医学講座
25歳女性。外陰部の結節
日経メディカル電子版(2017/9/21)という、
お医者さん向け情報サイトに掲載されていたクイズです。
ちょっと衝撃的ですが、
病気の予防のために、
写真を引用して掲載します。
誰でも罹患する可能性があります。
若い女性に限らず、
くれぐれも気をつけてください。
■ ■
連載:日経メディクイズ●皮膚(デジタル版)
25歳女性。外陰部の結節
■患者背景
当院初診の1カ月前から外陰部に結節を認めた。近医で処方されたイミキモドクリームを外用したが、改善を認めず当院を受診した。診察では、手掌や足底に皮疹はなく、外陰部周囲に小指頭大~母指頭大の表面にびらんを伴う結節を複数認めた(写真)。
最も考えられる疾患は?
(1)尖圭コンジローマ
(2)梅毒
(3)脂漏性角化症
(4)肛門部有棘細胞癌
■解答→(2)梅毒
■出題と解説
伊藤祐太、中川秀己(東京慈恵会医科大学皮膚科)
■解説
本症例は若年女性に生じた梅毒である。梅毒は梅毒トレポネーマにより引き起こされ、主に性行為で伝播する感染症である。感染後約2~6週間の潜伏期間を経て、経時的に臨床症状が出現する。1期梅毒では感染から約3週間後に梅毒トレポネーマが侵入した部位に硬結や潰瘍が形成される。その後4~10週間の潜伏期を経て2期梅毒へ進行し、手掌、足底を含む全身の皮疹、粘膜疹、扁平コンジローマ(写真)が出現する。
扁平コンジローマは、肛囲、外陰部などの間擦部で見られる湿潤した扁平隆起性丘疹である。尖圭コンジローマは鶏冠様の小丘疹が見られ、脂漏性角化症は褐色~黒褐色の扁平丘疹が顔面や体幹に出現する。また有棘細胞癌は主に露光部に小丘疹や結節を呈する。本症例は視診上、表面に湿潤を伴う扁平隆起性丘疹であるため、扁平コンジローマを鑑別疾患の第一に挙げる。
診断には血清学的診断が用いられ、感染後は初めにカルジオリピンに対する抗体価が上昇(STS法)、次いでトレポネーマに対する特異的抗体価が上昇する(TPHA法)。感染症法に基づき、診断後7日以内の各都道府県知事への届け出が義務付けられている。
治療はアモキシシリン250mg 6錠(分3)を4週間内服する。本症例では内服開始後2週間で皮疹は平坦化、内服開始から1カ月で皮疹は消退した。内服開始後に発熱や皮疹などが生じる(Jarisch-Herxheimer反応)ことがあるため、治療開始前に患者本人へ説明しておく。治療時に過去と現在の性的接触相手の検査を勧めることも重要である。
梅毒は近年、世界的に流行している。海外ではベンザチンペニシリンGの筋肉内注射単回投与が一般的だが、日本では未承認のため使用できない。国立感染症研究所の報告では、日本国内で1999~2012年は500~900例/年で推移してきたが、2013年には1200例/年を超え、増加傾向にある。従来、感染経路は男性の同性間性的接触が多数を占めていたため、MSM(Men who have sex with men)間で梅毒が流行していると推定されたが、現在は男女とも異性間性的接触の報告が増加しており、伝播の様相が変化している可能性がある1)。年齢分布は男性では幅広い年齢層に見られるが、女性では本症例のように20歳代の症例が増加している。
予防では、梅毒感染者との性行為や疑似性行為の回避が大切である。また、オーラルセックスやアナルセックスで性器以外の粘膜や傷がある皮膚からも感染するため完全な予防にはならないが、コンドームの使用には一定の予防効果が示唆されている。
POINT
若年女性の外陰部病変を見た場合には、必ず梅毒を鑑別に挙げる。
[参考文献]
1)荒川創一ら性感染症の最近の動向臨床と研究 93:1157-67.2016.
(以上、日経メディカル(デジタル版)より引用)
■ ■
私はこのクイズに正解しました。
実際に梅毒の患者さんは見たことはありません。
患者さんは、
ペニシリン系抗生剤を4週間内服し、
症状はよくなりました。
でも血液検査をすると、
梅毒血清反応が一生陽性となります。
消せないキズあとが、
死ぬまで自分の血の中に残ります。
■ ■
2017年1月の国立感染症研究所の集計では、
2016年の梅毒患者数が4518人に上っています。
4千人を超えたのは1974年以来のことです。
特に20代女性の感染が増加しています。
厚生労働省は
「不特定多数との性交渉など感染の可能性がある人は早期に検査を」と呼び掛けています。
性風俗産業で働く若い女性が危険です。
■ ■
私が風俗に行かない理由です。
札幌医大の学生だった20代のころに、
細菌学の講義で、
梅毒のことを習いました。
(私が医学生だった30年前には…
HIVもエイズもありませんでした)
講師の永井先生が、
講義で梅毒の末期だという…
女性の写真を見せてくれました。
この女性は…
すすきので女王と呼ばれた人です。
■ ■
その写真が衝撃的だったのは…
交通事故の写真以上でした。
風俗へ行った同級生は、
講義の後で必死で教科書を調べて…
赤線を引いて心配していました。
ちょっと皮膚に発疹が出ると
これはバラ疹(ばらしん)ではないか…?
…と心配していました。
もしこの写真を見ていなかったら…
誘われて風俗へ行ったかもしれません。
■ ■
性感染症を専門にしている先生に伺うと…
風俗よりも怖いのが素人。
風俗産業は、
大切な従業員が性感染症になると…
商売ができなくなるので、
感染予防にも熱心だそうです。
最近は激安店もできて、
風俗産業も大変なんだそうです。
自分だけはうつらない
…と信じて疑わない素人さんが、
実は一番危険なんだそうです。
中学生や高校生に…
衝撃写真を見せて教育するのが、
HIVやエイズ予防に効果的だと思います。
今日の写真が梅毒の予防に役立つことを願っています。