医学講座
化粧品による白斑
平成25年7月25日、朝日新聞朝刊、天声人語です。
鉛を使った中国大陸風の白粉(おしろい)が日本ではじめてつくられたのは、飛鳥時代も終わり頃、持統天皇の治世だったとされる。日本書紀に〈其(そ)の造れる鉛粉(えんふん)を美(ほ)めたまへり〉とある。僧が献上し、女帝はとても喜んだという記述である。
▼時代は下り、宮仕えに出たばかりの清少納言は不慣れでつらい思いをしていた。思いがけず大納言と対座することになり、身がすくむ場面を枕草子は描く。〈袖をおしあててうつぶしゐたり、裳(も)・唐衣(からぎぬ)にしろいものうつりて、まだらならんかし〉。
▼恥ずかしくて顔を見せたくない。扇もないので袖で隠して突っ伏していたので、白粉がとれてまだら顔になっているに違いない、と。化粧崩れなら直せば済む。しかし、化粧品のせいで肌の方がまだらに白くなってしまったのだという。
▼その「白斑(はくはん)」の原因が、こともあろうに美白の効果をうたうクリームや乳液というのだから、被害者の方々には手ひどい裏切りだろう。カネボウ化粧品によれば、白斑が大きかったり、たくさんできたりという重症の人が2250人もいる。メーカーとしては決定的な信用の失墜である。
▼どんな仕組みで発症したのかもわかっていない。使うのをやめれば治るのか。医薬部外品として承認した厚生労働省に手抜かりはなかったのか。疑問は尽きない。カネボウには全員の完治まで責任をもってもらわなければならない。
▼人にもよるのだろうが、清少納言は化粧を「こころときめきするもの」と書いた。それが、台無しになった。
(以上、朝日新聞より引用)
■ ■
カネボウ化粧品で白斑の被害に遭われた方に、
お見舞い申し上げます。
まみ子師長さんから、
カネボウの美白化粧品をつかっていた患者さんが
けっこうな人数受診しています。
…とコメントをいただきました。
■ ■
白斑の診断や治療は難しいです。
もし私が化粧品による白斑を診察したとしても…
見逃していたかも知れません。
化粧品でかぶれることはあっても、
まだらに白くなるのは…
聞いたことがありませんでした。
■ ■
天声人語の最後の方に…
医薬部外品として承認した厚生労働省に手抜かりはなかったのか。
疑問は尽きない。
…と書かれています。
化粧品に入れてもいい成分は、
薬事法で規定されています。
■ ■
私が声を大にして言いたいのは、
厚生労働省は…
美容医療に用いる薬剤などは…
何一つ承認していないのが現状です。
ボトックス-未承認薬が9割
…という院長日記に書きました。
■ ■
化粧品はもとより、
美容外科で使うヒアルロン酸やボトックスなど、
女性週刊誌で一般的に【宣伝】されている薬剤について、
もう少し日本国として取り組んでいただきたいです。
日本での承認に時間もお金もかかるので、
技術や知識がありながら、
美容医療で使う薬や機器の開発は、
日本ではほぼゼロなのが現状です。