医学講座
多汗症手術の難しさ
平成20年2月20日の日記に、耳あかの遺伝学を書きました。
ワキガや多汗症については、何度も日記で取り上げています。
PCの方も携帯の方も、
この日記にある検索画面、
PCは右側のカレンダーの下、
携帯は、一番上のメニューを押すと、検索画面が出ます。
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‘多汗症’を入力して検索をクリックすると、
タイトルや本文に‘多汗症’が入った日記が、順番に出てきます。
すでに、多汗症というタイトルで、2回書いています。
耳あかと多汗症は関係ありません。
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多汗症には、
①交感神経の過緊張による精神性発汗
②ワキガ体質による、アポクリン汗腺由来の多汗
③ワキガ体質+精神性発汗
これら、①~③の3種類があります。
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まず、発症時期が問題です。
女性で、
20歳台前半や30歳台になってから、
職場が変わってから、
発汗が気になるようになった。
という方がいらっしゃいます。
この方の場合は、
耳あかが湿っている、湿っていないにかかわらず、
①の精神性発汗です。
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何らかの原因で、交感神経が過緊張になってしまったのです。
ちょっとしたことで、汗のスイッチがONになってしまいます。
そうすると、
自分の意思とまったく無関係に、汗でビチョビチョになります。
ある時から、人前に出ると、急に動悸(ドウキ)がして、
心臓がパクパクしてしまうようになるのと同じです。
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自分に、
『落ち着け、おちつけ』と呪文をかけても
心臓の鼓動を止めることができません。
それと同じで、ワキの汗も止めることができないのです。
緊張性発汗で、汗が多くなったことにより
ワキが常に湿った状態になることがあります。
湿った状態で、蒸れると、
細菌が繁殖して‘におい’が出ることがあります。
冬にブーツを履いて、足が蒸れると、
‘足のにおい’が気になるのと同じです。
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耳あかが湿っている、ワキガ体質の方でも、
日常生活で‘におい’が気にならない方は、
たくさんいらっしゃいます。
そんな方が、ある時期から、精神性発汗が出るようになると、
ワキガ臭+汗臭が混じった状態になることもあります。
ワキガ手術を多くしていると、
汗臭とワキガ臭の区別がつくようになります。
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私は、ワキと手掌(てのひら)の両方に多汗を認める時は、
麻酔科の本間英司先生(禎心会病院麻酔科)にお願いして、
交感神経の手術をするようにお話ししています。
ワキだけの多汗症でしたら、
第一選択としてボトックス注射をお薦めします。
ボトックスの効果は、最長6ヵ月ですが、
注射で汗が少なくなることによる精神的な効果のために、
2年間も大丈夫だったという方もいらっしゃいます。
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ワキの多汗で、ワキガ臭がある方は、
ワキガ手術をおすすめします。
ただ、汗は手術後3~6ヵ月で必ず出るようになります。
その汗の量は、出たとしても、元の半分以下で、
手術した部位は、しっとりと湿る程度です。
と必ず説明しています。
これは、汗腺が‘再発’するのではありません。
神経が‘再生’して、エクリン汗腺からの発汗がはじまるからです。
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来院時に汗も臭いも認められない方が一番困ります。
問診や視診で見当をつけたり、
着ている服や下着の色で判断します。
白い服や下着で、
ワキの色が変わっていない方は、
まず、手術が必要になることはありません。
ワキガや多汗症の手術は簡単ではありません。
決して安易に手術を受けないでください。