医学講座
脳死の時代に③
平成22年7月11日、北海道新聞朝刊の記事です。
脳死の時代に
家族の選択
改正臓器移植法施行を前に
㊦ケア
喪失感への寄り添い必要
「本人が生きていた証しをどこかで残してあげたい」。日本臓器移植ネットワークのコーディネーター大宮かおりさん(36)は、交通事故で亡くした息子の臓器提供を選択した家族が語っていた言葉が忘れられない。
提供者はバイク事故で頭部を負傷した20代前半の男性。命をつなぐことで、若くしてこの世を去る息子の人生の証しを残したい両親の思いが伝わった。
人の役に立てたい
「脳死と宣告されても家族は死の実感がわかず、受け入れるのはまず無理。だからこそ、だれかの中で生き続けてほしい、人の役に立てたいという家族なりの意味づけが臓器提供の大きな動機になる」と大宮さんは話す。
移植コーディネーターは、提供を希望するドナーや家族と移植を受ける患者との橋渡し役だ。家族に臓器提供について説明し、移植がスムーズに行われるよう調整にあたる。終了後も定期的にドナーの家族を訪れ、移植患者からの手紙を届けるなどケアも担う。
大宮さんはこれまで道内などで脳死を含む約80件の臓器提供に携わってきた。
「提供した当初、家族は亡くなった肉親を悲しみつつも、どこかで生きている、提供できて良かったと充実した気持ちを持つ。でも半年後くらいに生活が落ち着いてくると、喪失感がどっと押し寄せる」という。
大切な人を失う家族の気持ちは揺れ動いている。「何も言わないが、家族は自分たちの思いを聞いてほしいと願っている。だから医師や看護師から声をかけ、家族が自分たちのことを気にかけてくれていると思える医療が欠かせない」。大宮さんは、家族の気持ちに寄り添う医療者の対応やケアがあってこそ、はじめて臓器提供が成り立つと指摘する。
判定難しい子ども
17日に改正臓器移植法が施行されると、15歳未満の子どもからの脳死による臓器提供が可能になる。現行法では15歳未満の場合、心停止後の腎臓提供などは可能だが、脳死での臓器提供は認められていない。
同ネットワークによると、15歳以下の子どもから心停止後に腎臓を提供したケースは、1995年4月から2009年12月までに全国で38件。年間1、2件程度で、多い年でも7件にとどまる。
子どもの場合、ドナーカードで本人が意思表示することは想定しにくく、脳死の判定も大人より難しい。脳死になった子の臓器提供を選択する親の負担は重く、精神的なケアは欠かせない。
今年、市立札幌病院救命救急センターで、事故で脳死状態となった10代前半の男子の腎臓提供をめぐり、家族が苦悩したケースがあった。父親はどこかで生きていてほしいという願いから提供に賛成した。母親は反対ではなかったが最後まで気持ちの整理がつかず、提供を見送った。
同センターは脳死状態となった患者と家族に、残された時間を有意義に過ごしてもらう「看取りの医療」に力を入れる。患者を個室に移し面会制限もなくす。脳死という状況に家族が向き合える時間と場所を提供する。
大切な入の死に直面し、臓器提供という選択を迫られる家族に、どれだけ医療者が寄り添えるか。市立札幌病院の鹿野恒医師は言う。「悩んだ末に提供をあきらめる家族もたくさんいる。十分なケアをした上で、最後に本人の意思を考えるのは残された家族、一緒に生きてきた人の責任ではないか」
■ ■
移植医療で大切な役割を果たしてくださるのが、
移植コーディネーターです。
社団法人日本臓器移植ネットワークという、
病院とはまったく別組織の方です。
私が市立札幌病院に在職していた、
20年前には、
腎移植コーディネーターが活躍していました。
■ ■
移植医療は、
摘出した病院と…
移植を行う病院が別になることが多いようです。
臓器提供を行った病院の収益にもなりません。
純粋なボランティアです。
24時間待期のコーディネーターは、
心身ともに大変なお仕事だと思います。
■ ■
市立札幌病院救命救急センターは、
臓器提供を多く行っている施設です。
それだけ、
患者さんから信頼されている証拠です。
いい加減な医療を提供していては…
不幸のどん底にある家族は…
決して臓器提供をしようという気持ちにはなれません。
北海道新聞社が、
3回のシリーズで取り上げてくれた…
臓器提供に…
多くの人が賛同してくれることを祈念しています。
担当の小塚由記夫様ありがとうございました。