医療問題
生活保護
滝川市で、2億円もの通院費を支給していたことが問題となっています。
どうして、寝台付きタクシーが必要だったのか?
札幌まで通院する必要があったのか?
主治医は、何故?どのような意見書を書いたのか?
医療側から見ても、疑問や謎が多い問題です。
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私が忘れられない患者さんがいらっしゃいます。
市立札幌病院の時に手術を担当させていただいた、
男性(60歳台)の患者さんでした。
身体中に、神経性の腫瘍ができる病気でした。
背中にできた、腫瘍の一個が悪性化しました。
腫瘍は、新生児の頭部程度の大きさになっていました。
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整形外科の先生から、ご紹介を受けた記憶があります。
高齢のお母さん(80歳台)がいらっしゃいましたが、
独身で一人暮らしでした。
真面目に働いていた方でしたが、
正職員ではなく、日雇い従業員でした。
社会保険はなく、医療費は国民健康保険でした。
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当時、社会保険本人は1割負担で済みましたが、
国民健康保険の方は、3割負担でした。
病気で入院した、その日から、お給料はゼロ。
病院の入院費は、
手術をしたり、検査をしたりしましたので、
自己負担分が、一ヵ月に数十万円にもなりました。
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腫瘍は手術で取り除きましたが、
残念なことに、手術前に他臓器に転移が見つかっていました。
手術部位はキレイに治りました。
転移巣は、抗癌剤による化学療法を行いました。
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手術よりも、化学療法が辛いようでした。
吐き気が出て、食事も進みませんでした。
それでも、じっと耐えて治療に専念していました。
私から見ても、ガンの専門医から見ても、
余命は長くて数ヵ月といったところでした。
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その男性は、自分と高齢のお母さんのために、
毎月少しずつ貯金をしていました。
貯金の額は、数十万円でした。
高額の治療費のため、貯金が底をついてきました。
私と病棟婦長は、医療相談室に相談しました。
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札幌市区役所の保護課に相談しました。
市立病院からの相談だからといって、
区役所で特別に取り扱ってくれることはありません。
区の担当者は、事務的に仕事を処理する方でした。
問題となったのが、預貯金でした。
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区役所の保護課が言うには、
その預貯金を解約してお金をもらい、
一文無しにならないと生活保護の給付はできない。
そのお金は、
高齢のお母さんと自分のためにコツコツと貯めたお金でした。
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結局、その方はお亡くなりになりました。
生活保護は受給しませんでした。
病院を死亡退院する時には、全財産がなくなっていました。
私は、お花を持って、その方の葬儀に伺いました。
質素な暮らしぶりがわかる、小さなアパートの一室でした。
友人の方たちが、小さな祭壇を準備してくださり、
高齢のお母さんが、
とても悲しそうに、小さくちいさく見えました。
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自分には何の責任がなくても、
人はある日突然病気になることがあります。
そのように、
自分ではどうにもならないくらい困った時に、
助け合うのが、医療保険や社会の役割だと思います。
日本国憲法25条1項には、
「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
とあります。
健康で文化的な最低限度の生活を、
国民に保障できない国はダメです。