医学講座
顔面骨骨折④
私が医師になった30年前には、
交通事故による顔面骨骨折が、
かなりありました。
シートベルトも2点式で
(飛行機の座席ベルトのよう…)
古い車の後部座席にはついていませんでした。
タクシーに乗って…
ベルトをすることもありませんでした。
■ ■
自動車のフロントガラスも…
部分強化ガラスという、
壊れると…
粉々になるガラスでした。
交通事故になると…
その細かなガラス片で…
顔中キズだらけになりました。
エアバッグなんて…
もちろんありませんでした。
■ ■
30年の間に…
シートベルトは3点式となり、
急ブレーキを踏んだだけで、
自動的に巻き取られる
急ブレーキ連動シートベルト
なんてのもあります。
シートベルトは顔や命を守ってくれます。
■ ■
フロントガラスも、
2枚のガラスの間に
透明のビニール膜をはさんで…
強度を高めた…
合わせガラスになりました。
そのため…
事故に遭っても…
ガラス片によって
細かいキズがたくさんできたり、
失明がすることが減りました。
■ ■
30年前には、
形成外科医の数も少なかったので…
卒後6年目で…
地方病院のトップになりました。
私が一番顔面骨骨折の手術をしたのは…
釧路労災病院形成外科でした。
当時は土曜日も外来がありました。
唯一の休日は日曜日でしたが、
日曜日にも回診の当番がありました。
■ ■
病院の横に宿舎がありました。
救急車が来ると…
ピーポーピーポーの音が聞こえました。
明日は、
長い定期の手術があるので…
呼ばれないといいなぁ~
と思うときに限って…
病院から呼ばれました。
■ ■
顔の骨がグチャグチャになっていて、
骨だけではなくて…
涙小管(るいしょうかん)や
鼻涙管(びるいかん)という…
涙を流す管(くだ)が切れていることもありました。
骨の手術よりも、
この涙の管(くだ)の手術が大変でした。
グチャグチャのキズの中から、
管の端を見つけて縫うのが大変でした。
■ ■
1㎜もないような細い管に…
シリコンのチューブを通して、
その端を顕微鏡で縫いました。
この処置をしないと…
涙が流れないので…
ちょっとした風が当たっても、
すぐに涙で視界がぼやけます。
朝まで緊急手術で…
そのまま次の日の手術が…
午前9時開始なんてこともありました。
■ ■
形成外科専門医になるには、
必ず経験が必要なのが顔面骨骨折です。
さくらんぼさんからのご質問です。
骨格を変えると…
声が変わりますか?
骨格を変えても…
声は変わりません。
声の手術をしているのは、
元京都大学形成外科教授の
一色(いっしき)先生です。
日本では数少ない声の形成外科です。