。
■ ■
レントゲン写真に骸骨(がいこつ)が写っています。
これを3D-CT(スリーディー・シーティー)といいます。
20年前に、
この3D(スリーディー)を撮れるのは、
限られた施設しかありませんでした。
北大の先生にも応援に来ていただきました。
朝からはじめた手術が終了したのが…
午後11を過ぎていました。
顔の骨がすべて壊れていました。
■ ■
一回目の手術が終わって、
失明すると言われていた…
左目の視力が回復しました。
斜視も残っていました。
眼球が陥没していて、
目の上もくぼんでいました。
壊れていた骨[眼窩(がんか)]をなおし、
軟骨移植をしました。
■ ■
神経が麻痺していて、
斜視になっていました。
20年前に、
札幌医大眼科を受診しました。
担当してくださったのは
大庭先生でした。
私は…
この時にはじめてボトックスというのを知りました。
■ ■
大庭先生はボトックスで、
斜視を治してくださいました。
患者さんは、
ようやく正常にものが見えるようになりました。
ボトックスだけで治ったのには…
大変驚きました。
大庭(おおば)先生は、
昨年、札幌大庭眼科を開業されました。
札幌市西区八軒にあります。
今でも大庭先生に感謝しています。
受傷直後です
一回目の手術後です
目のくぼみを治しました。
斜視は大庭先生に
ボトックスで治していただきました。