医学講座

心電図自動解析に注意

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 センターニュース
 2015年4月1日発行 N0.325(9)
 症例報告 その1
 胸痛を訴えてきた患者の心電図に軽微なST上昇があったにもかかわらずST上昇なしとした自動解析の結果を信用した医師に心筋梗塞の症状を見逃した過失があるとして和解が成立した事例
 阿部浩基(静岡県弁護士会)
【患者】34歳・男性
【医療機関】私立病院・診療所
事案の概要
 平成24年]11月14日、仕事中に胸の痛みを訴え、午前中で早退。
 同日、午後1時に会社の近くのクリニックを受診。
 カルテには次のとおり記載がある。
主訴 前胸部痛 30分前から
   動悸はしていない。痛みに波がある。
既往歴 糖尿の気配がある。コレステロールが高い。
lung ; no rale,no wheez
heart; no murmur,synus rythm
Xp 気胸所見なし 肺炎所見なし
ECG 単発PVCのみ
肋間神経痛疑い
痛み止めを処方(ロキソニン メチコバール ムコスタ錠)
 なお、会社で行った健康診断の結果によると、患者は、3年前からヘモグロビンA1cが9.5、11.0、10.2を示しており、糖尿病の治療を勧められていたが、治療は受けていなかった。また一見して肥満していた。
 そのまま帰宅したところ、心筋梗塞にて死亡。翌日発見され死体解剖の結果、心筋梗塞と診断されている。
争点
 クリニックの医師に心筋梗塞の見逃しがあったのではないか。
経過
平成25年9月18日
 横浜地裁に提訴(証拠保全はしていない)
平成27年1月16日
 和解(5000万円)
コメント
 父親がカルテ、画像等の資料を予め入手していたので、証拠保全はしなかった。
 循環器専門の協力医に見てもらったところ、心電図は、肢誘導で0.1mVのST上昇を示していた。0.1mVの上昇は軽度であるが、30分前から前胸部痛を訴えている患者にST上昇が見られれば、心筋梗塞を疑ってしかるべきである。しかし、心電図の自動解析結果は、ST上昇をとらえていなかった。
担当医は経歴からは消化器内科が専門だったようで、自動解析結果をそのまま信用し、胸部痛は肋間神経痛だと判断して痛み止めを処方して帰らせたのである。
 訴訟では、循環器の専門でない医師が軽微なST上昇を見逃し心電図の自動解析の結果をそのまま信用したとしても過失があるとは言えないとして、病院側が争ってくるのではないかと思った(参照、福岡高裁平成22年11月26日判決、判例時報2110号73頁)。
 そのような主張に備えて、予め次のような主張をしておいた。
 「被告クリニックのホームページを見ると、診療科目として内科があり、具体的な疾病・症状として『風邪、頭痛、胸痛、インフルエンザなどの急性疾患』があげられている。そして心電図を備えて『狭心症、心筋梗塞、不整脈など心臓に異常がないかどうか、その場で見る検査です。』と宣伝している。急性心筋梗塞は胸痛を催す代表的な疾患の一つで
あるから、被告は、その診断、鑑別について、心電図の見方も含めて、専門性があること(ないし得意分野であること)を自認しているのである。そのような被告クリニックの唯一の医師であり院長である医師が自動解析の結果を鵜呑みにして責任がないとは到底言えない。」
 しかし、予期に反して病院側は争ってこず、過失を認めたために、早期の和解となった。
 但し、裁判所が和解案を出すに当たり、重度の糖尿病を放置していたとして患者の余命を10年も短くして逸失利益を削り、患者にも健康管理の落ち度があるとして慰謝料まで減額したのは、納得がいかなかった。
 (以上、医療事故情報センターニュースから引用)

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 正直に告白します。
 もし私が診ていたとしても、
 この心電図は見落としていたと思います
 ただ私なら、
 すぐに糖尿病専門医に紹介します。
 HbA1cが10はまずいです。
 肥満もあります。
 心筋梗塞は予測できませんでしたが、
 本人に健康管理について指導していたと思います。
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 自分が専門外のことは、
 HPには記載していません。
 患者さんが来院されても、
 私が一番よいと思う先生をご紹介しています。
 心電図自動解析装置は、
 私が心電図を読影するより、
 よほど正確だと思っていました。
 30年以上前に心電図を勉強した私より、
 今の自動解析が正確だと信じていました。
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 どんなに立派な診断機器でも、
 最後に、
 医師の確認が必要ですと出てきます。
 そうです。
 最後に責任を取るのは、
 その機械を信用して、
 患者さんに説明した医師本人です。
 この事例から言えることは、
 循環器内科の専門医に紹介するのが一番いいということです。
 私の義父
 循環器内科医が診ていたら、
 もう少し長生きできたか?と思います。
 
 医療事故情報センター
 〒461-0001
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 電話:052-951-1731
 FAX:052-951-1732

●日本形成外科学会で京都に来ました。
 気温10℃で寒いです。
 桜はまだ少し咲いていました。

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