医学講座
皮膚緊張と傷の治り
肌のはりと傷の目立ちかたに続いて…
皮膚の緊張度についてのお話しです。
tension(てんしょん)といいます。
てんしょんが上がるのテンションです。
人は身体の部位によって…
皮膚の厚さも緊張の強さも違います。
■ ■
お腹の外科手術のように…
皮膚はただ切るだけで…
腹腔内の臓器を手術する場合と…
皮膚にできた腫瘍を切除して…
皮膚が欠損した創を縫うのでは…
皮膚にかかる力が違います。
大きな皮膚欠損創を縫うのは難しいです。
■ ■
形成外科医は…
このくらいの緊張度だったら…
どの位の太さの糸を何本かけて…
どうやって寄せて縫うか…
経験的に学びます。
緊張が強い場合には…
周囲を剥離(はくり)して緊張を少なくします。
■ ■
ただ機械的に縫うのではありません。
一番大切なのは血流です。
緊張が強いのに無理に縫って…
皮膚血流がなくなってしまうと…
治る傷も治らなくなります。
初心者の先生に多いのが…
ただ力まかせに縫うことです。
■ ■
形成外科医としてはじめて患者さんを縫合するのは…
大部分が採皮部や…
皮弁採取部です。
移植するための…
皮膚や皮弁を採取した後にできた皮膚欠損創を…
縫わせていただきます。
最初は先輩のように上手に縫合できません。
■ ■
私たち形成外科医は、
先輩に教わりながら…
先輩に厳しく指導されながら…
縫合法や創の管理を覚えます。
最初は何もできません。
先輩に直してもらうこともあります。
■ ■
難しいのが下肢です。
皮膚緊張が強いのに…
無理に縫合すると…
山形大学の事件②のように…
コンパートメント症候群になることがあります。
下肢外傷で大きな皮膚欠損があった場合も…
絶対に無理に縫合しません。
皮膚の緊張が強い時には縫わないこともあります。
緊張が強い創の縫合は難しいです。