医学講座
後遺障害診断書
自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書
が正式な名称です。
数千万円にもなる、
保険金がこの紙キレ一枚で決まります。
書式が決まっていて、
日本全国どこへ行っても
どこの保険会社でも同じです。
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記入にあたってのお願い
というのが書かれています。
1.この用紙は、自動車損害賠償責任保険における後遺障害認定のためのものです。交通事故に起因した精神・身体障害とその程度について、できるだけくわしく記入してください。
2.歯牙障害については、歯科後遺障害診断書を使用してください。
3.後遺障害の等級は記入しないでください。
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法律で決まっているようですが、
医師は状態だけを記入し、
後遺障害の等級については書くな!
ということです。
わざわざゴシックで強調しています。
この診断書の書き方、
医学部では教えません。
もちろん医師国家試験にも出ません。
形成外科専門医試験にも出ません。
私たちは、
先輩から口述で教えられるのです。
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医師にとって必要な仕事ですが、
実に書きにくい診断書です。
①精神・神経の障害から
はじまり
②③④⑤⑥⑦⑧⑨とつづき
⑩上肢・下肢および手指・足指の障害
までを
B4一枚の紙に書くのです。
どう考えても…
スペースが小さすぎるのです。
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女性の顔に…
著しい醜状障害が残ったとします。
その障害を記入する欄は
わずか4×5㎝の範囲です。
印字してある部分があるので
私たちが記入できるのは、
4×3㎝のスペースしかありません。
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⑦醜状障害(採皮痕を含む)
1.外ぼう イ.頭部 ロ.顔面部 ハ.頚部
2.上肢
3.下肢
4.その他
(大きさ・形態等を図示してください)
と書かれています。
図示しようとしても、
顔の絵を描いたら…
それでおしまいのようなスペースです。
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医師にとって、
総合病院の超忙しい外来で、
この後遺障害診断書を書くのは、
他の患者さんを3時間以上
待たせてしまうことになります。
写真を撮って
カルテに記載して、
それから診断書の記入です。
もう、勘弁してください!
と言いたくなるような書類です。
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どんなに記憶力が良い先生でも、
一人ひとりの患者さんのキズの
一つひとつは覚えていません。
前任者から引き継いだカルテや、
救急部で処置をした方は、
初診時のキズがわからないこともあります。
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後遺障害診断を受ける時に、
患者側におすすめしたいことがあります。
線状痕が5㎝を超えると、
等級が一気に上がります。
何本かの線状痕があると、
それらを合計した長さになります。
5㎝が運命の分かれ目です。
認定基準に定められています。
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この線状痕というのは、
手術後にできたキズも含みます。
つまり、
キズをキレイに再縫合していただいた線状痕も
最初についた線状痕も
すべて線状痕です。
線状痕とは線状のキズあとのことです。
目だっているかどうか?
までは規定にありません。
シワみたいになっていても、
キズ痕であれば、線状痕です。
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後遺障害認定を受ける前に、
ご自分で顔の絵を描いて
(A4のコピー用紙で十分です)
ありとあらゆる、
すべてのキズを描いて
その長さを測って
(定規で十分です)
先生のところに持っていってください。
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そうすると、
ちょっとした事故のキズでしたら、
合計で5㎝を超えることができます。
目立っていない!
と保険会社に文句を言われたら、
弁護士さんに相談してください。
書類に書かれるのは
線状痕の長さだけです。
書類で判定するので、
合計5㎝を超えていれば、
女性であれば…
100歳でも1千万円になります。
女性だけの特権です。