医学講座
上田和毅先生のご逝去を悼む
今日は2023年4月25日(火)です。
明日から長崎で日本形成外科学会です。
今日は札幌から長崎までの移動日です。
直行便がないので、
大阪(伊丹)経由で来ました。
長崎に着きました。雨でした。
昨日届いた日本形成外科学会誌を読んで驚きました。
私が尊敬する上田和毅先生のご逝去を知りました。
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もう学会でお会いすることができなくなりました。
ほんとうに残念です。
日本形成外科学会誌の追悼文です。
上田和毅先生への追悼の言葉
本学会名誉会員で福島県立医科大学名誉教授,上田和毅先生が,病気療養中のところ,令和4年(2022年)11月6日ご逝去されました。謹んで哀悼の意を表します。
先生は横浜市にお生まれになり,横浜聖光学院,東京医科歯科大学をご卒業後,一般外科研修を経て,1980年東京大学医学部形成外科学教室に入局されました。入局後は静岡県立こども病院,都立大塚病院などで修練を重ねられ,東京大学形成外科学教室助手となり,1990年講師に昇任されました。その後,自治医科大学形成外科助教授を経て,1998年福島県立医科大学形成外科学教室の初代教授に就任,2017年に定年退官されるまで20年にわたり教室の発展,後進の育成にご尽力なさいました。
形成外科学全般を広く修められましたが,なかでもマイクロサージャリー,顔面神経麻痺が専門で,学位取得論文は『顔面神経麻庫に対する神経血管柄付遊離筋肉移植の筋電図学的検討』というものでした。その業績から,日本マイクロサージャリー学会理事長・学会長,日本顔面神経学会理事長・学会長・Facial Nerve Research Japan編集委員長を歴任されています。そのほか,日本形成外科学会をはじめとする各種学会の役員を多数務められるとともに日本形成外科学会基礎学術集会などを主催,本邦における形成外科の発展に大きく寄与されました。
先生は一言でいえば,背伸びをしない,嘘のない人でした。われわれは自分が経験したことのない疾患や病態に遭遇した時,しばしば治療法・手術術式の選択に迷います。そのような折,いつも的確なアドバイスを与えてくれるのが上田先生でした。先生は日本形成外科学会会誌編集委員長の経歴が示すように歴史的に重要な文献はもちろんのこと,最新の文献にも常に目を通されていました。そこから得られた知識,そして自分自身が経験した症例の結果を,良くなかったものも含め,何か問題でどこがポイントなのか,包み隠さず話してくれました。「この手術はうまくゆけば確かに良いよ。ただ,うまくゆく確率は30%もないんじゃないかな」とか,「この手術をやって本当に満足してくれる患者は半分もいないんじゃないかな。こちらがうまくいったと思っていても,患者さんは“これで終わりですか? もっと良くなりませんか?”と聞いてくるんだよ」などと話してくれました。あの性格ゆえ,患者さんやご家族も話しやすく,本音を吐露されていたのでしょう。“生存率”などのような数値による評価が難しい形成外科の治療成績を考えるうえで,先生のこのような言葉は大いに参考となりました。
横浜育ちで高校・大学時代はヨットが好きだったという先生でしたが,少林寺拳法,謡曲も嗜むという粋な面をお持ちでした。大変な読書家で,医科歯科大学の学生時代,近かった神田神保町の古本屋に足繁く通ったそうです。お父様もそうだったそうで,二人の本の重さで自宅の床が歪んでいると聞いたことがあります。また,福島に行かれてからは,週末,医局の先生方と近くの温泉に行ったり山登りをしたりして楽しんでいらっしゃいました。私も手術の手伝いに行った折,近くの飯坂温泉に連れて行っていただいた覚えがあります。
そのように健康にも気を配られていた先生ですが,退官後しばらくして体調の不良を訴えられるようになり,その後の経過が捗々しくなく,今回のあまりにも早い訃報となってしまいました。“上ちゃん”とすれば,忙しくて読めなかった本を読む,登れなかった山に登る,そしてなにより一緒にいられる時間の少なかったご家族とゆっくり過ごすなど,まだまだやりたかったことがたくさんあったと思います。退官して時間ができ,さあこれからという時だっただけに本当に残念です。相談事をした時の的確な回答,依頼した原稿に対する期待どおりの内容,学会の後の飲み屋で皆を和ませる,あの,ちょっとはにかんだような笑顔など,すべてが忘れられません。
先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
帝京大学医学部形成・口腔顎顔面外科学講座
名誉教授 平林慎一
(以上、日本形成外科学会誌より引用)
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ほんとうに残念です。
平林先生が書かれているように、
先生は一言でいえば,
背伸びをしない,
嘘のない人でした。
その通りです。
適切な助言をくださる先生でした。
あの,ちょっとはにかんだような笑顔など,すべてが忘れられません。
上田先生の声もよく覚えています。
心からご冥福をお祈りいたします。