医学講座

第3回日本創傷外科学会②

 きれいに傷を治す…
 形成外科医の大敵は、
 ケロイド肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)という、
 赤く盛り上がった傷です。
 身体の部位、
 年齢、
 体質によって、
 …どんなに丁寧に縫っても…
 防ぐことができない人がいます。
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 今回の学会でも、
 ケロイドの治療戦略というパネルディスカッションがありました。
 日本中の、 
 ケロイドの専門家が、
 手術、
 放射線、
 レーザー、
 ステロイド治療など…
 たくさんの治療戦略を見せてくれました。
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 9人の演者が発表してくれました。
 私がすごいと思ったのが…
 日本医科大学形成外科の小川令先生でした。
 小川先生は1999年に日本医科大学医学部を卒業。
 現在は日本医科大学形成外科の准教授。
 新進気鋭の形成外科医です。
 英語がお得意で、
 一晩で英文論文を一編書いてしまうそうです。
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 小川先生の抄録です。
 物理的刺激と炎症の軽減に焦点を絞ったケロイド治療
 小川_令(おがわ_れい)、赤石諭史、土肥輝之、小池幸子、百束比古
 日本医科大学 形成外科
 ケロイドは、胸部、下腹部や上腕など、日常の動作で皮膚が繰り返し収縮・伸展される部位を好発部位とすることが知られている。
 一方で、全身にケロイドがある患者、すなわちケロイドの体質・素因(ゲノム上の一塩基多型などの関与が示唆されている)を有すると思われる患者においても、解剖学的に過剰な張力を受けにくい頭頂部や前脛骨部、上眼瞼などにケロイドを認めることはごく稀である。
 よってケロイド患者においては、契機となる微弱な炎症が存在し、そこに物理的刺激が加わることによって、炎症が悪化し、ケロイドがさらに悪化していくという悪循環が推測される。
 よって、ケロイド・肥厚性瘢痕の治療ではいかに物理的刺激を抑制するか、対症療法としていかに炎症を軽減させるかを考慮すべきであると考えている。
 物理的刺激を軽減する術中の工夫としては、縫合の際にできるかぎり表皮や真皮には愛護的に糸をかけ、減張縫合は真皮縫合ではなく筋膜レベルの深層で完結するということや、大きいケロイドの場合、無理な縫合を行わないためにも、完全切除ではなく、皮弁やくり抜き法といった方法を用いる、といったことが挙げられる。
 関節部位などでは張力を分散させるZ形成術も有用である。物理的刺激を軽減する術後の工夫は、安静と固定であり、ジェルシートやサージカルテープなどを用いる。
 炎症を軽減させる方法としては、放射線治療、ステロイドの局所投与、レーザー治療による血管破壊、などが挙げられる。漫然と集学的治療を続けるのではなく、物理的刺激と炎症の軽減という考えを常に中心に考えて治療を進め、さらに複合的に行える治療を追加していくことによって、ケロイドを制御できる可能性がある。
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 小川先生が治療した患者さんが、
 とてもよくなっていました。
 手術後に…
 テープを一年近く貼っている患者さんも見ました。
 物理的刺激と炎症の軽減に賛成です。
 ケロイドで困っている方に、
 日本医科大学形成外科の小川先生をおすすめします。

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