医学講座
脳死の時代に②
平成22年7月10日、北海道新聞朝刊の記事です。
脳死の時代に
家族の選択
改正臓器移植法施行を前に
㊥迷い
本人の意思、でも温かい体
「今まで10年間透析をしていて、移植をするのは夢のまた夢のことだと思っていました。手術後1ヵ月が経って、おしっこが出た時は感激で涙があふれました」
「移植をして1年が経ちました。今はずっとやりたかった仕事をしています。毎日働くのははじめてで、移植をして元気になれたからできることばかりです」
札幌市のヤスエさん(56)=仮名=は、夫の腎臓が移植された30代女性から届いた手紙を読み返し、つぶやいた。「私が夫の心臓を止めてしまったのではと思い悩んだこともありました。でも移植を受けた人が元気で過ごしていると思うと、役に立てられて良かった」
意識が戻るのでは
2008年8月。バイクを運転中に夫はくも膜下出血で倒れ、救急搬送された病院で「脳死状態」と告げられた。56歳だった。
身につけていた免許証入れの中に黄色いドナーカードが入っていた。自筆の署名と心臓や肺など臓器提供の意思が記されていた。ヤスエさんは10年ほど前に夫が「死んだらものでしかない。だれかの役に立つのなら」と臓器提供について話していたことを思い出し、医師にカードがあることを伝えた。
「本人の意思を尊重しよう」。家族で話し合い臓器提供を決めた。だが長男(28)は違和感も覚えていた。人工呼吸器を付けているが、ベッドに横たわる姿は眠っているようにしか見えない。「意識が戻るのでは」という思いが残った。
搬送から5日目。2度の脳死判定が行われ、心臓が動いている状態で夫の「死亡」が告げられた。7日目。夫の体から心臓、肺、肝臓、腎臓が摘出され、全国の6人の患者の元へ運ばれた。道内で4側目の脳死による臓器提供だった。
話し合ってほしい
あれから2年。夫の臓器を提供したことについて気持ちが揺らいだ時期もあった。「普通は人が亡くなる時、だんだん冷たくなっていくのに夫の体は温かい。あきらめていてもすぐには受け入れがたい。(心停止する前に)私が殺してしまったのかと思ったこともありました」。ヤスエさんは振り返る。
でも移植を受けた入の手紙を読むと、夫の意思をかなえたあの時の選択は間違っていなかったと思う。
改正臓器移植法が施行されると、本人の意思がはっきりしない場合、家族の同意で脳死による臓器提供ができるように変わる。
「うちは本人の意思があったから提供できたが、もしカードがなかったらどうだったでしょう。移植を受けたい人の気持ちも分かるが、家族もなかなか踏ん切りがつかない。だからこそ一度、家族で話し合っておいてほしい」。身近な人の脳死に直面し、臓器提供の選択を迫られる家族の迷いや葛藤をヤスエさんは打ち明けた。
まもなく三回忌。夫の位牌のそばには、移植コーディネーターを通じて届いた感謝状と匿名の手紙が供えられている。長男も今では臓器提供を「良かった」と言ってくれる。でもヤス工さんは、自分の署名をしたドナーカードを持つことは、まだためらっている。(以上、北海道新聞より引用)
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私が最初にドナーカードを持ったのは…
今から20年前です。
当時は腎バンクが唯一の…
ドナーになる道でした。
ドナーカードという、
2006年11月7日の院長日記に記載してあります。
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1989年4月から市立札幌病院に勤務し毎日救命救急センターへ行って外傷や熱傷の患者さんを救急の先生と一緒に治療していました。私はそこではじめて脳死の患者さんを診察しました。いままで漠然としか脳死を知りませんでしたが救命救急の現場で脳死とはどのような状態であるかを知りました。
市立札幌病院には救命救急センターのほかに腎センターと腎移植科がありました。腎移植科の平野先生は献身的に腎移植に取り組んでいらっしゃいました。市立札幌病院ではたくさんの患者さんが人工透析を受け腎移植を希望する方もたくさん待っていらっしゃいました。ある日、腎バンクの登録希望者を募集していたので、私はすぐに腎バンクに登録しました。その後、臓器移植法が整備され臓器提供意思表示カードを医師会でもらったので腎臓提供カードから、腎臓以外の組織もすべて提供できる臓器提供意思表示カードに切り替えたのが1998年でした。私は自分の死後にもし自分の臓器が役に立つなら喜んで提供します。
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ある日何気なく…
病院2階の外来廊下を歩いている時に、
腎バンクのポスターを見つけました。
腎移植科の…
平野先生はとても温厚で…
優秀な先生でした。
私は平野先生から依頼されて…
腎移植を受けた患者さんが
ケガをした時には手術や処置もしました。
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北海道新聞の記事にあるように…
腎移植によって…
その人の人生が変わります
先進国の中で、
日本は移植医療が遅れています。
ドナーが少ないからです。
医学水準は高いのに、
日本人医師として残念に思います。
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神様がおつくりになった、
人体という組織は素晴らしいものです。
決して人工臓器では補えません。
ドナーになることは…
人生で最大の社会貢献です。
新聞記事による啓蒙が広まって、
ドナーになる方が増えてほしいです。
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