医学講座
脳死の時代に①
平成22年7月9日、北海道新聞朝刊の記事です。
脳死の時代に
家族の選択
改正臓器移植法施行を前に
㊤決断
だれかの体で生き続けて
「黙とう。ありがとうございました」 深夜の手術室に、北海道臓器移植コーディネーターの小野美和子さんの声が響く。
青い布に覆われ手術台に横たわるタカシさん=仮名の遺体に向かって、医師や看護師が静かに頭を下げる。5秒間黙とうをささげ、もう一度全員で「ありがとうございました」と声をそろえた。
傍らには、タカシさんの体から摘出された左右の腎臓を入れたククーラーボツクスが並んで置かれている。二つの箱には、臓器提供への感謝の思いを込めた一輪のランの花が添えられていた。
タカシさんは6月、くも膜下出血で倒れ、市立札幌病院救命救急センターに心停止状態で運び込まれた。まだ30代の若さだった。
懸命の救命措置で心臓は再び動きだしたが、呼吸など生命維持に欠かせない脳幹もダメージを受けていた。医師は両親に、人工呼吸器をつけても1、2週間ほどで心臓が止まる「脳死状態」であることを告げた上で、臓器提供の意思があるかどうかを確認した。
希望を無駄にせず
同病院は心肺停止患者の救命に全力を挙げる一方で、救命が不可能となった場合、家族に状況を正しく説明し、臓器提供の意思も必ず確認するようにしている。本人や家族の希望を無駄にしないためだ。
タカシさんはドナーカードを持っていなかった。改正臓器移植法が施行されると脳死になった時、本人の意思がはっきりしなくても家族が同意すれば臓器を提供できるようになるが、現行法では本人の意思表示がなければ脳死での臓器提供はできない。ただし「献腎」と呼ばれる心停止後の腎臓提供は、本人が生前拒否していなければ、家族の同意で可能だ。
胸の内にとどめて
「だれかの体の中で生き続けてほしい」。腎臓提供を真っ先に決断したのは母親だった。その思いに父親もうなずいた。医師が見せてくれた脳波検査の結果は平たんな波形を描いていた。息子がもう助からないことは理解できた。でも、どこかで命がつながってほしいと願った。
提供を決め、同意書にサインした。だが親せきに知られると反対されないかが気がかりだった。亡くなった体に傷をつけることに抵抗を感じる人は少なくない。悩んだ末、腎臓提供は両親らだけの胸の内にとどめ、周りには知らせず行うことにした。
1週間が過ぎ、タカシさんは家族や友人にみとられ、静かに息を引き取った。ひとときの別れの後、遺体は手術室に運ばれた。
1時間半後、病室に戻ったタカシさんの体は丁寧に傷跡が縫われ、看護師が薄く口紅をさした顔はほほ笑んでいるように見えた。
タカシさんの腎臓は札幌市内で移植を待つ2人の患者の元へ届けられた。「親せきから冷たい親だと言われるかもしれない」。そう明かしていた父親は、最後に臓器提供という仕事を成し遂げた息子を穏やかな表情で見つめた。
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17日に改正臓器移植法が全面施行される。「脳死は人の死」とされ、本人の意思が不明でも家族の同意で臓器提供できるようになる。家族の選択がより大きな意味を占める一方、負担も重くなりかねない。臓器提供の選択に直面した家族の思いを通して、脳死と臓器移植について考える。
(小塚由記夫が担当します)、以上、北海道新聞より引用。
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北海道新聞にも…
朝日新聞にも…
臓器移植についての記事が増えています。
朝日新聞の…
患者を生きるシリーズでは、
生体肝移植を受けたのに…
50日後に亡くなってしまった…
奥様のことも掲載されています。
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一般の方が…
あまり知ることができない…
救急医療の現場。
さくらんぼさんが体験なさった、
救命できなかった虚(むな)しさ。
お通夜の席で…
お坊さんや
牧師さん、
神父さん、
神主さん、
が…お話ししてくださるとよいと思います。
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死んでしまってからの…
社会貢献は…
ドナーになることです。
火葬場で灰になってしまうより…
私は、ずっと価値のある最期だと思います。
自分自身が医師でありながら、
救急の現場に行くまでは気付きませんでした。
ドナーになる勇気を出してみませんか?
きっと天国へ行けます。
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