医学講座
500㌘の赤ちゃん㊥
平成20年2月26日、北海道新聞朝刊の記事です。
500グラムの命みつめて
高度新生児医療の現場から㊥
『横綱』
呼吸維持に細心の配慮
慢性肺疾患の進行抑制
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市立札幌病院9階の、
総合周産期母子医療センターの新生児集中治療室(NICU)。
妊娠24週で生まれた女の子の体重「522㌘」は、
その時入院していた赤ちゃん20人の中で一番小さかった。
身長26㎝の体はコードに覆われ、
顔の表情も人工呼吸器用チューブを固定する装具のため、
よく見えない。
人工呼吸器が規則的に酸素を送る音や、
監視モニターのアラームが鳴り響く室内で、
泣き声も上げずに静かに横たわる。
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「横綱だね」。
服部司(ハットリ サトシ)・同センター新生児科部長(59)は、
慈しみ(イツクシミ)を込めてそう思った。
最も手がかかるという意味。
20台の保育器のうち、最もナースステーションに近い場所に寝かされた。
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息を吸う時、肋骨が引き込まれる陥没呼吸が続く。
乱れる呼吸は体力を奪う。
体重は一日10㌘ずつ増えたかと思うと、反対に減る日もあった。
超低出生体重児の赤ちゃんは、
体温の喪失を防ぐため温度36度、
湿度100%近い保育器で管理する。
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さらに呼吸管理が課題だ。
500㌘台の赤ちゃんは肺が成熟しておらず、
人工呼吸器での管理が長くなるためだ。
唇から身長の3分の1、
7㎝も挿入したチューブは、
赤ちゃんが動くと気管を傷つける恐れがある。
痰(タン)も除去しなければならない。
「口からの気管挿管が痛々しくて」。
両親は、直視できなかった。
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この赤ちゃんも超低出生体重児に多い
「慢性肺疾患」を発症した。
人工呼吸器で、
肺に高濃度酸素が直接、
しかも強く吹き付けられることで肺組織を傷つけ、
線維化を進め肺の機能を損なってしまう。
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この治療のため、
主治医は特効薬「ステロイド」(副腎皮質ホルモン)を3回、投与した。
ステロイドは線維化を抑制する劇的な効果があるが、
成長を抑制、免疫力を落とすなど副作用も強い。
両親には
「もろ刃の剣。本当は使いたくない」
と隠さず説明。
そのつど承諾を得た。
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自発呼吸できるようになった53日目、
人工呼吸器が外された。
体重は854㌘に。
鼻から空気圧を送り呼吸を楽にする
CPAP(シー・パップ)(持続気道陽圧呼吸)装置が付いた。
のどに管を入れる人工呼吸器に比べ肺への負担が軽く、
なにより慢性肺疾患の進行を抑えた。
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生後3ヵ月、
体重が1500㌘を超えたころを最後に、
ステロイド投与の必要がなくなった。
「これでヤマを越えた」。
NICUにホッとした空気が流れた。
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〈メモ〉
市立札幌病院のNICUには、
早産や出産後になんらかの異常が認められた赤ちゃんを含め、
年間約300人が入院する。
その中で、
リスクの高い1000㌘未満の超低出生体重児は
年間30人前後で、
2007年は過去最高の37人。
その「生存退院率」は
2001年以降の平均で94.6%。
全国で200ヵ所を超えるNICUでも、
高い数字となっている。
保育器、人工呼吸器や各種医療モニター装置が
ぎっしりと並ぶ市立札幌病院のNICU
(伊丹恒撮影)
(以上、北海道新聞より引用)
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私が、市立札幌病院に在職していた時に、
担当させていただいたのは、
主に体表面に何らかの異常がある新生児。
最初は、
正直なところ…、
触るのも…、
おっかなびっくりでした。
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新生児室に入る前には、手術前のように入念に手洗い。
予防衣を着用して、
帽子を被りマスクをして入りました。
保育器(確かコットと呼んでいました)の中に手を入れると…
温かく、湿度もあって、ちょっと別世界でした。
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ある日、生後間もない赤ちゃんを手術することになりました。
生まれつきの病気で、すぐに手術をする必要がありました。
保育器の中で手術はできないので、
手術室一部屋を保育器と同じ環境にしました。
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室温36℃。
医師も看護師も全員汗だく。
サウナの中の手術のようでした。
昨日の日記に、
産婦人科の先生が手術をしている写真がありました。
右端の先生が、鉢巻をしています。
‘市OR’と書いてあります。
市立札幌病院、Operating Roomの略です。
鉢巻は、汗が額から落ちるのを防ぐためにします。
とても懐かしく、見ていました。
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産婦人科、新生児科、中央手術室、NICUと
多くの設備、人的資源を必要とします。
特に、NICUのナースは…
内径2㎜の気管内チューブから、
痰を吸引するというとても繊細な仕事を要求されます。
汗まみれになって、手術を担当する先生。
夜も寝ないで、手当をするNICU担当の先生、ナース。
私は、母体や赤ちゃんに異常があれば、
一番に市立札幌病院をおすすめします。