医学講座
手術は教科書通りにうまくいかない
今日から8月です。
早いものです。
札幌も暑い日が続いています。
たくさんの方に、
私のつたない院長日記を読んでいただき、
感謝しています。
少しでもお役に立てるうちに、
若い先生のために、
じいちゃん先生からのアドバイスを書いておきます。
■ ■
私は形成外科のことしかわかりません。
他科のことはわかりません。
形成外科の若い先生へのアドバイスです。
タイトルの通り、
手術は、
教科書やテキスト通りにはうまくできません。
学会で見たからといって、
その通りにはできません。
■ ■
著者の先生を誹謗中傷するのではありません。
先輩としての忠告です。
大手医学専門書出版から出る教科書。
シリーズで出るテキスト。
いろいろな形態があります。
形成外科について言うと…
多くは分担執筆(ぶんたんしっぴつ)という、
何人かの先生の共同作業です。
■ ■
私のところには来ませんが、
出版社から執筆依頼が来ることがあります。
その分野で高名な先生に依頼がきます。
当然、期限も文字制限もあります。
忙しい先生が、
教科書を執筆するのは大変です。
症例写真を使うにも患者さんの許可が必要です。
■ ■
出版社も生活がかかっています。
専門書は購読者が限られています。
やはり売れない本は出版できません。
多くの先生は、
学会会場や本屋さんで、
実際に本を見て購入します。
ぱっと本を開いた瞬間に、
きれいな症例写真が出ていると買う気になります。
■ ■
その本に書いてあるように手術をすると、
自分でもできるような錯覚に陥ります。
でもちょっと考えてください。
教科書に出ている症例写真は、
ベテランの先生が手術をなさった
♡いちばんいい症例♡です。
◆いちばん悪い症例◆は載せません。
患者さんから掲載許可もいただけません。
■ ■
ベテランの先生ですら、
すべての症例が100%うまくいくとは限りません。
♡いちばんいい症例♡の裏には、
◆いちばん悪い症例◆があります。
私にしても同じことです。
不満足な結果もあります。
患者さんからクレームが出ることもあります。
■ ■
大切なのは、
◆いちばん悪い症例◆の患者さんに、
どう対処して、
どう修正手術をして、
少しでも、
♡いちばんいい症例♡に近づけるか?
その過程です。
文字制限がある教科書でなかなか全部を書くことはできません。
手術は教科書通りにいかない
…ということを覚えておいてください。