医学講座
医師41%「過労死ライン」超
今日(2017年9月11日)は新聞休刊日です。
平成29年9月10日、朝日新聞朝刊の記事です。
医師の労働時間「把握を」 新潟の研修医自殺、実態と食い違い 遺族らシンポ
長時間労働が問題となっている医師の働き方について考えるシンポジウムが9月9日、東京都内で開かれた。過労自殺した医師の遺族や代理人弁護士らが医療機関の労務管理の問題点を指摘し、働き方の改善を訴えた。過労死弁護団全国連絡会議など3団体が主催した。
長時間労働が原因でうつ病を発症して過労自殺し、5月に労災認定された新潟市民病院(新潟市)の女性研修医(当時37)の遺族側代理人を務める斎藤裕弁護士が、この研修医の勤務実態を報告。労働基準監督署は研修医の発症前1カ月の時間外労働を177時間56分と認定したが、病院側が把握していたのは42時間だったことを明らかにした。自己申告をもとに勤務時間を管理していたため、実際の労働時間と大きく食い違っていたという。斎藤氏は「(長時間労働を是正するための)対策のすべてのスタートは労働時間の客観的な把握だ」と指摘した。
東京過労死を考える家族の会の中原のり子代表は、長時間労働を強いられて18年前に過労自殺した小児科医の夫が、亡くなる前に「『病院に殺される』と言っていた」ことを紹介。医師の過労死が後を絶たない現状について、「医療界が何も変わっていないのが悲しく切ない。誰も過労死しない社会になってほしい」と訴えた。
■医師41%「過労死ライン」超
医師の労働時間は職種別で最も長い。総務省の調査では、「過労死ライン」とされる月80時間を超えて残業する人の割合は全体では14%に対し医師は41.8%だった。これは週60時間超の労働に相当する。
過労死などで労災認定された医師は昨年度に4人。2年前に自殺した都内の公的医療機関の産婦人科に勤めていた男性研修医は、今年7月に労災認定された。代理人によると、自殺前1カ月の時間外労働は月173時間、休日は6カ月で5日。この医療機関には3カ月間で600時間まで時間外労働を可能とする協定があったという。
医師の特殊性は、医師法が定める診療を求められたら拒めない「応召義務」に象徴される。夜に救急患者らを診る当直をした後、そのまま日中の勤務にあたるといった過酷な働き方をしている医師も少なくない。医師の働き方を議論する厚労省検討会メンバーの遠野千尋・岩手県立久慈病院副院長は「基幹病院として診療の制限はできない。長時間労働の解消は医師確保ができてこそ」と話す。(千葉卓朗、野中良祐)
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他人事ではありません。
私が今まで勤務した病院の中で、
一番労働条件がきつかったのが、
旧労働省が管轄する、
旧労働福祉事業団、
釧路労災病院形成外科でした。
広い道東に、
卒後7年目で、
形成外科認定医取立ての私と、
もう一人の形成外科研修医しかいませんでした。
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あまり大きな声では言えません。
職員の間では、
旧労働福祉事業団を
労働こくし事業団と呼んでいました。
タイムカードはなく、
時間外手当も、
(働いても働かなくても)
一律支給でした。
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当時は土曜日も外来がありました。
常時24人の入院患者さんがいました。
日曜日も回診がありました。
病棟のすぐ目の前に宿舎がありました。
病院は近くて便利でしたが、
患者さんから、
宿舎が丸見えでした。
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でもこの釧路労災病院形成外科で、
私は形成外科医として成長できました。
今から思うと、
なんちゃって形成外科認定医です。
北大形成外科から応援の先生に来ていただき、
手術を教えていただきました。
釧路空港が霧で欠航すると、
手術が中止になりました。
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今も当直明けに、
休みがない医師はたくさんいます。
当時の私が一番心配だったのが、
唇裂の手術など、
その子の一生がかかっている手術の前夜に、
大きな交通事故で患者さんが搬送されることでした。
寝不足の形成外科医が手術をして、
一生が台無しになると大変です。
医師の労働環境がよくなることを、
63歳の形成外科医は願っています。